あの日のお弁当



 卵焼きは焦げた。ハンバーグの形は悪い。彩りもイビツだ。初めてのデートでお弁当に初チャレンジしたが、散々な結果だ。



 可愛くない、愛想ない、料理も下手、頭デッカチ。それなのに彼は何を期待するのか?

 その卵焼きに箸をのばす。



「不味いなら、食べなくていいから」

「美味しいよ」



 彼はあっさりとそう言う。



「好きな人に作ってもらって、不味い訳ないじゃん」



 私は無言。彼の美味しいそうを表情を無言で見やることしかできなかった。






「不味いなら──」

「美味しいよ?」


 結婚しても変わらずのやりとり。彼が作った方が美味しいのに。


「好きな人に作ってもらって、不味いわけないじゃん」

 息子、君は黙れ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る