第339話 大きなウィズラと小さなウィズラ

 今日はノワールとエリーが遊びに来ている。遊ぶといってもお茶を飲んで話を聞いているだけなんだけどね。


『エディ様の……アムアムクッキーは……モグモグ久しぶりです』


 エリーはクッキーを食べ続け、リスのように頬は膨らんでいてとても幸せそうだ。今回はウルスの形にしなくて正解だったな。ちなみに前回のウルスクッキーは、ポケットに入れたまま転んだので供養(食べた)したらしい。


 ちなみにノワールはメレンゲクッキーの口どけをウットリした表情で楽しんでいる。


「前回レシピを渡したのですが、家では作らなかったのですか?」


「ラシュル様が料理人に指示して作らせていましたが、エドワード様の作られたものに比べると食感がいまいちでしたね」


 僕の問いかけにノワールが答える。エリーは食べるのに夢中で……あっ! 喉に詰まった!? すぐにノワールが紅茶を飲ませたので落ち着いたようだ。


『ふぅ、危なかったです。ノワールありがとうございます』


「エリー、慌てて食べなくても大丈夫よ」


『食べ始めると止まらなくなるのです! 何かの魔道具でしょうか?』


 道具ではないし、魔法もかけられていない。


「エドワード様が作られたのですからしょうがないのでしょうけど……」


 そう言ってノワールも食べるのを再開したところで。


 

「エディ様、大変です! あっ、申し訳ございません」


 親衛隊のリリーが走ってきたのだが、お茶会の最中ということに気がついたようだ。


「二人がいても問題なければ聞くけど?」


「よろしいのですか? それではご報告いたします。エディ様の建てた鳥小屋にウィズラ以外の鳥が住み着いたようなのでどうしたものかと」


「ウィズラ以外の鳥?」

 

 ちょっと気になるな。


「私も初めて見る鳥なので名前は分かりません。討伐しようと考えましたが、念のためエディ様に確認してからにしようと戻って来たのです」


「どんな鳥なのか気になるけど明日にしようかな」


「畏まりました」


 リリーが退出しようとしたその時、ノワールは突然立ち上がり。


「エドワード様、わたくしとエリーのことならお気になさらず……いえ、未来の妻として何かお手伝いできるかもしれません! お嫌でなければ一緒に同行させてください!」


『ノワール、ピンクは抑えてください。だけど、鳥さんはエリーも見てみたいです!』


 ノワールはデザートを食べた時のようなテンションだな。エリーがピンクって言うから、ノワールの顔が真っ赤になったじゃん。


「鳥といっても一応魔物だから二人に何かあると嫌だからね」


「わたくしなら大丈夫です!」

『そうです、ノワールは強いから安心なのです!』


 エリーはノワール任せなのね。それにしても困ったな……。


「エドワード様、同行する騎士団の数を増やせば問題ないのではないでしょうか? ついでにアルバン様を連れて行けば、正体不明の鳥についても何か分かるかと」


 ジョセフィーナが提案してくる。確かに騎士団プラスおじい様がいれば安心だけど、おじい様はついでなのか?


「おじい様って今日いたっけ?」


「暇そうにしていましたので大丈夫かと」


 おじい様は珍しく暇なようだ。



 ◆

 

 カザハナが気持ちよさげに引く馬車で現地へ向かう。


「ほう、長年冒険者をやっていたリリーも知らない鳥か、興味あるな」


『美味い鳥だと良いな』


 おじい様はともかく、ヴァイスは食べる気満々だな……エーデルオラケルに貰ったジェミニアキュラはみんなで話し合った結果、婚約者とその家族が揃ったときに出すということに決まったのでしばらくお預けなんだよね。但し、ヴァイスのおかげで貰えたのでヴァイスだけはステーキで食べている。かなり美味しいようなので僕も食べるのが楽しみだ。


 現場に到着し、みんなの考えた巣を見てみるとウィズラが巣にいることを確認できた。


『鳥さんがいました!』


「ほう、あれがウィズラの巣か。こんなにたくさんのウィズラを見るのは初めてだ」

 

 結局あれから他のメンバー考案の巣も徐々に増えて、僕の作ったツリーハウスを中心に全員の巣が作られ、現在ではその全てにウィズラが住み着いている。


 しばらく歩くと僕の作ったツリーハウスが見えてきた。


「あれが、エドワードが作った蔓の家か……確かにもう少し大きくすれば、余裕で人が住めそうだな」


 もともと人が住めるものをアレンジしたので、大きくすればもちろん可能である。近くに到着したので確認してみよう。


『鳥さん、見えないです……』


「さすがにここから見ても分からないね」

 

「エディ様。小屋の中に入っているので登らないと見えません」

 

 リリーの言うとおりか。蔓を使ってはしご車のバスケットを作りみんなで登る。


『凄く高いです!』


「エリーはしゃぐと危ないわよ!」


 ノワールはエリーを注意しつつも僕にしっかりしがみついている。意外と高い所が苦手なのか?


「あれがリリーの言っていた鳥か……」


『エディ様、凄く大きいのです!』


 見えたのは普通のウィズラより大きい、体長一五〇センチほどの白い鳥。姿はウィズラによく似ているが、頭に金色の王冠のようなものがついている。あれはトサカなんだろうか? カンムリウズラというのがいるが、あれは冠羽で形も冠というよりはアホ毛に近い。しかし、こっちの鳥は本当に冠が乗っているように見えるのだが、何で出来ているのだろうか。


「ほう、珍しい。あれはクイーンウィズラだな」


「クイーンウィズラというのですか?」


「うむ、周りにいるオスのウィズラが世話しているだろ? ウィズラはクイーンが現れたときだけ、群れで行動するようになるのだ」


 確かに周りのウィズラが世話しているように見える。


「おじい様、つまりクイーン以外は全てオスということでしょうか?」


「そうだな。さっき巣にいた普通のウィズラより少し小さいだろ? ウィズラはメスよりオスの方が小さいのだ」


「そうなんですね」


 一応ウィズラの仲間に入るクイーンウィズラをどうするのか悩むのだった。

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