ルート2

「っ!!!」

目を覚ました。酷い冷や汗だ。

さっきまで見ていた光景は夢だったのだろうか?

カッターを片手ににじり寄ってくる叶井さん。そして振りかざされるカッター。

思い出すだけでも身の毛がよだった。

その光景を追い出すように俺は頭を振り、学校に行く支度を始めた。


授業が終わり、机の上を片付けていると、池田さんが声を掛けてきた。

「新井くん。ねえ、ここわかんないんだけど、教えてくれない?」

そう言って数学の教科書を広げて見せてきた。

「え~、俺だって数学得意じゃないよ。」

そう言いながらもひとまず広げられた教科書をのぞいてみる。

そうしていると、刺すような視線を感じた。

チラリとそちらを見ると、そこには叶井さんがいた。

夢に見た光景を一瞬思い出し背中がゾクリとする。

「佐々木が得意だから佐々木に聞いたら?」

俺は逃げるように池田さんにそう言った。

佐々木は池田さんを狙っているようだし、佐々木にとっても都合がいいだろう。

「え~、教えてよ~。次の授業で当てられてるから困ってるの~。お願~い。」

そう言って池田さんは眉毛を下げてお願いしてくる。

「うーん…」

「俺が教えようか?」

困っている俺に助け舟のようにやってきたのは黒田だ。

「新井くんが教えてくれないなら黒田くんに教えてもらおうかな〜。」

思わせぶりに言われるが叶井さんからの視線を考えれば願ったり叶ったりだ。

「うん、そうしてもらいなよ。」

あっさりと言う俺に池田さんは一瞬ムッとした顔をした。

「残念〜。」

そう言いながら黒田と共に俺の席の周りを後にする。目で追っていると「自分でやるから大丈夫。」と黒田を追っ払っていた。

池田さんが席から去っていくと、叶井さんからの刺すような視線もなくなった。

視線が和らいだのでチラリと叶井さんの方を見ると友人と楽しそうに談笑していた。その笑顔に癒される。

「可愛いなぁ、叶井さん。」

俺はポツリと呟いた。

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