二百五十六話:金

 視界を埋め尽くす銀色の輝き。


「――――ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 SSR確定演出に俺の脳が覚醒する。

 思わず歓喜の咆哮をあげてしまった。

 ドアの外で誰かが走っていく音が聞こえた気がする。

 驚かせてしまったか。


「ふお?」


 カードだ。

 ハウジングガチャで引いたのと同じような物。

 絵柄は大きなウエディングケーキである。


「SSR?」


 凄そうなケーキではあるが……SSRがケーキってちょっとね。


「あれ?」

 

 カードをしげしげと見ていると絵柄が変わった。

 いや、動いた?

 グーグ〇アースを見ているようだ。

 自分視点で中を移動できる。

 

「結婚式場」


 広々とした豪華絢爛な結婚式場。 ホームビデオとかで見るような結婚式場の風景。 めちゃくちゃ豪華だけど。 

 カードってことは設置型だよな?

 かなり広そうなんだが……。

 目立つことこのうえないが、盛大にやりたいようだったからまぁいいか。


「ん……」


 なんとなくであるが、カードにドレスを近づける。

 そうするとドレスは光となって吸収されていく。

 具現化されたドレスだったのだが、装備解除の時のようだった。

 ドレス以外の物も収納できるか試すが『ウエディングガチャ』から出た物だけ収納できるようだった。 ドレスルームのような場所に収納されており取り出すことも可能だ。

 かさばる物が多かったから助かるな。


「よし」


 これで心置きなくガチャを回せるぞ。


「おおおお!」


 今度は赤い輝きと共にカプセルが排出された。

 なんだか引きがいいな。

 ご祝儀ですか?

 ありがとうございます。


「お?」


 これは……ドローン?

 白いドローン。 プロペラは4つだがやたらと手が多い。

 カメラのような物がついているが、撮影できるんだろうか?

 

「素晴らしい」


 記念は大事だよね。

 我が花嫁たちの晴れ舞台。

 しっかりと撮影しないと。

 しかし誰が撮るのだ?

 新郎がドローン操作してる訳にもいかないし。

 ジェイソンに持たせたら俺ばっかり撮りそうだ。

 というか具現化していないから使えなそう。


「む?」


 シャム太とノズが撮影係に立候補したいようだ。

 しかし一機しかないので取り合いが起こっている。

 ちょっとまってなさい。

 すぐにもう一機引いてあげるから。

 

 しかしガチャにおいて物欲センサーは最大の敵だ。


 無我の境地でいくべき。


「ふぉぉぉ……!」


 静かなる意思を指先に籠める。

 決してガチャ神に悟られないように。

 この煮えたぎる熱き思いを指先に。

 こいっ、こいっっ、こいッッ!


「せいッ!」


 ウエディングケーキに刺さった包丁をタップしそのまま下にスライドする。

 指先が触れた瞬間、僅かに祝福の輝きを見た気がした。


「へ?」


 光が溢れ出る。

 白、緑、青、赤、銀、そして金。

 金っ!?

 銀の上ってこと!?

 

「うるとられあッーーーー!?」


 祝福の鐘が鳴っていた。




◇◆◇




 女子会。


「結婚初夜も4人合同でいいと思うの」


「「「へ!?」」」

 

「シンク君に選ばせるのも可哀そうでしょ?」


 玉木の発言にコイツ何言ってんの?と女子高生3人組は思った。

 やっぱり頭のネジ2,3本ぶっ飛んでるよこのエロフと。


「私は……まだ、無理。 ……入んない」


「そう? なら無理しないほうがいいわね」


 小柄な葵では神駆のアメリカンサイズは厳しいだろうと、玉木は思う。

 別に絶対必要な儀式というわけではないのだ。 各自のペースでいいだろう。


「私も……まだいいかなぁ……」


 ミサの引き締まったお尻もまた神駆のサイズを思い出し尻込みさせる。

 しかも木実情報ではさらに大きくなっていたという話だ。


「見学……する」


「えっ、それは、どうなんだ? まぁ私もしようかな?」


「途中参加もありよね」


 女子が複数集まれば猥談話は盛り上がる。

 しかし木実はボーっとしていた。

 完全に一人の世界である。

 もともと猥談話は苦手な彼女ではあるが、今は完全に結婚初夜にトリップ中である。

 その証拠に木実の白い肌は耳まで真っ赤だ。


「じゃあ二人でシンク君の初めてを奪いましょうね、木実ちゃん」


「ふえ!? う、奪うんですかっ!?」


「そうよ。 シンク君は意外と奥手だから、大胆にいかないと発展しないわ!」


「そ、そうでしょうか?」


 神駆が奥手?と訝しむミサと葵。 散々弄ばれた体は反対を示すように疼く。

 本番こそまだだが、エロエロのエロ狼だろと。

 

「あれ……私たち、だけ?」「許せないわね……アイツぅ……」


 エロフである玉木は神駆を翻弄するぐらいだからまぁわかる。

 しかし木実は宝物のように大切にされていた。

 差別よくない。


「懲らしめる……必要」


「そうね!」


「私がこの体勢をとったら、木実ちゃんはこうね!」


「ひゃ!? これじゃ丸見えですよ、玉木さんっ!?」


 女子会の夜は賑やかに続いていく……。 

 



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