ルート3
放課後になり帰り支度をしていると、さっきまではそんな気配もなかったのに急に激しい雨が降り出した。
「雨か…傘ないんだよなぁ…。」
ひとまず下駄箱まで降りて雨の様子を伺う。
土砂降りだ。
「天気予報では降らない予報だったのになぁ…。」
空を見上げながら途方に暮れていた。
傘がないのだから仕方なく雨に打たれて帰るしかないだろうか。
覚悟を決めようとしたその時だった。
「あら…」
「新井くん?」
二つの声が重なって聞こえた気がするが、気のせいだろうか。
振り返ると、そこには池田さんがいた。
「どうしたの?」
「池田さん。雨が降っちゃったんだけど傘がなくてさ。」
「そうなんだ!」
池田さんはどことなく嬉しそうだ。
「じゃあ私の傘に入れてあげよっか?折り畳み傘持ってきてるんだ〜!」
雨に濡れることを覚悟に決めかけたところにその申し出は有難い。
「じゃあ、お願いしようかな。」
「いいよ〜!」
池田さんが傘を開き、その中に2人で入った。
「傘持って〜。」
池田さんが傘を手渡してきた。
「ああ、いいよ。」
俺の方が身長高いからその方が歩きやすいだろう。
俺たちは普通の傘よりやや狭い折り畳み傘に肩を寄せ合い帰り道を歩いた。
色々話しながら池田さんは俺の家まで送ってくれた。
「ごめんね、家まで送ってもらって。」
「もう、新井くん!そういう時は、ありがとうだよ!」
「うん、ありがとう。池田さん気をつけて帰ってね。」
「うん!じゃあね〜!」
明るく去っていく池田さんと入れ違いでこちらに歩いてくる影があった。
「隆司くん…」
近づいて来た影は叶井さんだった。傘もささずにゆっくりと歩いていた。
「叶井さん…?こんなところにどうしたの?」
「わた、も…か…うとし、のに…」
「え?」
そのか細い声は雨音に遮られてよく聞こえない。
「私も…!傘貸そうとしたのに!」
叫ぶようにそう言うと、叶井さんは急に俺めがけて走ってきた。
傘を振りかざすように持ち、雨に濡れることも構わず一心不乱に走ってくる。
その姿に言い様のない恐怖心を感じ、俺は逃げるように家の中に入った。
中に入ったと同時にバァンッとドアの向こう側から何かを叩きつけるような音が聞こえた。
俺はびくりと身を震わせた。
しばらく息を潜めて様子を伺っていたが、何も音沙汰がない。
俺は恐る恐るドアの向こうの様子を伺おうとゆっくりとドアを開けた。
ドアの向こうを覗いてみると、そこには誰もいなかった。
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