姫の決意(嘘)

 クーリオンを制圧した。


 ゾンビには油断が出来ないが、そこまで心配する必要は無いだろう。


 奴らは暴走した食欲で動いている。ゲームみたいに、タンスにジッと隠れるなんて出来るハズもないのだから。

 夕暮れ時、夏と言えども肌寒くなり、俺はバニースーツの上にマントを羽織った。


「何か解るでしょうか?」


 尋ねたのはマントを持ってきてくれたシノニムさん。

 視線の先には木村、それに軍医やオーズド伯の姿もあった。


 彼らはクーリオンの中央にある井戸に集まり、水の安全性を確かめているのだ。


「何も解らないでしょうね」

「そうですか……」


 俺が肩を竦めると、シノニムさんは顔を曇らせた。

 ……最近、どうにもシノニムさんの顔が暗い。大人の女性には色々と悩みが多いのだろうな。


 一方で悩みとは無縁の女性も居る。

 その女性の見つめる先には、あの井戸から汲んだばかりの水。

 マジマジと見つめたかと思えば、なんと、そのまま飲み干した。


 このゾンビが溢れる街の中で!


「どうです?」


 尋ねれば、ほぅ……っと吐息混じりに色っぽく、不敵な笑みでコチラを見てくる。


 シャリアちゃんだ。


「かなりの量ね」

「そうですか……」


 何がって? 魔力の量だ。


 この水には多量の魔力が溶け出している。シャリアちゃんの魔力が視える体質が大活躍である。

 そうは言っても水に溶ける程度、俺にとっては美味しいぐらいだ。人間だって寝込む程ではないだろう。

 しかし、霧の悪魔ギュルドスで魔力を奪われた後、この水を飲むとどうなるか?


 体内の魔力バランスが崩れて、食欲が暴走する。


 魔力バランスが崩壊しなかった人でも、噛まれたショックで暴走したりもする。

 片方だけでは毒と判断出来ないハズで、まして魔力が原因となれば木村の知識も無力だろう。

 頼れるとしたら、ここに居るシャリアちゃん。この世界の毒のプロフェッショナルだ。


「合わせ毒の一種よね」

「合わせ毒とは?」

「金属杯に、酸性の果実ジュースを注ぐ。単体では毒で無くとも、溶け出した重金属が体を蝕むの。ビルダールの王様もソレで体を壊したわ」

「……そうですか」


 サラッとトンでも無い事言ってくれるじゃん。

 ……我々は何も聞かなかった。良いね?


「ソレで……普通の毒を使わなかった理由はなんでしょう?」


 無視して先を促すあたり、シノニムさんも強過ぎませんかね。


「合わせ毒を使う時は、犯人もその毒を飲む必要がある場合。つまり、このクーリオンに住んでいた可能性があるわ」


 ……嫌な予感してきたな。

 皆で顔を顰めていると、不意に声を掛けられた。


「姫様、ココに居たのですか」

「アナタは……」


 同じエルフの……誰だっけ?

 あぁ、マーロゥ君だ。兄の形見の双剣ファルファリッサを使う美少年、いや、もう美男子である。


 そりゃ、俺だって兄の形見をそばに置いておきたい気持ちはある。

 だけど、ファルファリッサは強力な魔剣だ。仕えるヤツが使った方が良いし、そうして兄の無念を代わりに晴らして欲しいのだ。

 それに、マーロゥが使うならさぞ絵になるだろうなと思っている。まぁ、ステフ兄ほどじゃないけどな。


 話が逸れた。


「何用ですか?」

「ユマ姫、いや、ユマ女王。一度、大森林へお帰り願えませんか?」

「何を言っているのです?」


 いや、ホントに何を言ってるんだ? ツッコミ所が多過ぎてリアクションも取れないぞ。

 ……しかし、大マジみたいだ。


 マーロゥは俺の前に跪き、両肘を握って腕を組む、この世界での臣下の礼だ。


「戦の趨勢は決まったモノとお見受けします。これ以上、御身を危険に晒す必要はありません。ソレに……」


 ソレに? 跪いたマーロゥ君の視線は、マントからはみ出た俺の網タイツとハイヒールを彷徨う。


「その……今の女王のお召し物は余りにも卑猥。下賤の者を喜ばせる為とは言え、女王がその様な姿を余儀なくされている事が許せないのです」


 顔を真っ赤に言い募る。

 ま、止めるよな。

 自分の所の王族が娼婦でもしない様な格好で、男だらけの軍隊の中を練り歩いてるのだ。


 性に奔放な地球だって、皇族がバニー姿で前線視察なんて大スキャンダル。

 まして、俺は軍の先頭を白馬で駆けてるからな。我ながら正気ではない。


 でもね……。


「ソレは出来ません」

「何故です?」

「この軍に私が必要だからです」


 だって、俺のエロ可愛さで無理矢理まとめている様な軍隊なのだ。

 俺が居なくなれば、途端に空中分解してしまう。


「軍はココで解散するべきではないですか?」


 シノニムさんまでそんな事を!


「このチャンスを逃す訳には参りません。このまま一気に帝国の中央まで切り込みます」

「無茶です。糧食も続きません」

「ゼスリード平原の穀物を徴発すれば良いでしょう!」

「何故、ソコまで急ぐのです!?」

「神の意志です、我々に残された時間は多くありません」


 そう叫ぶと、シノニムさんは「また神かよ」と言う顔をした。

 まぁ……全然信じてないよね。神に会ったのはガチのマジなんだけど、神が告げたのは何とか生き延びて、死の原因を探る事。

 自殺紛いの無茶な行動は、実質、神への反逆だ。その自覚があるだけに、俺が語る神の言葉に軽さが出ている。


 どうにもならずヤキモキしていると、再びマーロゥから声を掛けられた。


「このまま人間の手で帝国を討ったとして、我らの、エルフの復讐が成ったと言えるでしょうか?」

「…………」


 ソレを言われると痛い。


「姫様の武功は既に十分。タナカ様の武勇伝に至っては、失礼ながらお父上、エリプス王の英雄譚すら超えています。全てを語るには数日を要する程でしょう」

「そう、ですね……」


 父様を越えたと言われてムッとしたが、エルフから見ると実際、田中の功績はクソほど大きい。

 フラリと大森林に現れて、剣一本で国を救った。その上、魔獣の間引きに関しては、死んだ戦士達の穴をたった一人で埋める勢いだとか。


 エルフは魔獣を討てる者が一番モテるのだ。

 田中の討伐スコアは群を抜いている。


 武勇伝と言えば、この前の一騎打ちもだ。

 マーロゥが破れた後、攻め込んできた精鋭達を田中は一人で屠って見せた。


 剣にひたむきな少年が、スッカリ田中に惚れ込むのも無理はない。

 ……いや? それにしたって。


「どうしてソコで田中が出てくるのです?」

「それは勿論。お二人で大森林に戻り、母国を、我らがエンディアンを再興して頂きたく!!」


 ……え? 二人で? それって。


「な、何を言うのです!」


 気持ち悪さとない交ぜの、良く解らない恥ずかしさ。

 少女みたいに照れて、しまった。

 その話、まだ生きてたのかよ。


「タナカ様が人間で、ユマ様は人間とのハーフである事は承知しています。ですが、二人が王と成る事に異論を唱える者は居ないでしょう。二人が居なければ、今頃はエルフ自体が滅んでいたのですから」

「いえ、そういう話では無く……」


 どうして俺がアイツのお嫁さんにならねばならんのだ!

 他の誰でも良い。なんならマーロゥ、オマエでも良い。


 田中とだけはキツイだろ。


 俺が本気で迷惑そうな顔をすると、マーロゥは少し慌てて意外そうな顔をした。


「アニキ、いや、タナカ様からも、ユマ姫の話を良く聞きます。仲は良いと思っていたのですが……」

「私もソレは不思議でした。あの日、タナカ様が身を投げた崖下を決死の覚悟で探す姫様を見た時から、二人はてっきりそう言う仲だと……」


 マーロゥだけでなく、シノニムさんまで! いや、そう思うのも当然か。

 俺と田中が出会ってから、深い友情を育む時間は無かったからな。

 それが、男女の仲だとそう言う話にも説得力が出るらしい。


「タナカの事は関係ありません。私は私の使命を全うするために行動しています。この格好にも意味があるのです」

「しかし、それではタナカ様が何と思うか」

「え?」


 ……それって、あんまりエロい格好してると田中に嫌われちゃうぞって、そういう心配??


 俺が捨てられる方を心配してるの?

 ……なんかムカつくな、ソレ。


 いっそ、既にフラれたと言う事にしてしまうか?

 いや、何かプライドが傷つく。


 ってか、マーロゥ、オマエもどうせ好きだろ? エロい格好が!

 他人事みたいに賢しい事を言ってるが、気取るんじゃねぇよ。


「マーロゥ!」

「ッ! 何でしょう」


 伏せていた顔を上げ、コチラを向いたマーロウが、慌てて再び目を逸らす。

 俺が、マーロゥに向けて両手を伸ばしていたからだ。


 思い出して欲しいのだが、俺はバニースーツの上にマントを着ている。

 そして、マントには袖が無い。手を伸ばして掻き分けられた隙間から、ドエロいボディが御開帳。


 ひょっとしたら曝け出した普段の俺より、マントの隙間からチラリと覗くバニー衣装の方が却ってエロいかもしれん。


 現に、俺がマーロゥの顔を両手に挟み、無理矢理コチラを向かせると、マーロゥは滑稽な程に顔を赤くし狼狽した。まして跪いた体勢では俺の下半身をマジマジと見てしまう、マーロゥは慌てて立ち上がった。


 それでも、俺は両手を高く上げ、マーロゥの顔を離さない。手を伸ばして端整な顔を見つめる。

 こうしてみると、思い出す。

 俺とマーロゥでは、頭一つ分ぐらいは身長差がある。


 ……あの時も、そうだった。


「大きくなりましたね。マーロゥ」


 しみじみとそう言った。

 あの日、生誕の儀で、俺とマーロゥは共演した。

 大多数の人にしてみれば、子供同士のなんて事の無いお遊戯だったろう。だけど、あの時の俺には命懸けの大冒険だった。


 それでも、あの時は幸せだった。幸せを守る為の戦いだった。

 今はもう、あの時の俺を知る者は、殆ど居ない。


 そう思うと、何だか悲しくて少しだけ泣けてきた。


「……姫様」


 目が涙に滲むと、マーロゥに心配されてしまった。

 別に心配する様な事は無い。ただ、懐かしくて、少し昔の話がしたくなっただけだ。


 幸せだった、あの時の。


「少し、昔の事を思い出しました。あの時とは、何もかも、変わってしまいましたね」

「いいえ」


 いきなり否定されたんだけど?

 ムッとして睨むと、真剣なマーロゥの瞳とぶつかった。


「私は、ずっと変わらず、姫様を愛しています」

「…………」


 真っ正面から言われると思わなかった。

 どう返せば良いか解らず、言葉に詰まる。


「姫様を守る為に、舞台を降り、剣を取りました。私が願うのはユマ姫の安全と、幸せだけです」

「私の幸せ、ですか……」


 段々とイライラしてきた。

 俺の幸せなんぞ、俺にも解らんモノを、一方的に押し付けるな!


「まず、私は王になるつもりはありません」

「なぜです? 皆、ソレを望んでいます」

「それは皆の望みです。私の望みではありません」

「一体、何がお望みなのです?」

「帝国への復讐、ソレだけです」

「そんな……」


 マーロゥだけでなく、シノニムさんまで悲しそうな顔をした。

 痛々しいとか、全部忘れて楽しく暮らせば良いのにとか、そんな事を思っているのだろう。

 でもな、そんな事が出来るモノか!


「マーロゥ、もし私が誰かに討たれたら、アナタはその犯人を探し出し、殺してくれますか?」

「必ずや!」


 胸を張って即答する。

 ならば。


「では、全てを忘れて、役者に戻って楽しく過ごしてくれと言われたら、その通りに出来ますか?」

「……それは」

「出来ないでしょう?」


 殺した犯人がぬくぬく楽しく生きていると思うだけで、血が沸騰する様な怒りに駆られるハズだ。


「だから私は帝国が滅びるまで、落ち着くつもりはありません」

「な、ならば、帝国打倒が叶った暁には!」


 ……そう思うよな、でも、俺には未来など無いのだ。

 どうせ『偶然』に死ぬ! ならば!


「多くの人間を殺戮し、帝国を滅ぼして、私の復讐が叶ったとして、私の様に家族を殺された者は、一体、何を恨むでしょうか?」

「それは、王国や、我々エルフを……まさか」

「ええ、それでは復讐が終わりません」

「いや、しかし、それは!」

「その者にはエルフではなく、私を恨んで貰いましょう。憎しみの連鎖は私で終わらせ無くてはなりません」

「そんな……なぜ、そこまで」


 俺の言葉の意味を悟ったマーロゥは、ガックリと膝をつく。

 シノニムさんも蒼い顔で震えていたし、騒ぎを聞いていた周りの兵士達も、シンと静まり返っていく。

 俺はその様子に内心で満足していた。

 だが一方で、シャリアちゃんだけは白けた顔で肩を竦めていた。


 ……演技には自信が有ったのだけど、本当にこの狂人だけは油断がならない。


 そもそも、俺が帝国を滅ぼした後、誰が誰を恨もうが知ったこっちゃない。世界が無くなったとしても、全く構わない。人間が全滅してもオッケーだ。

 復讐の連鎖なんてまるで心配していない。


 俺の願いは、ただ殺す事だけだ。


 帝国の、少なくともエルフの国への進軍に関わった連中は、根絶やしにせねば気が済まない。


 ただ、それには時間が無い。『偶然』に巻き込めるなら。

 いっそ帝都に捕虜としてお邪魔したいぐらいだ。

 しかし、それではアッサリ殺される可能性もある。俺の厄介さを知ってる魔女ならやるだろう。


 生きて復讐を果たす時間を延ばすには、皆が俺の事を想って、監視し、『偶然』の関与を減らすのが重要だ。


 その為に、敢えてドエロい格好をしてるのだが……

 ソレだけでは足りない。


 エロだけでは、一度スコスコして、スッキリしたら忘れてしまう。

 もっと強烈なインパクトが必要だ。それは気持ちが良いだけで無く、後味が悪い罪の意識とない交ぜになったモノが望ましい。


 『悲劇』だ。


 まだ幼い少女が、その身を賭けて復讐を果たした後、皆の悪意を背負って生贄みたいに死のうとしている。

 その決意を知れば、助けられるエルフは冷静で居られず、何をおいても俺をサポートするだろう。

 ひょっとしたら、エルフ達は生活に必要なレベルの魔石や魔道具すら戦場に送ってくれるかもしれない。


 人間側だって、ソレは同じだ。


 俺の物語を知っている王都の人々は、そのラストシーンを想像するだけで涙が止まらないに違いない。

 現に、静まり返ったクーリオンに、今は鼻をすする泣き声が混じっていた。


 内心で、良いデモンストレーションになったなと満足して、周囲を見回すと。ふらりとマーロゥが立ち上がる所だった。


「えっ?」


 ガシッっと肩を掴まれる。繰り返すが肩は女性のエロい部分だ、普段のマーロゥなら絶対にしない行為である。


 顔を間近にマーロゥは叫んだ。


「守りま゛ず! 俺が! がならず! ひめざまを゛!」


 泣いていた。ボロボロと。鼻水すら出しながら。

 折角のイケメンが台無しだが、不思議と、悪く無いなと思った。


「頼みましたよ……」


 穏やかにそう言うと、マーロゥは言葉もなく何度も頷いた。

 周囲にも、なんだか優しい穏やかな空気が流れる。


 その時だった。


「おーい」


 闇夜を切り裂く、間の抜けた声。

 田中のモノだ。


「んだよ? どったの?」


 いつの間に、俺の近くで先ほどの寸劇を聞いていた木村が尋ねる。


「いや、普通に敵が来てるってだけなんだけど?」

「オオゴトじゃねーか! あの、戦闘指揮をお願いします」


 木村に頼まれ、オーズド伯が苦々しく頷く。

 クーリオンに到着したオーズド伯は、軍を暴走させた俺を叱り、指揮権を取り戻した。


 俺からもオーズド伯に従う様にお願いしたので、帝国の軍勢も従ってはくれるだろう。


 しかし、もはや半分以上が帝国軍となった軍勢に、オーズド伯自身がやりにくそうにしている。


「総員! 戦闘配置につけ!」


 号令するも、兵の動きが悪い。

 原因はオーズド伯ではなく、俺が作った悲劇的な空気だ。

 怒りは無謀と共に活力を生むが、悲しみは行動を鈍らせる。


 仕方無い、俺は拡声の魔法すら使い、澄んだ声で叫ぶ。


「みんな、お願い! 私を、守って!」


 するとまぁ。


 ――おおぉぉぉぉ!


 と、地響きみたいな鬨の声が各所で上がった! 皆が血走った目で駆けていく。

 元気があって大変ヨロシイ!


 一方で元気が無いのがオーズド伯だが、めげずに田中に尋ねる。


「敵の数は?」

「大体、三千ぐらいっすわ」

「そうか、少ないな」


 いや、全然少なく無いぞ?

 しかしオーズド伯の気持ちも解る。コチラは万に近い数が揃っている。これでも足が極端に遅い補給部隊などを除いた数だ。

 今の戦争が、銃と兵の数で決まる事を知っているなら、コレは無謀な進軍だ。木村も首を捻る。


 しかし、田中はもっと重要な情報を持っていた。


「やつら、物々しい兵器を持ってるぜ。ガトリングガンみたいなのとか」

「出してきたか!」


 木村が開戦から心配していた、魔女の本隊の可能性が高そうだった。


「いや、しかし、三倍以上の兵なのだぞ?」


 オーズド伯は納得が行かないみたいだ。数こそ大事という、今までの話と矛盾するので無理はない。

 木村がバツが悪そうに答える。


「それは武器が同じ場合です。コチラが一発撃つ間に、百発撃てる武器を相手が持つのならば三倍の兵など意味がありません」

「なんだと!」

「その為の装甲車なのですが……」


 木村が広場の中央に止めた装甲車をチラリと見る。

 ……嫌な予感、するよな。


 ――ドゥン!


 その時、一件の家が突如爆発する。

 皆が白煙をまき散らす家を呆然と見つめた瞬間、連鎖的に爆発が起こった。

 周囲はあっという間に白煙に包まれる。


「煙幕爆弾ね!」


 シャリアちゃんが叫ぶ声。


 なるほど、彼女がよく使う、煙幕を火薬の爆発で一気に広める爆弾とよく似ている。

 しかし、違うのだ。


 全身から力が抜けて、俺は地面へとへたり込んでいた。

 気力を振り絞り、バニー衣装のカフスボタンを食いちぎり、飲み込む。

 何故か? このボタンは魔石で出来ているのだ。


「違います! 霧の悪魔ギュルドス爆弾! 敵は霧を爆風で一気に拡散しました!」


 通常の霧なら、魔導車の速度で、俺達エルフは逃げ切れる算段だったのだ。

 俺の魔法も、兵力差も、埋める方法を敵は用意していた。


 俺だけじゃない、魔女もココで一気に勝負を決める気だ。

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