二百三十九話:ホクロ

 えちえちすぎんか?


「シンク君、かゆいところはないかな?」


「うむ」


 絶妙な手の力加減で頭皮が洗われていく。

 ヘアカットの巧みさでも思ったが、玉木さんは美容系なのだろうか?

 コンビニバイトしていたようだけど。


「この石鹸凄いね。 ほら、泡いっぱいだよ?」


 玉木さんが体につけて泡の凄さを強調してくる。

 そうだね、その泡吹き飛ばしたら丸見えだよ?


「わっ!? もう、えっち!」


 成人はしているって言ってたかな。

 うん、体つきが大人なんだよね。

 どこか子供っぽい体つきの3人と違って、大人の女性の体。

 グラビアアイドルとかと一緒だ。

 つまりエロイ。


 風力が弱く全ての泡を吹き飛ばせなかった。


「見たいの?」


 見たいです。


「だーめっ」


「うほっ」


 そう言いながら玉木さんは俺の大胸筋を洗い出した。

 泡をいっぱいつけた手でゆっくりと。

 お互いの胸は泡で覆われた。


「カチカチだね?」


 下がる手が俺のカチカチを撫でる。

 腹筋もかなり鍛えられている。

 大剣をずっと使っていたし、オメガの締め付けは自然と筋肉を鍛えてくれる。


「カッチカチ」


「おふっ!?」


 あっ、ちょっ。

 そこは柔らかいですっ。


「ふふ、洗ってあげるね♡」


「んんっ」


 全身くまなく洗われてしまう。

 彼女の細い指先に遊ばれるように。

 えちえちエルフたんのたわわが背中をこする。


 そこは恥ずかしいです、玉木さんっ!


「ホクロみつけた」


 えっ、どこに?

 もはや自分ですらわからないホクロの位置もばれてしまう。

 お嫁にいけません。


「洗ってくれるの……?」


「うむ」


「恥ずかしいなぁ……」


 攻守交代と、手に泡をいっぱいつける。

 恥ずかしがる玉木さん可愛い。

 俺も玉木さんのホクロを探すとしよう。


「ふぁああ!?」


 メタルマジックハンドも総動員して全身くまなく洗っていく。

 2本同時に操作も可能だ。

 合計4本の触手、じゃない手で美巨乳エルフさんの体を洗っていく。


(柔らかい……)


 決して太っていないが玉木さんの体は柔らかい。

 女性特有の柔らかさ。

 そして大人の体つき。

 なんでこんなにお尻がエロイんだろう。

 少女と違う大人の女の尻。

 尻肉を研究しながら洗っていく。


「っっ、まってっ、イっ――――」


 自分の手で口を押える玉木さん。

 体が大きく跳ねる。

 

「やっ、まだ、触っちゃッッ」


 くねくねと逃げようとするたび、左右にたわわが乱舞する。

 これじゃホクロが探せないので、たわわを洗うことにする。


「んんっ!」


(柔らかい……)


 想像していた以上に柔らかい。

 そして重い。

 両手に持った至宝は重かった。


「みつけた」


 双丘を洗うことしばし、隠れるようにあったほくろを発見する。


「ぁっ、見つかっちゃった……♡」


 照れくさそうで嬉しそうな笑みを見せる。

 力なく寄り掛かってくる玉木さんを抱き上げて、お風呂に向かうのだった。




◇◆◇



 

 手に持った盾ごと吹き飛ばされた少女。

 衝撃で体が思うように動かない。

 追った黒い怪物の凶刃が迫る。


「いやあ!?」


 怪物の体躯は黒く、窪んだ眼窩は昏い赤を宿している。


「『ブラックフェザー』ッ!」


 中空から放たれる黒羽が黒い怪物に突き刺さる。

 振り上げていた凶刃は振り下ろされることなく地面にガランと落ちた。


「大丈夫? 一旦、下がって!」


「あ、ありがとう、リョウくん!」


 背から黒い羽を生やした少年とも少女とも言える者は、倒れた少女に下がるように声をかけた。

 その間も油断なく戦場を見ている。


「黒い……スケルトン?」


 白骨死体であるスケルトンは白かったはずだが、今日襲い掛かってくるスケルトンは黒く、武装している。

 闇夜に紛れるような黒い武装をしたスケルトン。

 無数の赤い瞳が向かってきている。


「あ、……栞か」


 拠点である『神鳴館女学院付属高校』から光の矢が降り注ぐ。

 それはまるで夜空から星が降り注いだようであった。

 黒いスケルトンのみを打ち抜いていく。

 

『総員、黒い個体に注意してください。 物理的な攻撃が効きずらいと思われます。 フレイヤ隊は武装を中距離戦ように持ち替え、ヘカテ隊の援護をお願いします』 


 お嬢様学校の隊分けは現在4つが基本だ。

 近接戦闘部隊のフレイヤ隊、遠距離戦闘のアルテミス隊、斥候支援部隊のヘルメス隊、新たに加わったヘカテ隊は魔法部隊である。

 これに神駆攻略専用のリリス隊もあるが、秘密部隊である為、基本は4つである。


 スキルや魔法を習得する際、個人の素質で魂魄ポイントが異なる。

 『一ノ瀬 栞』の編成はそこを重視している。

 恐らく成長率にも影響があると。


『リョウ様は美愛さんのサポートをお願いします』


「了解!」


 そして4部隊とは別に遊撃隊も存在する。

 

 単独先行する『仙道 美愛』、薙刀使い『戎崎 春子』、そして中性的な顔立ちの有翼人『小鳥遊 涼』だ。

 

「リョウ様っ、気を付けてくださいですわ!」


「うん!」


 獲物を小太刀から槍へと持ち替えた『鳥居 円』からエールを受けリョウは空を駆ける。

 

「美愛っ!?」


 そして黒いスケルトンに囲まれる美愛が見えた。

 慌てて黒羽を飛ばそうとするが、杞憂に終わる。


「――『桜花一閃』ッ!」


 闇夜を切り裂く刀の一振りが、周囲に群がっていた黒いスケルトンを両断する。

 迸る闘気が桜吹雪のように舞い散る。


「ええ? 物理効かないんじゃ!?」

 

「気合!」


 規格外すぎる。

 リョウは強敵を前に機嫌良さそうに刀を振るう美愛に呆れ、戎崎の支援に向かう。


「ハル姉ちゃん! 援護するよッ」


「助かるよ、リョウ!」


 大柄な戎崎の振るう薙刀は強力だ。

 遠心力の加わった一撃はスケルトンを粉砕する。

 しかし黒いスケルトンは盾でガードし、たとえその身に喰らっても耐えた。


「硬いなっ……!」


 スキルによる保護がなければ薙刀のほうが壊れていたかもしれない。


「はぁっ!」


 しかし、リョウのブラックフェザーによる一撃に黒いスケルトンは崩れる。

 一撃の重さでは確実に薙刀の方が上なのに。

 スキルによる不思議な効果。

 

「闘気、闘気ねぇ……?」


 感覚派の美愛と違い、戎崎は美愛の言う『闘気』が理解できなかった。

 しかしスキルの影響は感じている。

 もっと深く、それを突き詰めるしかない。


「リョウに守ってもらってばっかりじゃ、格好がつかないね!」


 『戎崎 春子』もまた人外の道を歩みだす。


「異変が起きてますね……シンクさんに連絡を入れておきましょうか。 ……? 送れない……?」


 念話が通じないことに動揺する栞。


「シンクさん……」


 神駆の無事を祈る。


 



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