第366話 襲撃
翌朝、ルイーズの町に向けて出発するが、主要街道にもかかわらず魔物が多く、何回目かの足止め状態だ。
「エディ様、討伐が完了しましたので回収お願いいたします」
「分かったよ」
アザリエが報告に来たので、魔物を回収していく。帰りのライナー男爵領でまた食料として必要になるだろうから、しっかり回収しておこう。
討伐した魔物を回収していくと、アレンに何かを指導しているアキラが見えた。
「アキラ、ご苦労様」
「これはエドワード様、魔物を回収して頂き申し訳ございません」
「帰りのライナー男爵領で、また必要になるかもしれないからね。それよりも、魔物がかなり多いみたいだね」
「襲ってきた魔物の中に最初から傷を負っていた魔物もいましたので、わざと集めたのでしょう」
「魔物同士で争ったんじゃなくて?」
「武器による傷だったので魔物ではないですな」
「それってやっぱり、僕たちを狙ったのかな?」
「おそらくそうなんでしょうが、この程度で何とかなると思われているのなら、見くびられたものです」
「アレン、怪我は大丈夫?」
「……大丈夫です」
「ならよかったよ」
アレンには公式の場じゃなければ、普通に喋って大丈夫と言ったのだが、そんな器用なことはできないと言って、現在騎士らしい言葉遣いを練習中なのだ。
「アキラ、向こうに柵があったわ」
森の中から出てきた、おばあ様が来た方向を指差す。
「そこまで用意しているのですか……シスルにリーリエ、隊を引き連れこの先の道の左右を探れ、敵については深追いせず報告のみでよい」
「畏まりました。ハグし隊行くわよ!」
「撫でられ隊行きます」
それぞれが隊を連れて探索に行く。隊の名前、ずっとそのままだったんだね。
「蔓を使って上空から見てみようか?」
「おそらく、どこからか見張っている可能性もございますので、エドワード様は出来るだけ能力を使わないようにお願いします」
「見張っているの!?」
「キョロキョロするでない」
「すみません」
おじい様に注意されてしまった。
「まあ、今回はもういなそうだから大丈夫だが、ここは自国でないのだ、常に見られている意識を持った方がよいな」
「分かりました」
「それではエドワード様、先に進みましょう」
馬車に乗り込み、再び出発する。
◆
一時間ぐらい走ったところで馬車が停まり、ジョセフィーナが入って来た。ずっとジョセフィーナが御者しているのには理由がある。カザハナとアスィミは仲が悪いようで、アスィミの指示を全く聞かないのだ。逆にジョセフィーナとは結構仲が良いことから、御者はジョセフィーナが担当している。
「エドワード様、シスルが敵を捕まえて来たようです」
「シスルが?」
探索のため先行していた、シスルの隊が敵を見つけたらしい。
シスルの所に行くと、縛られた二人の冒険者らしき人物がいた。
「この二人が?」
「はい、魔物を閉じ込めた柵を破壊しようとしていたところを阻止して捕えました」
なるほど、それなら間違いなさそうだ。
「助けてくれ! 俺たちはただの冒険者で、変な柵を見つけただけなんだ!」
冒険者の身なりをしていることから、予想される言い訳だな。
「君たちはマーリシャス共和国の冒険者なの?」
「そうだ! ギルド証も持っているぞ」
そう言った瞬間、冒険者が吹っ飛んだ!
「シスル!?」
「フィレール侯爵様に何という口の利き方だ! 冒険者なら、貴族に対する口の利き方を学んでいるはずでしょう?」
それで、蹴ったんだね! 諫めるどころか、みんな当然という顔をしているので、一般的な判断だと信じたい。
「仲間が申し訳ございません。そいつは少し口が悪いのです。ここからは、私が代わりに話しますので。今は縛られて取り出せませんが、ギルド証があるのは本当でございます」
もう一人が話し出すが、明らかに冒険者の口調ではない。冒険者にしては丁寧なワイルドウィンドのノーラでも、ここまで綺麗には話さない。
「それじゃあ、ギルド証を見せてもらえるかな?」
ハグし隊のデイジーとフェーレが、ギルド証を二人から聞いて取り出し僕に渡す。
「二人ともCランクなんだ。新人なのかと思ったら、意外とベテランだったんだね」
「長年貢献してきましたので。私たちに何かあったら、冒険者ギルドが黙っていないですよ?」
Cランクでギルドが黙ってないのだろうか? まあいいや、シスルに合図を送ると口の悪い自称冒険者の首を刎ねる。
「何を!?」
「冒険者のギルド証を奪ったところまでは良かったけど、詰めが甘かったね。マーリシャス共和国の人は、その気候から日焼けした人が圧倒的に多い。ベテランの冒険者でその肌色はないんだよね?」
「エドワード様、その通りでございます」
「理由は他にもあるけど、同じような気候の町で活動している冒険者がそう言っているよ、イグルス帝国さん?」
「ぐっ……」
やはり、おじい様の読み通りイグルス帝国の者だったのか。
「計画について話すつもりがあるなら……」
おじい様に遮られてしまった。
「エディ、仮にその者から情報を聞いたとしても、その情報が正しいのか分からない、聞いても無駄だ」
しまった、もう一人を残しておけば……。
「まあ、二人いても事前に相談している可能性もあるから、気にすることはない。ここで時間を無駄にする必要もないだろう。アキラ」
「畏まりました」
アキラが男の首を刎ねてあっさり終了する。柵の中にいた魔物も倒し、再び出発するのだった。
ちなみに、男たちは証拠になるような物を一切所持しておらず、おじい様の判断どおり、粘って証拠を引き出そうとしても時間の無駄だっただろう。
その後、魔物の襲撃を三回ほど撃退したところで、日もかなり傾いてきたため、アキラたちと話し合うことになった。
「あと少しでルイーズの町に到着いたします。このまま進むと夜中になってしまいますので、この辺りで野営して明日の朝一番で向かおうと思いますが、いかがでしょうか?」
アキラが野営を提案してきた。今日中に到着する予定だったけど、しょうがない選択だろう。
「それで良いと思うけど……おじい様?」
おじい様を見ると何か考え込んでいる。
「食事だけ済ませて、このままルイーズ入りするのはどうだ?」
「夜中に行くのですか?」
「向こうは当然明るい時間に来ると思っているので、裏を掻くわけだ」
「確かに意表を突くことはできますが、寝込みを襲われませんか?」
「野営をしても、この距離ならその可能性はある。どちらにせよその危険性があるのなら、意表を突いた方が良いだろう。夜の間に色々と手分けして調べ、翌朝会談に望んだほうが良いと思わないか?」
「確かにその方が良さそうですが、夜中に到着するのは問題ないのでしょうか?」
「呼びつけたのは向こうだ、気にする必要はない。付け加えるなら、招いたにも関わらず国境に出迎えもせず、街道の安全さえ確保していなかったのだ。非は完全にマーリシャス共和国側にある」
「なるほど、確かにそうですね。おじい様の案で行くことにして、夕食の準備にかかろうか?」
「畏まりました。お任せください」
そう言ってアキラたちは夕食の準備にかかる。
「エディ」
「おばあ様、どうしました?」
「夕食の後は風呂もお願いね」
「もちろん分かっています」
夕食を終え、風呂に入ってさっぱりした僕たちは、ようやくルイーズの町に到着したのだった。
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