第2話 祝福の儀
僕の名前はエディ。孤児院育ちで7歳になった。髪の色は青みがかったアイスシルバーで、瞳の色はアイスブルーらしい。孤児院には鏡がないので、自分の容姿についてはよく分からないのだ。
この世界はヒルフォードといい、僕が住んでいるのはヴァーヘイレム王国という国だ。この世界では7歳になると全ての子供たちは、祝福の儀を受ける決まりとなっている。
祝福の儀とは、女神様からステータスと能力を授かる儀式で。授かった能力を活かした職業に就くのが一般的な流れだ。貴族などは7歳から10歳の間に、遺伝的な能力がさらに増える可能性もあると言われている。
僕が住んでいるのは、ヴァーヘイレム王国南方のモトリーク辺境伯領にあるコラビという小さな町の中の教会横の孤児院だ。
コラビの町もそうだが、ほとんどの教会では年に2回、祝福の儀を行う。良い能力を授かることができると、国や領主様が雇ってくれることもあるので、孤児院の子供たちは特に気合が入っているのだ。
僕とメアリー、アレン、トーマスの4人は、冒険者になってパーティーを組むことを約束しているので、できれば冒険者として役立つ剣術や魔術などの能力を授かりたいと思っている。
祝福は家格が上の人たちから受ける決まりとなっているので、僕たち孤児院組は一番最後だ。貴族になると、祝福を受けるためだけにわざわざ王都まで行くらしい。今回の1番手は、町長の息子で次男のユルゲンだ。ユルゲンは火の魔術の能力を授かったようで、凄く羨ましい。
祝福を受けて良い能力を授かって喜んだり、思った能力を授かることができず、残念そうな表情で帰って行く人たちを眺めていると、ついに僕たち孤児院組の順番が近づいてきた。
「じゃあ、俺が1番に行ってくるぜ!」
アレンが孤児院組で真っ先に祝福を受けに行く。アレンは茶色の髪に茶色の瞳、肌は小麦色に日焼けしている。
アレンの様な茶色の髪に茶色の瞳は、この世界の一般人としては標準的な容姿だ。貴族など強い魔力を持った人間は、魔力の性質によって髪色や瞳の色が変化すると言われている。そのため、髪の色が変わっていると言われている僕も、何かの魔術を授かるのではないかとかなり期待している。
教会の神父様は一昨年亡くなっているのだが、辺境の小さな町ということで次の神父様がなかなか決まらないらしく、今はシスター・マルグリットが代行して祝福の儀を執り行っているのだ。
アレンが三柱の女神像前で跪いて祈りを捧げると、アレンとシスターの前にある石板が一瞬だけ光る。
「アレンは剣術の能力を授かりました」
シスター・マルグリットが石板を見てアレンに授かった能力を告げた。
「アレン。ステータスボードを確認しなさい」
シスターが石板を見るように促すと、アレンは嬉しそうに立ち上がって石板を覗く。
石板の内容はシスターと本人しか見られない決まりとなっている。能力はシスターによって読み上げられるが、他に何が書いてあるのか中身は分からない。しかし、アレンのニヤニヤした顔を見ると、きっと良いことが書いてあったのだろう。
「やったぜ。お前たちも続けよ!」
アレンが僕たちの方を見てVサインをするので、僕たちもそれに手を挙げて答えた。
その後、少し体の大きいトーマスが盾術。メアリーが水の魔術の能力を授かった。水の魔術には回復魔術もあるので冒険者になったら人気がでるだろう。
魔術の能力自体、平民が授かることは非常に稀で、たとえ授かったとしても強くなるのが難しい能力なのである。
呪文が書かれている魔術書自体、非常に高価で手に入りにくい。平民の識字率も低いため、購入できても結局魔術を使えないことが多く、挫折する人も多いという話だ。
僕たちがパーティーを組んだ時には、メアリーの魔術書をどれだけ早く手に入れられるかが一番最初の課題となるだろう。
「あとはエディだけだな」
「エディは早く行かないの?」
アレンとメアリーが僕に話しかけた。
「祝福の儀が終わった後、片付けを手伝って欲しいから一番最後に来るようにって、メグ姉に言われてるんだよ」
「シスター・マルグリットに頼まれてるんじゃしょうがないね」
孤児院の中で一番付き合いの長い僕だけ、シスター・マルグリットをメグの愛称で呼ぶことを許されているというか強要されているのだ。
そして、孤児院組の祝福も終わり、ついに僕の順番が回ってきた。
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