二百七十七話:
「ぐはぁ!」「ぷげらっ!?」
まずは一発かます。
上下関係を叩きこむのだ。
肉体的にも精神的にも。
「ゆくしやん!ゆくしやん!(嘘だ!嘘だ!)」
俺の手加減も上手くなったものだ。
自分の力のコントロールも、精神的にも成長したのだろう。
「沖縄の人って、もっとおおらかだと思ってました」
「おおらかですが、ケンカも好きですね……特にエイサーの方は」
沖縄の人ってどこかのんびりしていて、独特な時間の流れで生きているみたいに言われてたね。 ウチナータイムとか聞いたことある。
エイサーってなんだっけ?
「ぐぅう……!」
「皆さん分かりましたね? このお方こそ『シネリキヨ様』です。 跪きなさい!」
み、瑞那さん?
お淑やかな美人さんの豹変に戸惑う。
「ノロよ、そうは言ってもな……そう簡単には信じられん。確かに
「『アマミキヨ様』もいらっしゃると言ってもか?」
「なに……?」
その言葉に、皆の注目が俺の花嫁様たちに注がれる。
そして花嫁たちの視線は木実ちゃんに移る。
「えっ?」
押し付けられた木実ちゃんが小さく呻く。
「アマミキヨ様、おろかな者たちに、どうか神の奇跡を……」
そんなことを言われても……と、木実ちゃんは困った顔をしつつ前を向いた。
「あ……」
傷ついている。
俺がぶっ飛ばした人ではなく、多くの負傷者が地面に壁にもたれ掛かり満足な治療を受けられずに苦しんでいた。
安定した東雲東高校ではあまり見かけない。 けど初期の、襲われた当時を思い出すような光景だ。
「傷を癒します。『聖女の祝福』、神聖魔法……」
木実ちゃんの体が淡い青い光に包まれる。
いや自ら発光しているように輝く。
彼女の銀糸のような青銀の髪はキラキラと輝く。
目の前の人たちの息を呑むほどの驚きが伝わってくる。
「『ホーリーシャワー』ッ!」
青銀の輝きが降り注ぐ。
祝福の雨は傷ついた者たちを癒す甘露。
神聖魔法を発動した影響か、木実ちゃんは聖銀の輝きを纏う。
神々しい。
「アマミク様……」
瑞那さんとは違う部族衣装のような人たちが号泣している。
ドン引きなくらい。
「ありがとうございます、アマミキヨ様。本土の御嶽信仰者も納得したようです。 跪きなさい!」
やだ、宗教怖い。
部族衣装の人たちが一斉にガバッと跪く。
「あ、あのっ、みなさん立ち上がってください。 あ、あのっ!?」
あわあわする木実ちゃん可愛い。
東雲東高校のおじいちゃんたちと違って、なんだか狂気を感じるよね。
木実ちゃんの癒しのシャワーで傷の癒えた人たちもわらわらと集まりお礼を言い出した。 こっちの人たちはまともで、跪いたほうがいいの?と少し苦笑していた。
皆が皆、狂信者というわけではないようで安心する。
「なるほど、これが信仰心ですか……」
ぽつりと栞が呟く。
うん、ちょっと違う気もする。 コレを参考にするのは難しいと思います。
「よっしゃー! 強力な援軍にぃいいっ、カリーさびら!」
「「「カリー!」」」
泡盛キター!
僕たち未成年ですけどっ!
神云々は置いておいて、強力な援軍として歓迎された。
大宴会である。
「わぁ」
三味線の音が響き、踊り手たちが男も女も軽快に踊る。
大太鼓を叩きながら踊る人の笑顔に思わず笑みを返した。
「エイサーが見れるなんて、感激ねぇ~♪」
「面白いですね!」
たしかに面白い。
独特のリズム。
手踊りに力強い足の踏み込み、まるで武舞を見ているようだ。
「な、なんだこの、マンゴーは!?」
「とろける美味っ!!」
「これは……神だっ! マンゴー神だっ!!」
誰がマンゴー神か。ノリの良いお兄さんたちである。
秘蔵の沖縄泡盛をふるまって貰ったので、お返しにネペンデス君の実をご馳走する。
ネペンデス君の勢力拡大に伴いかなりの在庫があるのだ。
ガチャの景品にできたらよかったのだけど、残念ながらそういったことはできない仕様。 いらない景品の処理方法も考えないとスペースが厳しくなるかも。
「シークァーサー美味しい!」
「パイナップル……美味!」
やっぱり南国だけあって果物が多いね。
「こんなに……ご馳走になっていいんでしょうか?」
ソーキそばや羊料理?謎の臭みスープなども御馳走してもらう。
傷を癒したお礼と今後の援軍としての活躍を考えれば気にするものでもないと思うけど、そういったこと関係なく歓迎してくれている気がする。
どこも食料事情は厳しいと思うのだけど、大丈夫か?
「「「なんくるないさ~♪」」」
なんとも明るい人達だろうか。
「お姉さん、コレは……!?」
「ママノエの踊り焼きよ。 試して、みる?」
「はいッ、喜んでぇえええええ!」
玉木さんの機嫌も直り、ママノエ布教活動に精を出している。
半生のママノエ踊り食い。 女王の笑顔で群れてくる男どもの喉に放り込んでいく。 マゾが多いのか、度胸試しなのか、大人気である。
というか、まだ怒ってます?
ママノエはカリッと焼いたわさび醤油が一番おいしいのに。
「シネリキヨ様」
「ん」
少し酔ったので夜風にあたりにきた。
賑やかなのもいいんだけど、ちょっと疲れる。
この拠点は小高い位置にある場所のようで沖縄の町が一望できた。
高い建物が少ないようで、海まで一直線に見渡せる。
広いなぁ、と思っていると瑞那さんが声を掛けてきた。
「ご助力感謝いたします。どうか我が身を喰らい、その雄々しい焔でこの地をお守りくださいませ」
「?」
「シネリキヨ様……ヒヌカン様……」
あ、あの、瑞那さん?
しなだれかかる、とろんとした瞳の瑞那さん。
美人で可愛く不思議な魅力のある女性が、その独特な衣装を脱いでいく。
「その炎で、抱いてくださいませ……」
これじゃ、アオカ――――
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