第4話 神界の仕事人
「えっ、シンヤ様は神界の仕事人様だったのですか! 初めてお会いしました。慈愛の女神クレア様の仕事人様なのですね」
女神クレアは慈愛の女神だったのか。見た目は美人だったが、慈愛という感じではなかったような。
それより、神界の仕事人ってなんなんだ?! 恥ずかしいのだが。
「神界の仕事人とは?」
俺は当然、質問する。
「はい。この世界にいる魔王を倒す事が出来る唯一の存在です。魔物は一般の冒険者でも倒せるのですが、魔王だけは倒せません。そこで神界にいらっしゃる最高神様、それに仕える女神様が派遣してくれた人たちを、神界の仕事人と呼んでいます」
そうだったのか。こういう事は、最初に女神が伝えてくれれば良いのにと思ったが、あの運営には期待しない。
魔王を倒せるのが神界の仕事人だけとは、責任重大なのではないだろうか。
「そうなんですね。それで、これからどうしたらいいですか?」
「シンヤ様には、魔王を倒せるように経験を積んで頂ければと思います。そのためにはまず1階に張り出されいるクエストをこなしてもらうのが、宜しいかと。冒険者ギルドとしても出来る限り協力させて頂きますね」
「ほうほう、クエストですか」
「はい。それからクエストを受ける前に、この街でパーティーメンバーを加えてパーティーを作る事もできますよ。神界から選ばれた5人の中から1人を選ぶ事ができます。ソロでも構いませんし、どうされますか?」
パーティーメンバーを選ぶだと?! パーティーを作る事ができるとは知らなかった。ここで選ぶ事ができるパーティーメンバーもランダムなのか。良いパーティーメンバーが出るまでリセマラする事になるのだろうか。
レアスキル〈堅牢の総身〉の効果を確認したら一度〈
しかし、せっかくなので〈
「パーティーを作ってみたいと思います」
「かしこまりました。リストをご用意いたしますので、少々お待ちください」
そう言って、ニーナさんは厳重に魔法で保護された本棚から、背表紙に神界選抜冒険者一覧と事務的に書かれた1冊のファイルを取り出し、クレアと分類された中から、5枚のリストを抜き取った。
「シンヤ様は、こちらの5枚のリストになります」
ニーナさんに5枚のリストを渡された。
「えっと。アグライアさん、リチャードさん、アインさん、ライデンさん、ルージュさんの5人か」
男性3人、女性2人の冒険者リストだった。
その中から俺は迷わず女性の冒険者リストに注目した。
有用なスキルや強いステータスは必要だけれど、それよりも長い冒険を続けていくにはモチベーションの維持が大切だ。屈強なオッサンも頼りにはなるが、女性には男の俺にはない女性ならではの気遣いや強さがあるはずだ。
俺はリセマラをしているが、攻略だけを優先する効率厨ではないので、ステータスやスキルだけで選ぶ事はない。
などと、色々と理由付けをしているが、要するにせっかくパーティーを作れるのなら、可愛い娘とパーティーを組んで冒険をしたい。
俺は可愛い娘と冒険をしたいのだ。
という事で、女性2人のリストを見比べる。モノクロ写真付きだ。
アグライア
〈レベル18 ディフェンスに定評がある。冒険者歴1年3ヶ月〉
ルージュ
〈レベル7 魔力値、魅力が高い。冒険者歴0ヶ月〉
アグライアさんはスマートなお姉さんで、ルージュさんは優しそうな娘だ。しかし選ぶには圧倒的に情報が不足している。
「えっと。情報はこれだけなんですか?」
「はい。昨今、個人情報の取り扱いが厳しくなりまして。本人の許可なく〈ステータス〉を開示する事はできません。誠に申し訳ございません」
なるほど。異世界でも個人情報は、簡単には見られないものなのか。
そういえば、神官のアメリアさんも人や物の情報を読み取る〈鑑定〉系のスキルは、個人情報保護法により使用できなくなったと言っていた。法律が施行された際は、お詫びの【神界の本棚 利用券】を配るなど、騒動の収拾に手こずったそうだ。
いや、今はその騒動の話はどうでも良い。とにかく大事なパーティーメンバーを、これだけの情報で決めなければならないという事実があるだけだ。
選べるだけマシとはいえ、もう少し転生者を優遇する処置はないのだろうか。やはりこの世界の運営はダメだと思う。
不満はあるが、愚痴を言っても仕方がない。俺はリセマラ途中という事で、レベルが高くて冒険者歴のあるお姉さんに、この世界の冒険について教えてもらう事に決めた。
「こちらのアグライアさんにします」
「アグライアさんですね。かしこまりました。それから先にお渡ししておくものがありまして。こちらは神界の仕事人パーティー様のメンバーズカードになります。パーティーメンバーの皆様、全員にお渡しする身分証明書になりますので、無くさないようにしてくださいね。お店や何かのトラブル時に提示を求められる事があるかもしれません」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
俺はニーナさんからメンバーズカードを受け取った。取り立てて特徴のない免許証のようなカードだ。俺は無くさないようすぐに〈持ち物〉へ収納した。
「アグライアさんは、今日は神殿にいるはずです。お呼びしますので、別室でお待ちください」
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