第18話 白銀の神滅器、奪われる魔導書#05-2
間髪入れずに槍で追撃をするいのり。テイカーは盾で防ぎつつ、奪った魔導書を開き詠唱する。
「纏えよ雷帝!雷の鎧、サンダーアーマー!」
テイカーの全身が淡く光りバチバチと電撃がほとばしる。電撃を纏った事を察知していのりは追撃を緩め間合いをあけることを選ぶ。
離れたところでツムギとケイオスが戦いは始めたのだろう。戦闘音が微かに聴こえていた。それにより十分に引き離した事を確認したいのり。
「なるほど、便利だなコレは」
テイカーは魔導書を手にニヤリと笑った。それを見ていのりはムッとする。
「その魔導書、返してもらいます!」
「あぁ?返さねぇよ。これは俺が有意義に使ってやる。こんな風にな!」
テイカーが魔導書のページをめくり新たに唱える。
「駆けよ雷帝!雷の矢、サンダーアロー!」
テイカーの詠唱により雷の矢が出現する。その矢をテイカーはいのりに向けて投げ放つとテイカー自身も雷を纏って接近する。
対していのりは槍を長槍から短槍へ切り替え雪姫を杖のように扱う。
「集え氷の精霊、矢をもって迎え撃て」
氷の矢が出来上がり、雷の矢とぶつかり相殺する。と同時にテイカーが殴り掛かる。いのりは後方へステップを踏み容易く回避して見せる。
「オラ!オラ、オラ!!」
テイカーは続けざまに打撃を行うが、いのりは悠々と回避を繰り返す。
「単調ね」
「はぁ?」
「あなたにその魔導書は、相応しくないわ。扱いきれてないもの」
「うるせぇ!!」
いのりの言葉に過剰に反応を示すテイカー。雷を纏った大振りな一撃を振るう。その拳は余裕で避けられ空を切る。
「アイツがやってたのと同じはずだ!なのに何で避けられる!」
テイカーは地団駄を踏み、魔導書の別の詠唱を試す。
「纏えよ!雷帝の鎧!トールアーマー!」
速さが駄目なら圧倒的な力、と考えたのだろう。先ほどが淡くであるとすれば、今は完全に可視か出来るほどの電撃を纏うテイカー。手に持つは雷で形作られた両手持ちのハンマーであった。
「はぁ、やっぱりバカね。雷系は速さとそれに準ずる力が売りなのに守りでパワー形態って」
「うおおおぉ!!」
テイカーはハンマーを振り上げ勢いよく振る。
「……氷壁」
いのりはポツリと呟くと、氷の壁が出現し雷のハンマーを受け止める。
「うおおおおぉ!!!」
テイカーは更に力を込めて氷壁ごとぶち抜こうとする。しかし氷壁はひび一つつくこと無く、逆に接触点から雷のハンマーを取り込む様に凍らせていく。
「ぐうっ……っそ!」
必死に引き剥がそうとするが凍結したハンマーはピクリとも動かない。テイカーは悪態付くとハンマーを手放し再度距離をあける。
離れた事を見計らっていのりは気になっていた事を訊ねた。
「そう言えばあなた、転生者なの?」
「ハァン!?だったらなんだ!」
「伝承通りだなぁって。転生者は自身の力に溺れ傲慢に成りやすい」
「ふっっざけんなよ!お前だってそうだろ!?その顔立ち、日本人だろ!」
「ご先祖様がそうだったみたい。私はこの世界の生まれだよ」
いのりの言葉はテイカーに届いていなかった。テイカーは不意を付く様に詠唱を行った。
「駆けよ雷帝!雷の雨、サンダーレイン!」
「止まれ(凍れ)、雪姫」
雷の雨による回避不能な攻撃がいのりへ降り注ぐと思われた瞬間、タンッと言う音を響かせ攻撃含め辺り一面が氷結する。
「……はぁ?」
突然辺り一帯が凍りつきテイカーは目を瞬かせる。そんなテイカーにかまうこと無く、いのりは追撃を行う。
「氷の荊よ、拘束し封じよ」
「纏えよ雷帝!雷の足、雷足通!」
氷の荊がテイカーにまとわりつき拘束をする。テイカーは抜け出そうとするが荊が食い込み、より拘束を強固な物となり移動を阻む。
「くそ、なんだよこれ!!ふざけんな!雑魚が俺の邪魔をするなよ!」
悠々とテイカーへ近付き手に持つ魔導書を取り返す。魔導書を取られテイカーの纏っていた雷が霧散する。喚き散らすテイカーにいのりは語り始める。
「ならその雑魚に負けるあなたは、なんだろうね」
「……」
「あぁ、そう言えば名乗って無かったね。私は瀬戸内島の巫女、村上いのり。聖上から神域遺物『雪姫』を授かり、白銀の巫女と呼ばれているの」
いのりが杖にした短槍、雪姫を手にして自己紹介をおこなっていた。その話を聴きながらテイカーはニヤリと笑みを浮かべる。
「そうか、神域遺物なのか、それ」
「……だったら何?」
「スナッチ!!!」
訝しむいのりをよそにテイカーは叫んだ。おそらく奥の手を使ったのだろう。しかし何も起こらなかった。
「……何で」
「何か使用したの?」
「くっ、ケイオス!!俺を助けろ!!!」
不思議そうに訊ねるいのりだが、その時拘束を緩めてしまう。拘束が緩んだ事に気付いたテイカーはすぐさまケイオスを呼びつけた。
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