第3話 糸

 祝福の儀も最後の一人となり、僕の順番が回ってきた。三柱の女神像の前に行って跪き、祈りを捧げる。


 ヒルフォードの三柱の女神、イーリス様、フノス様、ヒュスミネ様、僕は無事7歳になることができました。魔の森に捨てられていた僕を育て、いつも見守ってくれているシスター・マルグリットに恩返しをしたいのです。どうか、冒険者として役立つ能力、できれば戦闘系の能力を授かるようにお願いいたします。

 

 この世界ヒルフォードは虹の女神イーリス。宝や宝石を司る女神フノス。戦いの女神ヒュスミネの三柱によって造られたと言い伝えられている。


 僕の住むヴァーヘイレム王国では、三柱の女神全てが信仰の対象となっているが。

 戦争好きな国は、戦いの女神ヒュスミネの一柱だけを信仰したり、逆に戦争を嫌う国では、虹の女神イーリスと宝や宝石を司る女神フノスの二柱だけしか信仰しない国も一部あると聞いたことがある。しかし、ほとんどの国では三柱の女神を信仰しているとの話だ。


 ただ、三柱の女神でもイーリス様についてはここヴァーヘイレム王国では絶対的な人気を誇り、大きな主要の街道にはイーリス街道と名前がついてたりもする。



 しばらくの間、祈りを捧げていると、体が光に包まれ、暖かいものが体の中に流れ込んでくる感じがした。きっとこれが能力を授かる時にでる光なんだろう。冒険者向きの能力を授かっていたらいいのだけど……。


 しかし、光はもう収まったはずなのだが、思ったよりも長く沈黙が続く。いつもなら直ぐにメグ姉が授かった能力を読み上げるはずなのに、まだ読み上げない。なにかトラブルでもあったのだろうか? 不安が徐々に募っていく。


 あまりにも長く沈黙が続き、何か問題があったのかと周囲がざわめき始めたその時、ようやくメグ姉が話し出す。


「エディの……」


 よかった! 一瞬能力が無いのでは? とか嫌な考えが頭の中をよぎったが、読み上げられるようなので安心したのも束の間。


「エディの授かった能力は『糸』です。エディ、ステータスボードを確認するように」


 初めて聞く能力の名に、会場にどよめきが起きた。


 ってどんな能力だ? 聞いたことない能力だけど……あぁ糸のことか! と考えながら目を開けて立ち上がる。


 しかし、石板を確認しようと一歩踏み出した瞬間。


「がああああああっ!」


 突然、激しい頭痛に襲われてその場に倒れ込んでしまったのだ。


「エディ! 大丈夫⁉︎」


 心配したメグ姉が僕の傍に駆け寄ってきた。

 

 突然、頭の中に膨大な量のが流れ込んできて、頭痛の激しさがどんどん強くなってくる。


 頭が割れそうだ! 痛い! いたい! イタイ!


 頭を押さえうずくまり、痛みに耐えるが、あまりにもの激痛で何も考えられなくなった僕は、そのまま意識を失ってしまったのだった。

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