たまに作ってくれたナポリタンだけはまだ真似られない

「カレーはね、3日目が一番美味しいの」

「それは3日間カレーで行こうとするお母さんの免罪符だろう?」

「3日間温めるだけでいいの。これほど楽なことはないわ」

「せめて焼いたりドリアにしたり」

「みこが手伝うならね」

「カレーはシンプルが一番だと思う」

「私もそう思うわ」

「でも、ケーキはよく作ってくれているな」

「嫌だった?」

「そういうわけじゃなくて、意外だったんだ。そういうタイプに見えないから」

「嫌だった?」

「嫌味で言ったわけじゃなくて……」

「ケーキはね、母がよく作ってくれたの。それだけ」

特別な食べ物、という意識がたぶん人より薄いのは、きっとそれが理由だろう。ことある毎に食卓に手作りのケーキが並んで、私はそれを普通だと思っていた。でも、それはほかの家族にとっては意外なことで、私のうちにとっても振り返ってみれば特異な出来事だった。

「誰かの誕生日には、必ずケーキが並んだ。休みの日だったら、私も手伝った。だから覚えているの」

「ケーキの作り方は覚えているのにみこの誕生日は覚えていない」

「あなたの誕生日っていつなの?」

「神様的にはなんとも言いがたい」

「うちに来た日が誕生日というのがわかりにくい。今決めていい?」

「なんか投げやりだ……」

「2月11日」

「どうしてその日なのだ?」

「いなりの日だから」

「なんでそれは覚えているのだ!?」

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