閑話:モブ顔男子高校生3人組はハーレムの夢を見ない
夢を諦めていた。
「おおおおおおおおっ!?」
現実を見ろ。
わけのわからない怪物は現れ世界は壊れた。
毎日を必死に生きている。
かつて見た青春はひび割れ崩れ落ちた。
最後の希望もまた、遠くへと旅立ってしまった。
決して、俺の手に入ることのない遥か遠くへ。
「すげぇ!」「嘘だろぉおおおおお!?」
だが今、銀の輝きは俺を包み込む。
祝福の鐘は鳴り響き、宙を白い羽根は舞い踊る。
周囲の熱狂が心臓の鼓動を跳ね上げさせ、神々しい輝きを放つソレをつかみ取ると、力が湧き上がった。
SSR『キュリアスクレイモア』。
「……美しい」
その大剣のあまりの美しさに見惚れた。
ガード部分が長くまるで『十字架』。
剣身に施された銀の意匠は美しくそして静謐さを兼ねている。
神聖。
その言葉しか思いつかない。
涙が溢れてくる。
諦めていた夢を追いかける、その決意が胸に炎を宿す。
「っう! 覇王様ッ! ありがとうございますッ! 俺も、あなたを目指して、やり直しますッッ!!」
俺は感謝の言葉を述べていた。
俺たちから女神を奪った憎き相手であり、俺たちを救ってくれた英雄に対して。
「よかったなぁ」
「おめでとう」
「ああ! 俺はこれからやり直すぞ!」
悪友の二人が満面の笑みを向けてくる。
「ああ、
「そうだぜ、
とある事件で、あらぬ疑いを受けた俺たち3人は一時皆から白い目で見られた。 明確な被害者もおり、未だ一部では囁かれている。
一度被ってしまった汚名は消えない。
薄れることはあっても消えはしないのだ。
それが決して、冤罪であっても。
いや、たしかに見たは見たけど。 助ける為に介抱はしたけども?
むしろ怪しい植物から助け出したのだから、感謝されてなにかあってもいいと思うんだ。
でも被害者がいたからね……。
「ああ。 当然だろ? 俺たち、親友じゃないか!」
俺たちは不貞腐れていた。
女子の仕事を手伝うふりをして下着をチラ見したり、女子のシャワータイム中に近くをうろうろしてラッキースケベがないか見回りした。 夏の熱気に開放的になるマダムたちに妄想したりと、悶々とした日々を過ごしていた。
しかし以前よりも人の目を気にしてしまう。
俺たちはもっと自由だったはずだ。
もっと自由に。
「俺たちもハーレムを作るぞ!」
「ああ!」「そうだよ、俺たちでな!」
夢を追いかけようぜッ!
「「「目指せハーレムッ!! ――――うおおおおおおおお!!」」」
俺たちは気づかない。
「男子って……」
「あいつ鼻でかくね? モブ顔だけど……お持ち帰りすっか?」
「あの剣の子、強いのかなぁ? 試し斬りしてもいい? いいよね?」
自由には代償があることに……。
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