第十三章 マーリシャス共和国編

第364話 プロローグ

 ――向こうにいたぞ!


「あぁ! 見つかっちゃいました!」


 夜の闇が深まる中、私はエディ様を背負い、追ってくる兵士から必死に逃げます!


『段々城から遠ざかっているな。エディの家族と合流した方が良かったのではないのか?』


 ヴァイス様の声がエドワード様の頭の上から響きました。その言葉は冷静で、この状況がただの日常の一部のような口振りです。この状況でも、エドワード様の頭の上に乗っているのはどうして!?


「そんなこと言われても、追いかけられているうちに、こうなったんです!」


『あの程度の兵士、さっさと倒してしまえばよいものを』


「魔物じゃないんですよ! 勝手に殺して後で問題になったら私が困るんですぅ!」


 私の声が闇夜に響き渡ります。


 ――あっちだ!


『また見つかったではないか、いちいち大きな声を出すな』


 ヴァイス様が冷静すぎるので、思わず叫んでしまったのです。



「ヴァイス様も手伝ってくださいよ! エドワード様のピンチなんですよ!?」


『このくらいはピンチでもなんでもないだろう。お前はエディに命を救われたのだ、感謝して逃げればいいのだ』


「救われたって……あれは危険な物だったのですか?」


『お前なら死んでいただろうな』


「……」


 嫌な感じはしましたが、まさか命に関わるとは思っていなかったです。エドワード様はやはりソフィア様の子なのですね……。どうやらエドワード様にも借りができてしまったようです。


「あれは何だったのでしょうか?」


ワレに詳細が分かるわけないだろう。それより、やはり我の言葉を理解できたようだな』


 焦っていたので、普通に会話してしまいました!


「……完全にヴァイス様の言うことが分かるようになったのは、つい最近なんです」


 嘘をついてもバレそうなので、正直に言うと。


『ふむ、その辺りは狼人族の特性なのか、お前固有の能力かは分からぬが、実に興味深い』


「あの、エドワード様には黙っていてもらえますか?」


『我はエディの味方だから出来ない相談だな。そもそもお前の忠義はエディには向いてないだろう?』


「……私はソフィア様のお願いを聞いているだけなので」


『まあ、お前の言うことが分からんでもないが、今回の件は大きいと我は思うぞ?』


 そんなことは分かってます! 私たち今、逃走中なんですけど、いくらなんでも冷静過ぎません? 取りあえずエドワード様から降りて走ってくれると助かるのですが?


「そんなに冷静なら、今の状況をなんとかしてください! エディ様、早く目を覚ましてくださいぃ!」


 闇夜に響き渡った私の声のせいで、また兵士に気づかれてしまいました……。


『当分の間起きないだろうから、頑張って逃げるのだ』


「そんな――っ!」


 反射的に叫んだ私の声は、闇夜に響き渡り。また、兵士を集めてしまうのでした。しかし、背中に感じるエドワード様の温もりは以前より心地よく感じたのでした。


 ――――――

 しばらく金曜更新で進めます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾

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