第5話 こんなエリートは要らない!

 只今、就職戦線、真只中!


 我が社も選りすぐりの優秀な者に唾を付ける。


「優秀な者?」


 我が社が狙う優秀な者とは高学歴の者である。


 旧財閥承継会社


 家柄が売りだ!


 しからば、やって来る連中もガリ勉くんが多い傾向となり、ステータスを重んじる学生が高学歴と得意の筆記試験に物を言わせ、続々と入社して来る。


 でも、非常に残念な傾向として…、


 東大法学部、早稲田・慶応、一橋の高学歴組、所謂、エリート学生達は、既に疲れているんだ…


 これは、我が社に限った事であると認識はしているが、


 入社イコールやり遂げた感が表出しており、彼らはスタートをゴールと勘違いしている節がある。


『エリート学生』イコール『エリート・キャリア』だと思い込み、次に全力でステップしようとしない。


 頭は良い。


 勉強は出来る。


 机上の仕事は得意だ。


 しかし、肝心要な人間力が乏しい…


 筋金入りの、血統書付きのワン公でも、「お手」も「お座り」も出来なない馬鹿犬が偶に存在するのだ。


 私は目の当たりに、とんでもないエリート・キャリアに遭遇した。


 歳は私と同じ位のエリートが、何故か地方に都落ちして来たのだ。


 その時分、本社でも子飼いのエリート連中を一旦、地方の長に就けさせ、一応、長としての資質の有無を精査し、本社に戻す事が良く行われていた。


 そのエリートもその類の者かと思っていたが…


 空前絶後のお馬鹿さん、ボンボンであった。


 高学歴、入社試験もトップクラス!


 何やら本社では、小難しい経済評論を取りまとめたエリートと聞いていたが…


 見かけは御坊ちゃま、独身男、朝食は手作りのスムージー!


 かつ、コミュ障の健康オタク、緊張するとチック障害的に瞼がピクピクと痙攣する。


 現場の仕事は全く経験なし!


 腐ってもエリート・キャリア


 元雑種共と違い、仕事を覚える気はさらさら無い!


 その点、部下の此方としても楽は楽だ。


 起案・決済は確実に「了」で降りて来る。


 言われた通り、ハンコを押すのは得意中の得意だ!


 しかし…


 人間力はゼロ….


 お殿様だ…


 怒れば怖気付き、野放しにすると付け上がる。


 子供だ…


面倒を見ましたよ!


 車のバッテリーの充電も1人で出来ないボンボン…


 ケーブル繋いで充電してあげましたよ…


 情け無い…


 熱中症で気分が悪くなったら、病院に連れて行きましたよ…


 病院一つ、自分で行けないボンボン…


 子供以下…


 頭は良い!


 無駄な記憶力


 オタク並み!


 高校野球、第何回大会、何試合目、何対何、全て暗記していました。


 このボンボンエリート!


 完全なオタクでした。


 無駄な記憶力、無駄な学力、無駄な高学歴


 こんな輩が我が社のトップになるんですよ!


 やってられるか!


 こんな会社!


 俺は愛想尽かして、おさらばしました!



 

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