遠回りの道を選んでしまう才能には富んでいる
「話の展開が読めることあるじゃないですか、私レベルともなると」
「アスのオチに気づいたときはちょっと感動したな」
「外れたときってどうしてます?」
二人きりの映画館で、リメンバー・ミーが垂れ流されている。これも、こっちが本当のお父さんだろうなと気づいていた。しかし泣いた。いい話は、展開が読めようが読めまいが泣けるのだ。
とはいえ。自信たっぷりに自分の中で決め打ちして外したら。
「恥ずかしすぎる」
「私この前『自由研究には向かない殺人』を読んでて、黒幕が分かったと思った瞬間に泣いたんですよ。その結末は残酷すぎる……って。それから5分くらい読み進められなくて、意を決してページめくったら全然別の人が真犯人でした」
「二度楽しめて美味しいじゃん」
「私は浅はかな読者ですと作者に謝りましたよね」
「ノーラン系は、全く先が読めない」
「先どころか今何やっているのかも稀に怪しくなりませんか?」
「テネットはずっとわからなかった……」
「プレステージは道尾秀介みたいでしたね」
「今何を見ているのかわからないけど必死で着いていくみたいな感覚は、嫌いじゃない」
「ハードなsfとかなんの説明も寄越さないハイファンタジーとかです?」
「数Ⅲの勉強がそんな感じだった」
「あれ趣味で楽しむ人います?」
「まあ好きと得意はまた別の話だしね」
「あてのないひとり旅とかにも通じるところありそうですね」
今乗っているバスがどこに向かうのか。海はどっちで、山はどこなのか。目的も答えも用意せず、ただ港町で海鮮丼が食べたい、そんな気持ちだけ持って旅に出るのは、一度やってみたいと思う。
「旅とか、忙しくてもうできる気がしないな」
「ロードムービーで我慢してくださいよ。映画や小説は人生の追体験。RPGみたいなもんですよ」
「次何見るの?」
「プリシラ」
「あれをロードムービーと言い張る勇気」
「『家に帰りたいわ!』」
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