強き命

「ほどなく?そうはいっても半年以上のちの事であろう?」


「いえ、本当に程なく……一月も経たぬまでありもうした」


「そんな阿呆なそれでは早産というのも憚られるではないか」


「さようでございます」


「それではもつまい」


「はい……わたくもそう覚悟をしていたのですが……なかなかに強き命にございまして、あの通り生きながらえもうしたのでございます」


「……さようであったか」


そういって男は考えるように間をおいた。


そう言えば昔身籠って間もなく流産した赤子を供養する手伝いをした事があった。


その時の不憫な赤子の姿を何故か今思い出したのだ。


「確か……水掻きがあったはず、いや……嘴も付いていたような」


「はい?」


「いや、ちょいと昔の事を思い出したまで」


不思議な様子で首を傾けている女を横目に男は思索をめぐらした。


もしも……もしもだ……それほどまでに早く産まれた赤子がそのまま死なずにいきながらえたとしたら……。


男は寒くもないのにブルッと体を震わせた。

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