三百五話:ゴーレム
荒れてるなあ。
「はぁあああッ!」
ポニーテールが乱舞しゴーレム兵が舞う。
闘気の迸る鋭い一撃は重いはずの相手を軽々と吹き飛ばす。
いつもの華麗な剣捌きが今日は荒々しい。
「九条先輩っ、そろそろ休憩に……」
ラッキーボーイ君の声掛けも無視して一心不乱に剣をゴーレム兵に叩きつけている。
俺の試作ゴーレム兵君がボロボロになっていく。
いやまぁ魔石があれば【ゴーレム魔法】で直せるからいいけども。
(服部領主となにかあったのだろうか?)
東雲東高校で会った時、服部領主は顔色が悪そうだった。
体調でも悪いのかと思い声を掛けたが『大丈夫だよ~……』と仕事に励んでいた。
痴話喧嘩かな?
何があったのか気になる所ではあるが、放っておこう。
面倒ごとに巻き込まれると厄介だ。
「ふぅぅ……!」
無残に散りはてたゴーレム兵を一瞥し、九条先輩はシャワールームへと向かう。
ゴーレム兵がいなかったら俺がストレス発散の訓練相手を務めなければならなかった。
このゴーレム兵はしっかりと修復してあげよう。
『獄炎のケルベロス支配地域』の逆侵攻拠点、通称『ゴーレム砦』は順調に改装が進んでいる。
主には遠征で疲労した皆の休憩所として。
他にもゴーレム兵との鍛錬も行うこともできるし、たくさんのガチャを設置してあるので士気の高揚にもなるだろう。
現状は冷水のシャワーしかないので(自作DIY)、ハウジングガチャをまた少し回そうかな?
期間限定の探索支援ガチャからも出るだろうか?
夏だからしばらくは冷水シャワーだけでもいいが、いちいち木実ちゃんに水を溜めてもらうのも悪い。
「ふむ」
『期間限定:探索支援ガチャ』を回してみる。
ちょっとゴーレム砦から離れて。
宝箱モチーフの筐体を盗賊猫さんが開けていく。
「白」
よかった。
普通に白。 いや良くないけど、前回みたいな異常は起きなかった。
「グローブか」
白から下着以外が出るなんて感無量である。
いや普通に出るけどさ。
ポーションとか石鹸とかいろいろね。
普通にグローブが出ると、おっ、て思ってしまう。
「ふーん」
白からはテントや寝袋、ミリタリー服なんかも出てくる。
うん、普通すぎて眠くなってきた。
えっちな下着を引いた時の背徳感と高揚感がない。
まさか……下着類はハズレとしては優秀だったのでは?
「お!」
あまり期待せずに淡々と回していると赤い輝きが宝箱を照らす。
SRだ。
「おお?」
辺りに羽根が舞い散り目の前に具現化されたアイテム。
魂魄の紐づけはされていない。
メタリックブラックのヘッドホン、ブルーのラインとアクセントがついている。
急にSFチックなアイテムが出て困惑する。
「猫耳ヘッドホン?」
ブラックホーンバニーと少し配色が似ているかな。
ヘッドホンが二つ。
ガチャマスターのおかげか、手に取ってみるとなんとなく使い方を理解できる。
これは無線機のようだ。
「微妙」
ヘッドホン同士で通話ができるらしい。
けど一セットしかない。
【念話魔法】もあるし微妙では? いやまぁ取れない人も多いけど……。
一セットしかないから奥様たちにも渡しずらい。
あ、そもそも俺、まともに会話できないんだった。
「死蔵」
さて気を取り直してガチャろう。
周囲の警戒も怠っていないが、ゴーレム兵たちを歩哨に出している。
【ゴーレム魔法】が有能すぎる、というかやっぱ魔法だよな。
スキルガチャを引こうかなと思ったけど、
玉木さんのロリ化の件もあるし、千魂魄もするし、ちょっと食指は動かない。
「白」
ゴーレムの燃費は良い。
壊れさえしなければメンテフリーだ。
光合成ではないが、待機状態で周囲の魔素からエネルギーを勝手に補充している。
強さという点ではイマイチだが、これについては考えもある。
一つはゴーレム魔法の熟練度を上げること。
比例して強くなりそうな気もする。
ガチャアイテムを装備させるのもいいが、元が強くないと微妙だろう。
他には、ゴーレム作成の際に別の素材を混ぜてみるというのも面白そうだ。
【猫の手】に売るぐらいしか使い道のなかったドロップ素材だが、ゴーレムの補修にも使えるようだし、ひょっとすると作る時にもなにか効果があるかもしれない。
「青……お?」
Rランク。
これは……?
「料理人セット?」
大きなフライパンは武器にも盾にも使えそうだ。それに料理人風の防具セット。ベルト部分にはたくさんの器具を収納できそうだし、大きな背負いバッグもついている。
装備したいか?と言われたら拒否するが、誰か使いたい人はいるだろうか?
うちの奥様達には似合わないな。
具現化しているようだし、ゴーレム砦で販売しておこうかな。
誰かにあげてもいいのだけど、一つしかないしね。
「ふむ」
さらにガチャを回していく。
『期間限定:探索支援ガチャ』は当たりが渋いか?
一発目はそういう設定だったのだろう。
今までの引いた傾向を考える。
10回目とか100回目とか、割とキリの良い時にレア確率が上がっているかもしれない。
ガチャマスターのガチャメニューを見たから解るが色々と設定がありそうな気がする。
まぁとにかく数を回すしかないんだけどね!
ガチャ沼だ。
おこずかい制だったらこんなに
「……」
貯金したほうがいいだろうか?
いや、『ガチャは回せる時に回しておけ』と誰か偉い人が言っていた気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます