三百三話:

 まずは偵察である。


「地下に空間があります、シンクさん」


 藤崎駐屯地は市街地から少し離れ森に囲まれている。 

 上空から怪しい場所がないか確認してみる。


「すいません、私の目でも見通すことができないようです」


 栞の千里眼は建物の内部を見通すこともできる。

 距離が遠かったり何重にも壁があると、輪郭しかわからないということだが。

 しかし、駐屯地の地下空間は見通すことすらできないらしい。


「黒い渦のようですね」


「ふむ」


 しかし地下か。

 なんだか東雲市役所の時を思い出すな。

 あの時も地下に通常では存在しない道が出来ていたらしい。

 水道課の人が言っていたので間違いない。


「『ロックオン』……ざっと3千人ほどいます。 多いですね」


 いや、少ない。


「……」


 改めて数で言われると凄い少ないじゃないか。

 藤崎市の多くの人たちが避難してきていたはず。

 最初に来た時は5千人は軽く超えていたと思う。

 半数近くに減っているのか……。


「どうしましょう、シンクさん」


「うーむ」


 しかし、助けるとはいっても一体どうすればいいのだ?

 実際に駐屯地に行ったときに避難民の人たちから懇願された訳でもない。 

 時間が経って自衛隊員たちの立場が強くなっただけとも言える。 多少の時代錯誤の体罰があったとしても、現状ではしかたがないのではとも思える。 あの巨大な檻とか。


 それに赤黒いスライムたちも駐屯地を守っているのだから、悪とは決めつけられないのだ。


「問題があるとすれば、精神操作の疑いでしょうか?」


 状態異常回復ポーションか木実ちゃん聖水をぶっかけて回ろうか?


「「うーん……」」


 とりあえずは相手の出方を待つしかないか。

 ガチャの取引はまた来週か。

 その時に【アルゴスの瞳サウザンドストーキングアイズ】で視界を確保しようかな。

 

「あっ」


 今日のところは引き上げよう。


「んっ……!」


 今日は栞の日なのだ。

 栞はお嬢様学校に帰ってから忙しそうなので週一日しかまったりできない。

 貴重な休みなのでしっかりと体を癒してもらわないといけないのだ。


 メタルマジックハンド三本使ってマッサージをしてあげよう。




◇◆◇




 荒行から帰ってきたジェイソンと、山木が拳を交えながら会話をしている。


「それは重畳」


「鬼頭君がいれば百人力ですッ!」


「ふむ」


 打撃、投げ、関節と目まぐるしく攻守を入れ替えていく。


「戦力面ではな……しかし、今回はそう単純でもあるまい」


 強力な魔物を倒すだけなら、たしかに神駆がいれば百人力である。

 しかしことは単純ではない。

 監禁や体罰など行き過ぎたことはあるが、状況次第では仕方のないことなのかもしれない。

 寺田たちが入る頃では協力的な人たちにはそういったことはなかったというし、神駆が訪れた時もみかけなかったそうだ。


「しかし……手遅れになっては」


 異変が起きている証拠はない。 元自衛隊員たちがそう感じたとしか言えないのだ。

 

 ならば原因を突き止める為には内部に入り込むしかないだろう。

 危険を承知で京極の提案に乗って。


「ならうちらが行ってやるよ」


 ジェイソンと山木の組み手を見守っていたギャルたちが提案する。

 その表情はどこか高揚しているようだった。


「ダメだ。 危険すぎる」


「でもヤマチンたちじゃ怪しまれるだろ? うちたちしかいないじゃん」


「それでも……ダメだ!」


 男の鍛え上げられた太い両腕がギャルたちを包み込む。


「お前たちを危険な目には遭わせない」


 組み手中だった漢の色香にギャルたちは包まれる。

 その安心感に魂が震える。


「……わかったよぉ」

 

 潤んだ瞳の少女たちを漢はまとめて癒すのだった。




「バカやろう……」


 数日後、数名のギャルたちが姿を消していた。

 目的は一つだけだろう。

 

「そう怒るな」


「……ジェイソンさん。…………アンタがけしかけたのか?」


 忍者は企む。


「いや、彼女たちの意思だ」




――――――――――――――――


忙しい……( ;∀;)

仕事が忙しいのに爺さん入院からの施設探し

|ω·`)体を二つクレ


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