空「『ヴィジット』」

「ヴィジットを見た」

「アド街?」

「締め付けられるような怖さのなかにもしっかりびっくりポイントあってよかったですねー」

 夏の終わりの納涼会。とはいえ夏休みも皆無な通常勤務の帰り道、あかりに捕まった。

「シャマラン作品、これが初めてなのよね」

「シックス・センスをご覧になったことがない?」

「ネタバレのせいで……」

「あれはなんか、ネタバレしていいみたいな風潮ありますね……空さんのような人がいる以上褒められたものではないですが」

「自分のなかで一年ルールを定めているから。それで被害に遭っても怒ったりしない」

「貴重な機会を奪われるのは残念ですけどね」

「今回は、展開読めなかった」

 ちょっと悔しい。

「別に分かればいいってものじゃないと思いますよ。答え合わせのときに納得さえできれば」

「種明かしの上手さは作り手として求められるところよね」

「ダムが決壊するみたいに、積み上げてきた伏線を一気に回収する。これが気持ちいいんです」

「思えば最初から怪しかった」

「でもこういう老人いるよなー、で済ましますよね」

「むしろ優しくしなきゃってご時世……でもCMでやたら強調されてた3つのルールって、出てきたかしら」

「『地下に入るな』と『夜に部屋から出るな』しか印象ないですよね。まぁ、ファスト映画が好まれてしまう世の中ですから。分かりやすいフックがないと売れないと思ってるんでしょう」

「だから見たいとは……あまり思わないと思うんだけど」

「空さんだったらどう宣伝します?」

「『最後の5分間、きっとあなたは恐怖する』」

「えっ」

「いや、最後お父さん出てきたじゃない? 誕生日のシーン。あのときのお姉ちゃん5歳くらいだと思うんだけど……お父さん……28歳の誕生日って」

「あぁ……」

「23歳の子ども? って怖くなった」

「当たり屋と同じ発想」

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