三百十八話:首都大阪 ①
「騒々しい――――静まりなさい」
ロリ巨乳エルフさんの覇気の籠った一声で、騒がしかった大阪人たちは時を止めたように静まった。
さすが玉木さん、圧倒的女王様力。
「か、かんにんな……!? おっちゃんたち、ちょっち舞い上がっててん」
「飴ちゃん舐めるかぁ?」
シュンとしつつもめげない彼らは果敢に声を掛けてくる。
まぁ以前のようなケンカ腰ではないので本気で怒っているわけではないだろう。
「すまんなー。 このおっちゃんたち喋ってないと死んでまうねん。 蝉と一緒やね」
「誰がセミじゃこら!」
「それはわしらがミンミンミンミン五月蠅いって言いたいんかーー!?」
本当に蝉みたいだな。
『首都大阪』内部は予想通りというかイメージ通りに乱雑としていた。
これぞ大阪といったような、カラフルなんだよね。
個性が強い。
東京の下町とは違う下町、新世界である。
「大阪ってお店が多いわよね」
「商人の町やからな!」
出店がたくさんある。
電気もガスもないのにどうやってるのだろう?
「そりゃ、企業秘密やで? お兄さん」
にひひ、とオレンジファッションの女性、アキコさんが笑う。
「へー、【猫の手】のコインを使うのね」
「せやで!」
そういえばそんなのあったな。
現金代わりに使われている。
ちなみに神秘商人の会員証は使えるだろうか?
これでクレジット管理されているんだけど。
「なんやそれ?」
月と黒猫の描かれた会員証を胡散臭そうに見られた。
会員番号NO.1のレア物なんだぞ。
「もちろん魔石でもええで!」
満面の笑みで換金してくれるアキコさん。
うん、マージン取ってるんだろうな。
まぁ猫の手のお店がどこにあるかわからないし、そういう商売もありか?
「シンクお兄ちゃん、たこ焼き買い占める?」
「うむ」
帰って皆にも食べさせたいしね。
俺はロリ巨乳玉木さんと手を繋いで出店を回る。
ちなみに格好は『ブラックホーンナイト』の私服型の軍服である。
ロリっ子パンダメイド服と漆黒の軍服二人組。
よそ者という点を除いてもやはり目立つ。 ヒソヒソと噂されるのは仕方がないか。
「ロリコンや」「ロリメイド狂いや」「ペドナイトや」
なんだかあまり良い囁き声ではない気がしたので睨んでおく。
野次馬は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
たこ焼き以外にも海産物が多い。
海が近いからかな。
「シラス丼!」
玉木さんはママノエも好きだし海産物がお好きなのだろう。
シラスがたっぷりと乗ったシラス丼は大変美味しそうである。
「採れたての生しらすやで!」
「いいわね!」
マダコやエビ、カニ、貝など沢山ある。
「大阪湾は流れが緩やかやからな~。 今の時期ならスズキもおすすめやで!」
「スズキ!」
今日は久しぶりにお刺身かな?
お魚料理は結構食べていたけど、パタラシュカは葉っぱに包んだ蒸し焼きの魚料理だから、お刺身の魅力とはまた違う。
沖縄のお魚は煮たり焼いたりが美味しいので、あまりお刺身にはしなかった。
「他にもな~、クロダイやキチヌなんかもあるで~~?」
「わぁ」
ダメだ。
完全に玉木さんがナニワの商人にロックオンされている。
あれよあれよと、お土産が追加されていく。
「っと、こんなにナマモン渡してもな。 アテも買ってくか?」
酒のつまみですか?
それは全部頂きたいですが。
「お兄さんもいける口みたいやねー!」
俺の表情の変化を読み取ったアキコさんの瞳が妖しく光り、色々とおすすめを紹介し始めた。
「買いすぎちゃったかしら?」
出店辺りを抜ける頃には両手で持ちきれないほどお土産が増えている。
とりあえずブラックホーンシャドウの荷台に収納。
ブラックホーンシャドウを具現化しなければ鮮度も落ちないので問題ない。
使った魔石もたいしたことはない。 みんなホクホク顔だったので多少ぼったくられているかもしれないが、気にすることは無いだろう。
東雲東高校の近くでは難しい新鮮な魚介類を手に入れられたのだから。
お礼にガチャを設置してあげようかな?
「あー、そっちはまだダメなんや」
観光を続けようと思ったが、やたらと白い布が掲げられている場所に行こうとしたら待ったがかかった。
「恥ずかしい話しやけど、そっちは治安悪いねん」
「あら」
「あのボンクラどもこんな時なんにごんたいいよってな……! あー、つまらん内輪揉めや、気にせんといてや!」
治安か。
東雲東高校では服部領主が頑張っているから問題ないが、どこの場所も大変そうである。
あくまでドライブデートに来ただけなので、まったく関わるつもりはないけどな。
「アキコさん! た、大変ですっキョウさんが!!」
「っ、キョウがどないしたんやッ!?」
……まったく関わるつもりはないですよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます