食わず嫌いからの手のひら返し
「『君の名は。』は救いの映画なんです」
「強火の発言ね」
あかりが泣いている。新作がはじまるというので、過去作の復習に付き合っていた。私、君の名はから見てなくて、とあかりにしては珍しいことを鑑賞前に言っていたのに、今はもう、昔から知っていましたと言わんばかりの暑苦しさだ。
「私たち古のファンは正直『なーにがRADWIMPSだこっちは山崎まさよしのPVだぞ』と公開当時、斜に構えていたわけですよ。同じ穴の狢の輝く星と信じていたのに、そうやって表世界に尻尾振って生きていくのかと」
「自分たちが裏世界の住人だとは理解していたのね」
「そういうとアウトレイジみたいですけど、ようは日陰の苔ですよ、我々は」
「そこまで卑下しなくても」
「そんな苔代表がいきなりロックバンドなんかと組んで大衆ウケするから、私たち菌糸類はついていけなくなったのです。眩しすぎて浄化されるから」
「で、なんとなく見ないうちに公開が終わっていたと。これ、結構前の作品よね?」
「地上波で何回も放送してましたけど、毎回タイミング悪くて見れず……なんなら見ていない自分を正当化さえしていました。それがこんな……こんな古参ファンのための映画だったとは! 秒速は最後会えないんですよ! いや会おうとするけど運悪く、いやもう都合よく邪魔をするんです。これは世界が邪魔をするんです。まるで私が君の名はを永遠と見れなかったように。でも、君の名はでは、すれ違って振り返って声をかけて再会して……もう終盤は勝手に頭の中で山崎まさよしが歌い出して……すごい……よかったぁ」
「次は『天気の子』……かしら」
「すずめにむけて復習ですっ」
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