神域遺物の略奪者

第12話 白銀の神滅器、奪われる魔導書#01

「久方ぶりかな、日ノ本の島国に来るのは?」


 式神に乗り空間跳躍などを駆使して、日ノ本の島国その島の一つ、瀬戸内島へやって来ていた。この日ノ本の島国はその名の通り島が集まり、ひとつの国となっている。


(久しぶりと言っても、1年ぶりだろう?)

「そんな感じか~」


 瀬戸内島へ着くとツムギは式神から降りる。すると式神は人が乗れる大きさの四足獣の姿から小型の鳥の姿へ変化した。

 くるくるとツムギの頭上を飛んだ後、先導する様に進み始める。その後を付いて行く様にツムギは歩き始めた。


(いつもは気が向いた時、ふらっと来るからな)

魔導書ラノベ誕生の聖地にして、作品の聖地もこの島国って事が多いからね」

(誕生については、あくまで一説だがな)

「まぁ実際、魔導書を使うと普段より調子が良い物も多いから」

(だろうな。それより、この島で何があったのだろう?)

「空間跳躍の秘術を使ってまで連れて来られる……。相当焦っていたか不味い事態……どちらにせよ」

(面倒ごとが待ってる、か)

「……ん?式神が」


 先導していた式神が栗毛色のショートヘアーに制服姿の少女の肩に止まる。

 少女が指を式神の前にやると、式神は肩から指へ飛び移る。


「ごくろうさま」


 少女が一声かけると式神は鳥の姿から紙に戻る。そしてくるっと振り返ると少女はツムギに話し掛けた。


「相変わらず独り言にが多いですね、先生?」


「余計なお世話。キミこそ学校帰りかい?」


「そうですよ。まぁ私の自慢の霊装ですからね」


(制服が霊装でブレスレットはアイテムボックス。と言ってもアイテムボックスは、神器ラプラスをしまうためだけの専用の器)

「使いこなせているなら何よりだよ」


「先生?何時までも立ち話もなんですし、私の家に行きません?」


「……そーやね。じゃあ道中で説明して貰おうか、何があって呼んだのか」


 少女とツムギは並んで歩き始める。


「えーっと……実は数日前の事になるんですけど、夜間に見廻りをしていると不審人物と遭遇しまして」


「ふむふむ」


「交戦したんですよね」


「おい、ちょっと!村上いのりさん?」


「フルネームでどうかしましたか、先生?」


「何で交戦してんの!?」


「島を護る巫女ですから。対処したまでです」


「そ、そうですか」


 自信満々に答えるいのりにツムギは若干気圧される。いのりはお構い無しに、続けますよと言って話を続けた。


「交戦したんですけど、かなりやり手で逃げられたんです。そのうち1人が先生にそっくりだったんですよ!だから、先生の身内なのかなぁ、と」


「私にもう身内はいないかな。と言うか実際に見てみない事にはねぇ」


「まぁそうですよね。先生の事は疑ってはいないので、そこは良いんです」


「あ、いいのね」


「その代わり、先生にお願いがあるんです」


「ほぅ、お願いね。取り敢えず言ってみ」


「不審者確保までの協力と、稽古をつけて欲しいんです」


 いのりのお願いを聴き、少し考えてツムギは喋り出す。


「……ん、そうやね。そっくりさんも気になる事やし、まぁいいでしょう。けど、稽古ねぇ」


「取り逃がしたのは、私が未熟だったからだと思うんです。だからこそ、先生に稽古をつけて欲しいんですよ!」


「槍の扱いはもう越えてると思うけど……はぁ、分かったよ」


 熱心ないのりの嘆願にツムギは渋りながらも願いを聞き入れる事にした。


「やった!じゃあ今からやりましょう!」


「いやいや!?何で今からなのさ」


 稽古の了承を得てテンションが上がったのか今すぐと言い出すいのり。そんないのりをツムギは止める。


「え~良いじゃないですか。善は急げですよね」


「せめて食べてからにしない?もうすぐ夕飯時だし」


「それもそうですね。じゃあ早く行きましょう♪」


 そう言うといのりはツムギの手を引いて家に向かって走り出したのだった。

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