二百三十八話:
ガチャを回して何に一番困るか?と言えば、無駄になったアイテムの処理である。
低ランクの装備とかランジェリーの山とか運営のネタアイテムとか。
1回300円のガチャから出たクソ雑魚アイテムとかあるだけで精神を侵してくるダークマターだ。
今回で言えば命がけで戦い得た魂魄ポイントが女性下着の山とか、狂気の沙汰としか思えん。
俺はよくこんなにガチャを回したものだと、『監禁王の洋館』のドレスルームにて思う。
「コレ! 似合うと思うな!」
ガチャから出た衣類系のアイテムは低ランクの物は具現化されている物も多く場所を取る。 いずれなにか使えれば良いと、今は監禁王の洋館にて保管している。
Rランク辺りからは俺の魂魄と紐づけされているようで場所を取らない。 代わりに譲渡もできないので余計にタチが悪い気もする。 魂魄を使えば具現化できると猫の手の主人は言っていたが、するほどの物もない。
ガチャコレクターとしてはどこかに見える形で展示したいところだ。
またハウジングガチャでも回そうかな? そういった系のアイテムが出そうな気もする。
「うむ?」
見たことのない服だ。
玉木さんが鼻息を荒くして薦めてくる。
恐らく最初からドレスルームにあった洋服だろう。
手元と首元がひらひらした赤いシャツ。 まるで中世の貴族が着そうなイメージ。 似合うだろうか……?
「可愛いっ!」
「……」
これは、アレかな?
弟大好きお姉ちゃんによる着せ替え人形になる弟の気持ちってやつかな!?
ちなみに髪型はソフトモヒカンになってるよ。 玉木さん曰く『ベッカムヘア』らしい。 結構、短くなったな。 まぁベルセルクを使う度に長くなるからいいんだけど。
「どうかな? 似合う?」
「似合う」
いつもの『フェアリードレス』は薄紫色の際どいワンピースタイプの服だ。
今玉木さんが目の前で着替えた服は赤いドレスであり、おへそと肩が露出している。
どちらかというとアラビアンナイトみたいなベリーダンス衣装のようでもある。
ちなみに今日の玉木さんはえちえちな紫の紐パンだった。
紐パン好きだよね。
「嬉しい」
エルフだから小顔なのか、元から小顔なのか?
ピンとした長い耳はピンク色に染まっている。
白い肌が赤いドレスに映える。
(透けてる)
フェアリードレスは不思議なことに下着が透けないなのだが、今着ている赤いドレスはシースルーであり下着が透けている。
本来はさらにスカートと装飾品を付けるのかもしれない。 言った方がいいのだろうか?
「火傷のお薬ぬりぬりしよっか。 あっ、その前に、お風呂で洗わないとだね?」
美人巨乳エルフさんが甲斐甲斐しくお世話をしてくれる。
お店にいったら一体いくら請求されるかわからないぞ。
「シンク君は働きすぎよ? 明日はお姉さんと一緒に休みましょうね?」
お姉さんの包容力全開で甘やかしてくる玉木さん。
『猿人』との戦闘で疲れた体に優しい言葉は染み込んでくる。
甘やかされたい。
従妹の美人お姉さんってこんなかんじなのかな?
姉ではないけど身内故に甘々で距離感がバグってる感じ。
夏休みに一緒にお風呂に入っちゃうようなね。
(まぁもう15歳なのでそんな年齢ではないのだが)
小さい頃ならいざ知らず。
15歳の体は正直だから、エロゲ展開待ったなしだから。
なんなら玉木さんの空色の瞳が情欲に燃えている気がする。
「もっと一緒にいてくれないと、……監禁しちゃうぞ?」
「っ!?」
バッと玉木さんを見ればいたずらっ子の表情でこちらを見ていた。
いつもの綺麗なお姉さんだ。
「ん? 冗談だよ?」
一瞬首筋にヒヤッとした物を感じたが、気のせいだろう。
やっぱり疲れてるんだな。
少し休養が必要だ。
こちらは涼しくて過ごしやすい。 プールもあるし釣りもできる。 少しのんびりしよう。 ああ、魂魄ポイントも貯まったから使い方を考えないと。
「あれ、あっちにも部屋があるんだ?」
「……」
そっちは封鎖中だから、何もありませんよ?
決して地下室への階段なんてないですよ。
興味深そうに行こうとする玉木さんの手を取って、とりあえず大浴場に向かうのだった。
◇◆◇
憤怒を具現化したような落雷の嵐。
「かはっ……!?」
周囲に居た眷属を消し炭に変え、せっかく築いた中継拠点を自ら台無しにした犯人は深緑色の血を口から盛大に吐いた。
「……鎮まれ、『雷鬼』ッ」
使用者を守る為、周囲へと落雷を召喚し続ける黄金の腕輪。
「ぐぅぅ! 『雷鬼』ッッ!!」
しかしそれは膨大な生命力と引き換えに使用されている。
明らかな暴走であった。
「はあっ、はあっ、はあ……」
暴走が収まるのにしばらくの時間を有した。
顔色悪く血の気の引いた顔をした『猿人』は、荒くなった息を整える。
全身からは激しい出血。
鋭い刃物で乱雑に全身を切り刻まれたような傷跡が残っている。
『雷鬼』による生命力の消失で傷の治りが遅い。
「撤退したか……」
『猿人』は敵の去った方角を見る。
想定外ではあったが、大将の忠告通りであった。
「くっ、『雷鬼』がなければやられていたかもしれんな」
『金剛王牙カリュドン』の支配地域拡大を阻害する何か。
ネームドへと成る直前だった侵攻部隊の隊長ハイオークを屠った敵。
油断するなと、魔王は『猿人』へと黄金の腕輪を渡したのだ。
「デスナイト……ではないな。膨大な生命力を感じた。ヒューマンのナイトか」
先行部隊の仕入れた情報では、小鬼、魔犬、アンデット、ヒューマンの四勢力が存在している。
ヒューマンには大した敵は存在しないとの認識だった。
不思議な武器を使うが、その全ての存在が脆いからだ。
『雷鬼』の一撃で消し炭にならない敵はいなかった。
しかし今回の敵は違う。
「くっ……次は無いぞ、覚えておけ!」
雷撃をまともに喰らっても自ら攻撃をしかけてきた。
拳による連撃さえも防ぎ、強大な一撃を放ってきた。
間違いない。
「大将の野望は邪魔させんッ!」
『金剛王牙カリュドン』の進軍を邪魔する正体はヤツだと、『猿人』こと『アグロス』は両拳を打ち付け合い再戦を誓うのだった。
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