それはあなたの身に返ってくるから

空「誕生日とかクリスマスとか、祝ってほしくないのよね。ただの平日であってほしい」

あ「その心は……いえ、待ってください当ててみせますよ」

空「やってごらんなさい。当たったら今まで分の誕生日プレゼントあげるわ」

あ「2回分ですか。まあそういうところなんですけどね。自分がやりたくないから他人のもしないんでしょ」


 その言葉を反芻してから、おずおずとタバコの箱を差し出した。


あ「いらねぇですね。しかも開封済みじゃねえですか。そういうところですよ、地が出てるの」

空「だって他の人の誕生日なんて覚えないじゃない。なんなら自分の誕生日すら興味ないし」

あ「それは祝うのも祝われるのも面倒くさいからでしょ。いいじゃないですか、もらえるもんはもらっておけば。返す義理はなし。来年から会わなきゃ良いんです」

空「面の皮が厚いわね」

あ「一人でも生きていけるだけですよ」

空「施しを受けている人を独立した人間とは呼ばない」

あ「じゃあ、世の中のしっかり誕生日もクリスマスも祝い合う健全な若者は、みんな未熟ってことですね」


 灯台守の映画を、淡々と流している。本当はもっと早く帰れるはずだったのに、嵐で定期船を逃して、途方に暮れる若者とおじいちゃんの話。閉鎖空間で知らない人と二人きり。他者に気を遣い続けるのと、自分以外に話し相手がいないの、どちらが辛いだろう。私だったら、後者を選ぶ。


空「人といるくらいなら、孤独のまま頭火星に飛ばした方が、気は楽よね」

あ「まあ一人だろうが二人だろうが、結果的に狂うんですがね。それで、ミーちゃんに何をねだられたんですか」

空「全く、誰が誕生日なんて教えたんだか」

あ「バースデーって言ってました? クリスマスでなく?」

空「そういえばそうかも。なんで?」

あ「いやホームアローン見せたんで」

空「じゃあプレゼントはあなた持ちね」

あ「私はもらい専なので。まあ、いいじゃないですか。クリスマスまであと4ヵ月。たまには他人のことじっくり考えてあげたらどうです?」

空「この社会で真っ当に生きようと思ったら、嫌でも他人のこと考えなくちゃいけないのよ」

あ「空さんはお人好しだぁ」

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