⭐ 星凛子 3 🍎

 今日はアイツとのデートの日。


 偉大なるソ連最高指導者だったこの私スターリンが、ヒトラーとデート……何この地獄。

 独ソ不可侵条約締結のときに描かれた風刺画(私とヒトラーの結婚式)を思い出すわね。


「ねぇキミ、今ヒマ?」

「うおっ、めっちゃ可愛い!」


 駅前の木陰にいると、中坊っぽいクソガキ2人組に絡まれた。


「カラオケ行かない? おごるからさ」


「……見て分からない? 私は人を待っているの」


「うおっ、ドSっぽい表情も可愛い! どこ中?」


「はー。貴様らこそ、どこ中だ? 学生は遊んでないで勉強しろ」


 言葉が通じるなら、たとえどんな相手だろうが屈服してみせる――それが私の矜持だ。

 まぁ、言葉の通じないナチどもは、武力ですり潰したわけだが。

 ましてや今の私にはTwitterと鬼女隊がある。どれ、所属校を聞き出して弱みの1つや2つでも――


「いいからカラオケ行こうぜ」


 クソガキの一人が、私のスマホを奪った。


「何しやがる! 人を待ってると言っているだろう⁉」


「怒った顔も可愛い!」


 クソっ、コイツら日本語が通じない!

 言葉とTwitterが使えないと、今の私は無力なんだ――





「お前ら、人のカノジョに何してんの?」





 不意に、背後から頼もしい声――日寅ヒトラー


「うっ」

「失礼しました~!」


 上背のある日寅ヒトラーにすごまれ、クソガキたちが去っていく。





 ……トゥンク。





 何だ何だ、この胸の感じは⁉

 や、野蛮な全体主義ファシズムも、局所的状況下においては有用なのかもしれない。

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