三百二十一話:

 微睡みから目覚める。

 朝日の差し込んだ部屋は優しい光に包まれている。

 僅かに開いた窓から緑の香りが入ってきていた。


「ん……」


 目は覚めたが、動けない。


「すぅ……ん……」


 小さな寝息を立てて左の腕枕で爆乳エルフさんが寝ている。

 幸せそうな寝顔を見ていると起こせない。


「シンクくん……」


 右の腕枕で眠る木実ちゃんから寝言が聞こえた。

 こちらも幸せそうな寝顔で起こせそうにない。

 マショマロおっぱいが俺の体にもたれかかっている。


「ふむ……」


 凄い合体技である。

 ダブルおっぱい拘束から抜け出すのは至難の業だ。

 日本で重婚が認められたら、遅刻するお父さんが増えるに違いない。

 いや、こんな爆乳二人をお嫁さんにできる人はそうそういないか。

 

(何時ぐらいだろ……?)


 昨日は三人でお楽しみだったのだが、遅くまで励んでしまった。

 すでに曜日感覚はないけど、たぶん月曜日だ。

 日曜日は複数人ですることが多いので。



「ありがとう、シンク君」


 なんとか二人のおっぱい拘束から抜け出し、モーニングセットを作る。

 玉木さんにはブラックコーヒーとパン、それに野菜サラダだ。

 トレーに乗せて運んできたのだが、何か一つ足りない。

 そうか、ヨーグルトが足りないのだ。


「ありがとうございます、シンクくん」


 木実ちゃんにはパンケーキを作った。

 飲み物はスムージーである。

 こちらもやはりヨーグルトがあってもいいと思う。


 ヨーグルト、つまりは牛乳に乳酸菌を加えて発酵させればできる。

 下手にやると食中毒が怖いが、ガチャで出た壺に入れておけばたぶんいけると思う。 


「お礼をしなきゃね」


「いっぱい、ご奉仕しますね♡」


 木実ちゃんが玉木さんに毒されている。

 どうやら夜の教育係の人選を間違えたらしいよ。

 朝からまたベッドに逆戻りだ。

 

「ふぁぁ♡ シンクくんっ♡」


 ダブル爆乳おっぱいの誘惑から抜け出すのは至難の業である。




◇◆◇




 なんてことだ。


「俺のゴーレム兵が……」


 『獄炎のケルベロス支配地域』。

 その奥地にて外敵の侵攻を防ぐように配置された炎のゴーレムに、俺のゴーレム兵を突撃させてみたのだが、木っ端みじんに吹き飛ばされた。


「うーむ」


 振り下ろされる岩の拳。

 赤く発光しオレンジ色のラインが炎のように走っている。

 着弾した瞬間に爆発が起こり、俺のゴーレム兵は木っ端みじんに吹き飛ばされた。


 高さで言えば5メートルほどの、坂本龍馬像程度の炎のゴーレムだが、厚みが凄くある。

 中央の脈打つ紅蓮石も威圧感を与えてくる。

 探索支援ガチャで出た巨大ゴーレムのほうがデカかったが、確実にこちらの方が強そうである。


 太い足が踏み込まれるたび地響きが起こり、炎の拳が振り下ろされるたび熱波が俺の元まで飛んでくる。

 

「おお」


 遠距離から投石攻撃をさせていたゴーレム兵が火炎放射で焼き払われた。

 地面が灼熱色に染まり、焼け焦げた臭いが立ち込めている。

 フルフェイスマスクでなかったら喉をやらていたかもな。

 面制圧力はあるようだが、中距離タイプの攻撃のようだ。

 炎の魔人のような遠距離攻撃はなさそうか?

 今の攻撃が見れただけでもゴーレム兵をけし掛けたかいがある。



 しかしどうやらこいつ一体ではないようだ。


 ここ以外にもアンデットとオークたちの侵攻を防いでいる二体がいる。

 無数の野犬、双頭の野犬、腕太の野犬と従えて外敵の侵攻を防いでいる。

 だがしかし、反撃をしてくる気配がなくなった。

 ロスを減らして防戦一方って感じだ。


 いよいよ『獄炎のケルベロス』君もジリ貧なのではないだろうか?

 

「ククク」


 どの勢力が一番最初にワンちゃん狩りをするのか、RTAと行こうじゃないか。 




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