第338話 変革(下)
トゥールスに酒場や娼館などが多い理由が判明し、これからやるべきことが分かったわけだ。
「父様。ヴァルハーレン家としては警備の強化を重点的にするということですね」
「それ以外にもあるよ。イーリス街道からトゥールスまでの街道をイーリス街道並みに整備して欲しいというのが王家からのお願い。これはうちの領の話なので強制ではないが、今回受ければ補助金を出してくれるので、今後のことも考えて受けてきてある」
「既に整備されていると思うのですが、まだ必要なのですか?」
「道幅を広げる作業が残っているね。高速馬車二台が交差できるくらいあるのが理想かな」
「それなら拡張は必要ですね」
現在のところ馬車一台は余裕だけど、二台では狭いぐらいだ。
「それとこれはエドワードの婚約にも絡んでくるのだけど。ヴァッセル公爵とバーンシュタイン公爵から直通街道の整備の打診が来ている」
「直通街道ですか?」
「現状両家がヴァルハーレン領に来ようとすると、イーリス街道に一旦出るしかなく遠回りになる。今後交流を増やしたり、イグルス帝国との本格的な戦争も視野にいれると整備した方が良いという話になったんだよ」
確かに現状はどちらも王都を経由しなければならないので遠回りとなる。
「ふむ、ハリーよ。街道を整備することについて、王家側はなんと?」
「イグルス帝国の暗躍で実害が出ている現状を考えると、仕方がないといった感じです」
「おじい様、直通街道ができると通行しやすくなって良いことしかないように思うのですが、王家として問題あるのでしょうか?」
「王都に金を落とす人間が減るだけだな」
「そういうことですか」
現状どこかに移動しようとすると王都を経由するルートが多い。王都を経由するなら素通りするということはあり得ないので、みんなお金を落とすということなんだろうな。
「それでは、ローダウェイクからトゥールスまでの街道を整備しつつ、バーンシュタイン公爵領とヴァッセル公爵領への街道を新たに作るということになるのですね?」
「そうだね。まずはトゥールスまでの街道を整備することにして、その後バーンシュタイン公爵領、次にヴァッセル公爵領までになるね。基本的にヴァルハーレン領外の土地は、その土地の貴族にやってもらわないといけないから、ヴァッセル公爵領に向けての街道整備はうちがすることは取りあえずないかな」
「ヴァルハーレン領についてはイーリス街道を使うからですね」
「その通りだよ。因みにバーンシュタイン公爵領に向けての街道は、ブラウがトゥールスを攻めるために作った道を拡張することになっているから、比較的整備も簡単に終わるはずだよ」
なるほど、ローダウェイクからトゥールスまでを先に整備するから、あとはトゥールスから旧ブラウ伯爵領までを整備すれば完了するわけだ。ベルティーユ侯爵が旧ブラウ伯爵領の新しい領主になるわけだけど。
「ベルティーユ侯爵は当主になったばかりな上に、新たな領地に移動となるわけですが大丈夫なんでしょうか?」
「エドワードは良いところに気がついたね。新たにベルティーユ侯爵となったディエゴは二十三歳なので私と歳が近いし、前ベルティーユ侯爵のガウル殿があんなことになったので引継ぎも上手くされていない。バーンシュタイン公爵が貴族派を辞めたのと同じくしてディエゴも貴族派を辞めているから、私とイグニスでサポートするつもりだよ」
二人がサポートするなら安心かな。
「それでハリーよ。バーンシュタイン公爵領の主都シャルールからはどうするのだ? シュタイン伯爵領とリュミエール侯爵領、どちらを通るかで対応が変わって来るだろう?」
「バーンシュタイン公爵としては、リュミエール侯爵領を通りたいと言っていましたね」
「ほう、リュミエール侯爵領をか? シュタイン伯爵領の方が話しやすかろうに」
「バーンシュタイン公爵のイグニス自体はシュタイン伯爵とそこまでの仲ではないようなのと、最短ルートにしたいためリュミエール侯爵領の方を通りたいようです。リュミエール侯爵との交渉が上手く運ばない場合は、こちらにお願いするかもと言ってましたね」
「なるほどな。それならば、儂からローラン・リュミエールに手紙を送っておくか」
「そうしてもらえると話がスムーズにいくと思うので助かりますね」
「警備以外はどれも街道の整備になるんですね」
「そうだね。エドワードには木を
「分かりました」
「新たに街道を作るなら儂とクロエに任せた方が早いぞ?」
「父様たちや私がすると、伐採した木がボロボロになってしまいます。今回は伐採した木を王家に売るつもりなので、エドワードに任せた方が安心でしょう」
僕に任せる理由が木を綺麗に伐採できるからっていうのはどうなんだろうか?
「新しい町の資材にするのだな。ならば儂たちは魔物を見て回るか」
「その方がいいですね。エドワードもそれで大丈夫かな?」
「問題ありません。木の伐採はすぐにやった方がいいですか?」
「時期についてはまた指示を出すよ。まだイグルス帝国へ侵攻していないから、木を切っても持っていく所もないからね」
「分かりました」
「以上が今回の会議で決まったことだ。それとエドワードの婚約も正式に決定したよ。陛下や宰相からも貰って欲しいと言われたけれど、交流を深めないと無理そうだと言っておいたからね」
「ありがとうございます……」
こうして王都での会議の説明が終わったのだが。
「トゥールスが騒がしくなりそうね……」
おばあ様の少し悲しそうな呟きは、僕にしか聞こえなかったようだ。
――――――――――
近況ノートに領地変更の詳細図をあげました。
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