腹八分くらいの家路が一番ちょうど良い
「焼肉屋とかのマスコットが牛だったり豚だったりすることあるじゃないですか」
タバコのシーンは喫煙がしたくなる。なら逆も言えるのではないか。ケンタッキーを買ってきて食べながら見たい映画を決めた。韓国の警察が張り込みのためにチキン屋を開く話。韓国映画はあまり見ないけど、これは嫌いじゃない。あと、5人組のアイドルの一人が主役をしていた、幸せを届けるという郵便屋さんの作品も。
「田舎の焼肉屋とかそうね」
「あれいまだに納得いかないんですけど。分かってるんですかね、彼らは」
「何を?」
「自分の立場を」
この映画、序盤は登場人物が落ちこぼれのように扱われるのだが、それを活かした後半のカタルシスがとんでもなく気持ちよい。
「私が育てられましたってこと?」
「いえ、彼らがただ食べられる側なら分かるんです。でも大抵、フライパン持ってたりシェフ姿だったり、完全に調理側じゃないですか。同族を売って金を稼ぐ裏切り者ってわけですよ」
「そう考えるとケンタッキーとかマクドナルドとかは潔いわけか」
「私が育て、絞め、味を付け、売っていますって、にっこにこで宣言しているわけですからね」
「野菜とかに生産者の顔が乗るのも嫌いな感じ?」
「あれに対して何か感情を抱くほど暇人じゃないですよ、私」
「結婚の挨拶とか授業参観とかで、親が出てくるのと似てるよね」
「私が育てました」
「親の顔見てどうこうってわけじゃないけれど、それ以降親の顔がちらついて、なんか冷めそう」
「家族ぐるみって、良い方向に転ぶ場合も、悪い方向に転落する場合もありますよね」
「不干渉を徹底してほしい派だったな」
「空さんって、親いたんですか?」
「石から生まれたと思われてる?」
「人らしい感情をどこかに置いてきているみたいでしたから」
「だからこうして映画を見て人を学んでいるのさ」
「人のことを理解して、弱みにつけ込んで、育てて絞めて売るつもりでしょう」
「私はそれが好きだから」
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