第16話 白銀の神滅器、奪われる魔導書#04

 ツムギが閉じ込められたドームの前に雪姫を持ち立ついのり。


「はぁあああ!」


 雪姫を回転させドームへ深く突き刺す。するとドームは崩れていき、中から拘束が解かれた横たわるツムギが現れる。


「けほっ、けほっ……あー、助かったよいのり」


「どういたしまして、先生。と言うか大丈夫ですか」


 いのりが心配そうに訊ねると、ツムギは土を払いながら答えていく。


「ん~だいじょばない。取り返すよ魔導書は。まぁいのり頼みになるけれど……。いのりは?ケイオスの事何か分かった?」


「そうですね……ケイオス、彼女は悪い娘じゃあ無さそうです。荊の首輪を装着させて、無理矢理に操っている感じです。まぁ精神支配の抵抗力が強いみたいで、完全に操れていないみたいですけど」


(それでまだ意識があるって事か)

「なるほどね」


「それに、やっぱり先生に何処と無くそっくりな気がしました」


(そっくり、かあ。悪い娘では無さそうなら、助けて話をつけるのが手っ取り早いか?)

「……そーだね。どう転ぶか分からないけど、ケイオスを助けてみようか」


「本気、ですか先生。一応素性の知れない敵の一人ですよ?」


「とか言いつついのり。君、嬉しそうな表情してるよ?」


「えっ、そ、そう見えますか?」


 ツムギの言葉に動揺してか、いのりは自身の頬に触れる。


「一応とか言ってる時点で、本音は助けたい、って事でしょ」


「あはは……。そーですね。彼女は操られながらも、チョーカーを外して、そう言いました。たぶん彼女は助けを求めている」


「……まぁそうだね。うん、じゃあ行こうか」


「追跡はしてますけど……先生。動けるんですか?」


 いのりは心配そうにツムギに訊ねた。


「問題なし、かな。動ける程度には回復してるよ」


「ほんとですか?そんなに時間、経ってないですよね。無理してません?」


「信用ないにゃ~。じゃあ、実際にタネを見せようか」


 ツムギは懐から一冊の淡く光る魔導書ラノベを取り出す。開くと魔導書はカラフルな光を放ち始めた。


「何ですかこの魔導書?」


「『九の女神から始まる物語』って言う魔導書。コレはかなり珍しい魔導書で、常時発動型支援系。閉じた状態だと、少し能力向上、オート回復等々。開いて使用すれば使用効果の即効。で、今発動させたのは各種回復」


「つまり魔力を完全回復したという事ですか?」


「Yes!さてと、じゃあ今度こそ案内よろしく」


 ツムギは魔導書をしまうと、改めていのりに案内を頼んだ。


「分かりました」


 素直に返事をして、二人はテイカーたちの後を追い始める。いのりはツムギにコレクションついて疑問を訊ねる。


「そう言えば先生、取られた魔導書って?」


「複数持っているうちの一つ。初版では無いけれど、私の大切な一冊」

(第6版は雷光系統で、使い方がシンプルで重宝するんだよなあ)


「先生の夢って確か……初版の魔導書をコレクションする、でしたよね」


「神域遺物を集める事が使命、個人的には初版の魔導書を、って感じだよ」


「使命、ですか?」


「私が永久とわを生きている理由だよ。まぁ、気にしなくていいよ」

(永久、とか失言じゃあないか?)


「……そう言えば先生って、昔から変わらないですよね。不老不死かってぐらい」


(ほらな。まぁ親しい相手に隠してる事でもないが……どうする?)

「……」


「先生?」


「あぁいや、テイカーたちは近いかい?」

(……いのりには、まだ伝えないって事か)


「あ、はい。ちょっと待って下さい」


 いのりは後を追わせている式神との距離を確認する。


「近いです!」


(捕らえた!コレは追ってきてるとは、思っても無いな)

「K。こっちも捕捉した!」


「作戦は?」


「ケイオスは私が解放する。いのりはテイカーから魔導書を奪い返して」


「了解です。本気で良いんですよね!」


「K!略奪者に目に物見せてやるといい」


 ツムギは『九の女神から始まる物語』の魔導書をポケットへセットし、もう一冊を取り出し開くと複数のクナイを顕現させる。


「じゃあ、スパッと決めるよ!」


 二冊目に栞を挟みポケットへセットし、テイカーたちへ瞬く間に接近する。

 ケイオスを射程に捕らえクナイを一刀投げ放つ。ケイオスは飛来物に気付き降下して回避する。地に降りテイカーを放した。ケイオスの突然の行動にテイカーは怒鳴った。


「おい!何で降りた!」


「攻撃」


「はぁ!?」


 テイカーは慌てて周囲を警戒する。そこへいのりがテイカーに強襲を仕掛ける。テイカーは寸前で気付き、収用札から盾を出し受けるがケイオスと引き離される。

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