二百三十四話:身内の厨二病はキツイ


 「ど、どうしよう、シンクくん……」


 あわあわする木実ちゃん可愛い。

 土下座というか、両膝を付き祈る老人たちの暴力に困っているようだ。

 うんうん、祈りも土下座も変わらんよね。


「ジョブを確認したら、……無料で就けるのがあって」


 無料タダより怖いものは無い。


 入会金は無料とか、継続しないとダメとか、オプションもりもりとか、トラップいっぱいだから気をつけようね?

 店頭販売なんて人件費と賃貸料でコスト掛かってるから、どこかで罠を仕掛けてくるからね。


 しかし、綺麗な髪だ。

 透き通るような青銀の髪。 一本一本が銀糸のように輝いている。 神々しい。 クリっとした大きな瞳はやっぱり輝いているな。 桜色の唇に吸い寄せられるようだ。

 ん……。 また少し、大きくなりました?


「水神祭じゃあ! 宴の準備に取り掛かるぞ!!」


「おお!」


 絶対この人たち酒飲みたいだけだよ。

 元気になった老人たちは宴会好きだ。

 昔のように食べられる喜びを噛み締めている。

 まぁいっぱい働いてくれるからいいのだけど。

 

「元気いっぱいですね」


「うむ」


 髪色が変わっても木実ちゃんは木実ちゃんだ。

 イメチェンだよ。

 時期的に夏休みだし問題ない。

 去っていく老人たちを微笑ましそうに見ている姿は女神そのものだが。


 

+++++++++++++++++++++++++

 メニュー


 雪代 木実


★魂魄

 魂魄ランク:エリート

 保有魂魄:10779ポイント

 ジョブ:【見習い女神】

★スキル

 スキル購入

 スキル:【メイス術Lv.2】【身体強化Lv.2】【気配察知Lv.2】

 固有スキル:【聖水】【聖女の祝福】【女神の双丘】

 ジョブスキル:【状態異常無効】【神聖魔法の理】【神威の一撃】

★魔法

 魔法購入

 魔法:【神聖魔法Lv.1】

 限定魔法:【水の理】

 固有魔法:【水神姫の羽衣】

★マップ

『東雲東高校支配地域・水神姫の社』

★称号 

【処女神の加護】【天之水神姫】【ジャイアントキリング】【豊穣神の加護】


+++++++++++++++++++++++++



「こんな感じです。 なんだかいっぱい増えちゃいました」


 メニューを紙に書き写してもらったら凄いことになっている。

 どこから突っ込んでいいのかわからないが、まずはあれか。


「見習い女神」


「はい。 前は無かったんですが、シークレットジョブが解放されたとアナウンスがありました」


 そして無料だったから即決したと。

 しかし女神、女神か。

 天使とか飛び越えて最上位クラスなのでは……。

 それが無料で?


「……」


 罠だ罠だと勘ぐるのはやめよう。

 もうすでに取り返しは付かないのだから。

 なんだか神様の加護も二つも持っているし大丈夫だろう。

 なにかあっても俺が護るしね。


 うむ、まったく問題ない。

 【邪神フラグ】みたいな変なの持っていないし。


「あ……。 えへへ」


 木実ちゃんの頭を撫でる。

 どうしても触ってみたくなった。


「凄いよね。 みんなびっくりするかな?」


 すると思う。

 あと葵とミサから詰問されると思う。

 やっぱりちょっと大きくなってる。

 気づいてないのかな?

 その豊かな双丘が触れているのだけど。


(ん……!?)


 暖かい。

 それに神聖なエネルギーが流れこんでくるような。

 力が漲ってくる!


「どうしたの、シンクくん?」


 上目遣いで窺ってくる木実ちゃん。

 やばいな、魅力値が+100くらいされてる。

 瞳も胸も雰囲気も、人知を超えてやがる!


 『監禁王の洋館』にお持ち帰りしたい。 大切にしまっておきたい。


(これは……精神干渉……?)


 不意に冷静になった。

 【不撓不屈】の効果だろうか。

 木実ちゃんの双丘が最終兵器になってしまった。

 おっぱい契約、できるだろうか?

 

 



◇◆◇





 「神駆ぅ! 久しぶりだな!!」


 相変わらず上半身裸のジェイソンに抱擁されそうになるので回避する。

 

「む! 反抗期か神駆よ!?」


「ウザ」


 汗つくしキモイだろ。


 さっさと服部先輩からの手紙を渡して帰ろう。

 ちなみに手紙に新たな敵の情報と【猫の手】の防具に関する情報が書いてあった。 敵のほうは前に見た炎の魔人、それと雷を使う猿人の情報。 敵同士で縄張り争いを加熱させている。 上位種が襲ってくればかなり危険だ。

 

 防具についてはラインナップ更新があったようだ。

 ハイ・ワイルドドッグ装備。

 物理防御力上昇と、炎耐性を有するらしい。

 おそらくだが、その敵に対応した防具なんだろうな。

 ゲームのようなシステムが多い。 黒の魔皇帝とかいう奴はよほどゲーマーだったのだろう。

 

「お兄さんだ! お兄さんっ、お兄さぁん♡」


 マズイ。

 アイリというギャルに捕まった。


「アイリ……メス顔だしすぎっしょ。 お兄さんドン引きっしょ」


「はふ、お兄さんっ、良い匂い♡」


「クンクンすんなっしょ! 発情期のメス犬かよ! 」


 白と黒のギャルが左右でキャンキャンしてる。

 サポは制服を着崩したような格好だが、アイリは前に上げたチャイナ服を着飾っている。

 ちゃんと洗ってるかな?


「お兄さんに会えるまでずっとオナ禁してるの、えらい? 褒めてっ!」


 なにを褒めればいいんですか?


「ごめんなさい、バカなんです、許してあげてください」


 もう変な語尾忘れて普通に謝っているサポ。


「ほう。 流石は神駆。 モテモテだな! ちゃんとクレハは可愛がっておるか?」


 クレハちゃんは元気だよ。 

 小っちゃい子の面倒をよく見てくれるからみんなも助かってる。

 東雲東高校で大人気ですよ。


「お兄さん、今日はお泊りだよね? ちゃんと掃除したから、綺麗になってるよ!」


「そこは、まぁ、頑張ったっしょ」


 褒めて褒めてと体を左右に動かすアイリ。

 ちょっと期待する面持ちでこちらを見るサポ。

 しょうがないので頭を撫でてやる。

 うん、ペットにするのと変わらないよ?

 

「ふへへへへ!」


「んっ……」


 爺がニヤニヤ見てくるのがムカつく!


「ジェイソンさん」


「どうした?」


「敵襲。 数五百」


「ほう……」


 忍者からの報告に、ニヤリと、悪い笑みをこちらに向けてくるジェイソン。


「神駆よ、我ら『鬼兜組』の力をとくと見るがよい!」


「……」


 ほんと厨二病なんだよこの爺。


 心がムズムズするよ!




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