第7話 そしてリセット
「よし、これで最後だ!」
突っ立っている俺を傍にアグライアさんは奮闘し、4匹のスライムを倒した。
「ありがとうございます。お疲れ様です!」
アグライアさんが4匹のスライムを倒した事により、経験値が入ってきた。俺は何の役にも立っていないのに恐縮だ。
「なんか経験値が増えましたよ!」
「そうだ、魔物を倒すごとに経験値がもらえるぞ。あとクエストクリアの報酬でもまとまった経験値がもらえるから、クエストを受けて魔物を倒した方が効率がいい。どんどんクエストをクリアして、経験値を増やしてレベルを上げていこう。レベルが上がればスキルポイントの上限や他のステータスも上がっていく。シンヤ君が持っている〈火球〉などステータスが上がると、それに応じて効果がアップするスキルもあるぞ」
「なるほど。ステータスで効果が上がるスキルもあるんですね。それから効率良くレベルを上げるには、クエストが良いんですね」
「そういう事だ。ひとまずシンヤ君のスキルポイントも無くなった事だし、休憩にしようか。少し休憩すれば、〈火球〉を使えるぐらいのスキルポイントは回復するだろう」
「はい。無駄にレアスキルを使って、すみませんでした」
「ははっ、デビュー戦だしね。魔物に驚くのも無理はないよ。まだまだ、これからさ。すぐ近くの街道沿いに東屋があるから、そこで休憩しよう」
アグライアさんは本当に良い人だ。親切すぎてリセマラをしたくなくなりそうだ。
しかし、そう思ったのも束の間。
東屋で休憩をしているところに、凄い形相をした男が街道を爆走してきた。
「お前かーーー!! アグライアを連れ出した神界の仕事人は!!!!」
俺は何か恨まれるような事をしたのか。凄く怖いのだが。
「ジョージ、何しにこんな所まで来たの?!」
アグライアさんが立ち上がり、走り寄ってきた男と話を始めた。どうやら、アグライアさんの知り合いのようだ。
俺が呆気に取られていると。
「シンヤ君、すまない。この人はジョージという私の彼氏で私たちは明日、結婚するんだ。ジョージは1人で結婚式の準備をしていたら、淋しくなってしまい私を追ってここまで来てしまったらしい」
「アグライアの言う通り、オレたちは明日、結婚するんだ。その準備だというのにアグライアがいないのが淋しくなって、冒険者ギルドに聞いてここまできたんだ。君が神界の仕事人か。オレはいつかアグライアが神界の仕事人のパーティーに加わるんじゃないかと予想していた。何しろオレのアグライアは、強くてクールで良い女だからな。世界一と言ってもいい。だから選ばれてしまうのも無理はない。だがオレにとっては、世界よりもアグライアの方が大事だ!」
「ちょっとジョージ、急に何を言ってるの? 恥ずかしいじゃないか」
アグライアさんとジョージが見つめ合っている。しばらく見つめ合っていたかと思うと、2人は草原の真ん中でイチャイチャし始めた。俺は一体、何を見せられているんだ。
俺は結婚前日の男女を割くほど、野暮ではない。
「明日、結婚式なんですか。じゃあ今日はこれで解散にしますか。クエスト期限は3日ありますし」
「すまない。シンヤ君。そうさせてもらうよ。また結婚式の後、冒険者ギルドで会おう」
「アグライアさん、今日はありがとうございました」
「こちらからこそ、ありがとう」
アグライアさんはそう言い残し、旦那になるジョージにお姫様抱っこをされながら街へと戻って行った。
取り残された俺は、しばらくの間、黄昏れていた。
そうしているうちに、スキルポイントが回復している事に気がつき、気を取り直して、まだ使っていないスキルを試してみる事にした。
まずは〈火球〉からだ。
ノーマルスキル「火球!」
ボウッと手のひらから小さな火の玉が放たれ、目の前にあった枯れ草が燃えた。所詮、レベル1の冒険者が使う〈火球〉ではこんなものか。
次は〈氷弾〉を使ってみる。
ノーマルスキル「氷弾!」
ビュッと氷の礫が発射され、目の前で燃えていた枯れ草が鎮火した。
これで枯れ草火災を未然に防ぐ事が出来た。
最後に〈烈風斬〉を試してみようと思い、〈持ち物〉から剣を取り出した。初心者用に少し短めの使い易そうな剣だ。
ノーマルスキル「烈風斬!」
掛け声と共に近くに生えている木へ向かい剣を振るってみた。
すると、剣先から真空の刃が放たれ、目標とした木が大きく揺れ幹が削れた。
「おお、なかなか頼もしい威力だ。アグライアさんはステータスが上がれば効果がアップすると言っていたな。これは今後が楽しみだ」
今回はここら辺で〈
リセマラを続けて、新たに別のスキルを取得して効果を試してみなければならない。
今日、せっかくパーティーメンバーになってくれたアグライアさんには悪い気はするけれど、これも世界を救うためなので仕方がない。
それに、冒険に連れ出して新婚さんの邪魔をするのは良くないと思う。アグライアさんには、旦那のジョージと共に幸せに暮らして欲しい。
「アグライアさん、今日はありがとう。アグライアさんが攻撃系のレアスキルを引けますように」
そう言って俺は運営へと戻る事にした。
「それでは〈
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