第10話 仮想の箱庭、二人の転移者#05
「視界が暗転したと思ったら……どこでしょ、ここは?それになに、この禍々しい
気付くとツムギはどこかの部屋で死神の様なモンスターと対峙していた。
「な~んか、最近こんなのばっかりね」
死神は大鎌を持ったまま動く様子が無かった。それはまるでツムギが仕掛けてくる事を待っている様であった。
「見える範囲に出口は無し……ふぅ……」
ツムギは確認を終えると一息着き、一冊の魔導書を取り出し開いた。そこから取り出したのは白銀に輝く一本の長槍であった。
「さぁ~て、神の名を持つ神ならざる者を倒しましょうか!」
魔導書に栞を挟み閉じてポケットへセットする。そして槍の先を死神へ向け宣戦布告をするツムギ。それを受け取ってか死神がゆらりと静かに動き始めた。
「え~っと、起動句は……ッ!?」
槍の能力を解放しようとし無防備なところに死神は容赦なく鎌を振るう。ギリギリで反応できたツムギはとっさに槍で受け止めるとそのまま後方へ跳ぶことで鎌の威力を殺す。
「現実より身体が思った通りに動くわね」
いつも以上に動ける事に驚きと共に感心するツムギ。しかし死神は待ってはくれない。死神は続けざまにツムギへ鎌を振るう為に一気に距離を詰める。
鎌を振りかざし死神が接近してくる事を認識したツムギは、急ぎ銀の長槍への祝詞を唱えた。
「目覚めよ、
槍が一瞬輝きを放つとツムギの周りに不可視の壁が張られていく。同時に鎌がツムギに向かって振るわれたが、不可視の壁の完成が先であった。鎌での切り裂きは不可視の壁に阻まれ弾かれた。
「……間に合った」
死神は不可視の壁を警戒してか一度後方に下がり様子を窺う。ツムギはこのを逃さず護りを解き攻勢へと出る。
「
不可視の壁が消失しツムギの持つ槍が眩い輝きを放ち始めた。輝きが続いている事を確認するとツムギは槍を構え一気に死神との間合いを詰めた。
「ハァッ!!」
ツムギの接近に死神は鎌を振り応戦してくるが、それをツムギは槍で受け回転する様にして受け流す。そして回転の勢いを加えた槍の突きを死神の顔面へ繰り出す。
「コレで、決まりかな」
槍を死神から引き抜き、セットした魔導書を取り出し栞を抜いた。すると白銀の槍はツムギの手元から煙のように消えていく。引き抜かれたと同時に死神も砕け散ると正面の壁が崩れ落ち通路が現れる。
「討伐完了♪」
ツムギはその場に座り込み一息をつく。そしておもむろにある人物の名を呼んだ。
「……見てるんでしょ、グリーン?」
暗闇で先の見えない通路から足音が響き、誰かが近付いて来ることを告げるのであった。
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