二百六十二話:ガチャの奇跡は存在する
阿鼻叫喚。
「おお!? ハズレ? これっハズレなの!?」
白いカプセルからポーションを手にした男が騒ぐ。
【ガチャ運営】スキルから設置したガチャ筐体。
ガチャの中身をC~SSRまで選ぶことが可能。
確率は大きく操作できないのが残念だ。
当(とう)ガチャではクリーンをモットーに運営していきます。
不正対策なんだろうか。
変な話しSSRを簡単に当たるようにできるなら、木実ちゃん達にいっぱい引いてもらう方法もあるのだが。
「ふむ」
しかし確率エグいな。
SSRなんて0.002%だぞ。 SRですら0.1%だ。
そう考えると俺って豪運なんでは?
まぁ今できるのはノーマルガチャだけなんだよね。
リミテッドガチャ相当の物が設置できるようになればもっと確率はよくなるかも。
「うお! 緑キター! 当たりだろおおおおお!?」
娯楽に飢えているからか、それともSSRの当たりを見えるようになっているからか、なかなかの熱狂具合である。
ちなみにSSRはカッコイイ大剣だ。 漆黒の刀身にシルバーアクセサリーのような意匠が刻まれた厨二心をくすぐる逸品。 『キュリアスクレイモア』。
今回はサプライズプレゼントなので全ガチャ費用は俺もちだ。
2000人くらいとして2000回分か。
魔石と素材で回せるので問題ないな。 この間、大量にワンちゃん狩ったから。 素材はざっくざくに集まっている。
残念なのは俺はこのガチャを回せないということくらい。
あくまで運営できるだけだ。
「青だっ!」
なるべく当たって欲しいので白は最低率で他は最高率に設定している。
2千人近くいるのだから、誰か一人くらいSRを引かないだろうか?
まぁSSRは無理だろう。
「うおおっ!? 眩しいぜぇーーーーー!?」
皆が楽しそうにガチャを引くの見ていた。
自分で引くのもいいが、見ているだけでも楽しいものだ。
特にハズレを引いた時の落胆が大きい程面白い。 実況動画がはやるわけだ。
ぜひ今度は自分の金で引いて欲しいね~。
なんて、思っていたら、会場を埋め尽くす銀の輝きが発生する。
ファンファーレと共に羽は舞い散り祝福の鐘を鳴らしている。
ちょっと演出が過剰するぎる。
演出エフェクトの調整が必要だ。
というか、銀! つまりSSRの大当たりだ!
わずか0.002%の確率を引き当てた強者がいるらしい。
「……」
誰だ……!?
俺の人物ファイルには名前の載っていないモブ顔の男子だ。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
具現化したSSR『キュリアスクレイモア』を両手で持ち上げ歓喜の咆哮を上げている。
みんなも羨望の視線を向けて拍手喝采だ。
「っう! 覇王様ッ! ありがとうございますッ! 俺も、あなたを目指して、やり直しますッッ!!」
「う、うむ?」
誰が、覇王か?
恐らく東雲東高校生っぽい。 なんとなく見覚えもある気がする。
良かったな、と仲間の二人から肩を叩かれていた。
(ふむ……)
これは……。
偶然だろうが、こんなに簡単にSSRを引かれると大赤字だ。
ガチャ景品でSSRを用意するのに膨大な魂魄か魔石または素材を使う。
最初はSRくらいを最高景品にするのがいいかもしれない。
SRでも十分強力だもの。
よく考えれば、手に入れた人物が俺に友好的という保証はないのだから。
この場で試せて良かった。
決して0.002%は不可能な数字ではないのだ。
ガチャの奇跡は存在する。
そのことを思い出せただけでも十分におつりがくるな。
みんな喜んでくれているし良かった。
「えー! では皆様、本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございました! 時間も来ておりますので結婚式をお開きとさせていただきます! みんな本当にっ、結婚おめでとーー!」
「「「「おめでとーー!」」」」
本当は新郎新婦を見送られるのだけど、会場の都合で俺たちがお見送りだ。
皆は学校の友達や親しくなった人たちと喜びを分かちあっている。
俺のところにもリョウやジェイソン、それに何人か来てくれた。
うん!
やっぱりもうボッチは卒業だな。
これだけいれば十分に社交性があると言えるのではないだろうか?
陽キャと言っても過言ではない。
式が終わった後もなんだかんだと忙しく過ごし、『監禁王の洋館』にてゆっくりと花嫁たちと時間を過ごせたのはもうだいぶ遅い時間であった。
そう、ついに花嫁たちとの初夜を過ごすのである。
「シンク、くん……」
想像したことがないと言えば嘘になる。
だって高校一年生の男子だもの。
しかしこれは、ハードルが高いぞ。
童貞が新婚初夜に5Pとはな!
ちなみに栞は急だったので今日は帰えりました。
また後日可愛がりたいと思いますまる。
「あ、私は見学するからね」「私、も」
見学!?
ちょっと恥ずかしいのですけど?
二人はいいのだろうか……。
「ふふふ、シンク君の初めては、木実ちゃんに譲ってあげるわ」
なにやら四人での話し合いはついていたようだ。
妖艶な笑みで玉木さんが耳元で囁く。
「でも私を一番激しく抱いてね♡」
「んっ」
これはとんでもない初体験になりそうだ。
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