第17話 白銀の神滅器、奪われる魔導書#05-1

 その場に残されたケイオスとツムギは対峙する。


「……」


「改めて対峙すると……」

(ホムンクルス、だな。ベースは)

「私、なのね」

(分析結果、一致点が多く見られる。つまるところ、妹、と言う位置付けだな)


「……」


 ケイオスが動く。どうやらテイカーの命令、離脱を実行するために合流しようとしていると様であった。


「分断したんだから、行かせる訳ないよ!」


 ツムギはクナイを方々へ投げ放ちケイオスの行く手を妨害する。


「ハッ!」


 ケイオスはクナイを容易に避けるが、命令遂行の為にはツムギが邪魔になると判断したのだろう。両手を金色こんじきの手刀にしツムギへ迫る。ツムギは手刀にクナイで応戦する。


「はぁあああ!」


「ッ!」


 一撃の重さと先手を取った事で優位に攻めていたはずのケイオスが押され始め、いつしかツムギの手数の多さにケイオスは防戦を強いられる。


(最強のバフがあるんだ!攻めあるのみ!)

「魔導書の歌声に合わせて……決めるよ」


 防戦を強いられたケイオスは金色の手刀を解除し翼を展開すると空中へと距離を取った。しかし何故かツムギは宙を蹴りケイオスに迫る。

 訳が分からず困惑するケイオスにツムギはクナイを首へと押し当てた。


「飛べたの?」


「跳んだの。コレを台にして」


 ツムギの手にするクナイをよく見るとワイヤーが繋がっていた。ツムギが方々へ投げていたクナイはワイヤーで繋がっていた。


「そんな細い物で?」


「バフのおかげかな」

(どちらかと言うと、高い建物にクナイを投げて固定。からのワイヤーアクションだが……)

「各種バフのおかげ!」

(説明、放棄したな。まぁ実際ケイオスにも絡まって、乗れるほどの足場が出来上がったか)


「……なぜ二回」


「なんの事かな?……ぐっ、やっぱり硬い」


 クナイで荊の首輪を破壊しようとするが出来なかった。そこでツムギは懐から光る球体を取り出し詠唱する。


「魔の理を、在り方を、破戒する力。依るべに従い顕現せよ。重纏かさねまとい


 光る球体は分散しツムギの持つクナイに纏わりつく。


「まだやれる!」


「わっ!?」


 ケイオスが翼をはためかせ、魔力による衝撃波を起こし拘束を解く。ツムギはバランスを崩すも何とか地に着地する。ケイオスも地に降りツムギと向かい合う。


「助けて欲しかったんじゃないの?」


「私の力、あなたにどこまで通じるか……試したかった。それにチョーカーを外せない限り、私に自由は無い」


「ん、なら外せたら私の勝ち。私と来なさい」


「それは、命令?」


「前半は。後半は、あなたの意思に委せるわ」


「……了承。なら全力」


 ケイオスは翼を解除すると両手に魔力を集める。それは籠手の様な形をなした。ツムギは再びクナイを構えた。

 ケイオスは籠手で殴り掛かりツムギはクナイでで攻撃を捌く。


「なん、っで!?」


 高密度の魔力籠手での攻撃を余裕で捌くツムギに驚きを隠せないケイオス。


「籠手をよく見てみな」


 ツムギに言われ、攻めながらケイオスは自身の籠手を確認すると、クナイとぶつかる毎に魔力の密度が減っては少し戻ってを繰り返していた。


「今の私のクナイは、全ての事象を無効化する。まぁあなたの籠手は、高密度過ぎて、少しずつだけど」


 そうは言うが着実に削っていくツムギにケイオスは不気味さを感じる。ツムギから距離を取ろうと後方へ跳び去る。


「我慢してね」


 ツムギは踏み込みケイオスに肉薄すると一声掛けて、首と荊の首輪の間にクナイを潜り込ませる。


(断ち切れ疾風千刃しっぷうせんじん重纒かさねまとい!)


 先ほどは切れなかった荊の首輪をツムギはいともたやすく切り裂く。


「それ、恥ずかしくない?」

(ある方が技っぽくないか?)

「えぇ……まぁそりゃそうだけど、発声する分、リスク、増えない?」

(リスクを背負う分、効果が増す。知ってるだろ?)

「……それよりケイオスは?」

(議論の余地ありだな。はぁ……)


「切れ、た?」


 ツムギがブツブツといつもの独り言を呟く。一方ケイオスは荊の首輪が取れたことに驚いていた。


「くっ、ケイオス!!俺を助けろ!!!」


 そこへ離れたところにいるテイカーが、大声でケイオスを呼ぶ声が聞こえてくる。

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