二百三十話:見事だ
木実ちゃんは可愛い。
何が可愛いって全部だ。
その存在が愛しく可愛いのだ。
「わわっ、シ、シンクくんっ!?」
恐るべき異界植物の粘液によって服だけを溶かされた木実ちゃん。
肌には影響がないようで良かった。
いやわからないな。
じっくりと見ないと。
後から来るタイプかもしれん。
くっついたままではよくない。
「そんなに、じっくり見られると、は、恥ずかしいよ……?」
全部が完全に溶けているわけではなく、ヌルヌルの油のようなのも残っている。
滑らせるぬるぬると溶かす粘液があったのかもしれない。
俺は木実ちゃんの柔肌に残ったヌルヌルを取って服に付けてみるが溶けることはなかった。
「ボロボロになっちゃった。 替えの服どうしようかな?」
安心して欲しい。
ガチャ産の下着は山ほどある。 比喩ではなく本当に山ほどあるんだ。
それに具現化されている服もいっぱいあるので好きなの選んで欲しい。
俺はボロボロになった服を取り除いていく。
「ふぇぇ」
うーむ、見事だ。
その巨大な双丘はどうやって重力に逆らっているのだろう。
木実ちゃんが押さえる手から柔らかなマショマロおっぱいが零れ落ちている。
埋もれたい。
恥ずかしがる木実ちゃんは顔をあわあわさせながらされるがままだ。
ぬるぬるでまたコケてもこまるからね。
お風呂場は滑りやすいし。
うんうん、これは俺が洗ってあげるしかないな。
人形2体は先に風呂場に突撃して洗っている。
君たち帰還して時間たてば元に戻るよね?
「シンクくんっ、そこっ!?」
俺が上げたセクシー下着もボロボロにされてしまった。
またプレゼントするのでコレは処分だな。
ぬるぬるに張り付く破れた下着を取り除く。
まだくっついている部分も破いちゃう。
なんだろう?
この感覚は。
お宝を前にしたトレジャーハンターの気分だろうか。
財宝はすぐそこだ!
「ああっ、ダメっ」
中腰だった俺の目に木実ちゃんの手が覆いかぶさる。
両手で塞がれてしまい財宝は見えない。
残念。
「ひんっ!?」
目を塞がれてしまったので手の感覚だけで剝いでいく。
肌を傷つけないよう慎重に。
「ん゛~~!」
ヌルヌルのせいで手がくっついてしまう。
ぴったりと。触手のように張り付く。 これは獲物を捕らえる為の粘液なのかもしれない。
(うむ……)
目を閉じられたことによって冷静になってきた。
俺はなんでこんなとんでもないことをしているんだ?
木実ちゃんが心配すぎて暴走してしまった。
今この手の向こうには衣服をボロボロにされ生まれたままの姿を恥ずかしそうに隠す木実ちゃんが立っている。
そう考えると、興奮してきたぞ。
「~~っ!?」
彼女の肌に手を滑らせ全ての張り付いていた衣服を取り除いたことを確認する。
俺の目を押さえる手に圧力が加わりはみ出る柔らかいモノが顔に当たる。
がくがくと腰が砕ける木実ちゃんの揺れに合わせて揺れる。
「あっ」
見られるのは恥ずかしいとのことなので、目隠しをしよう。
そうすれば一緒に入っても問題ないのでは?
俺にはまだ木実ちゃんの裸体は早すぎる。
想像だけで限界突破しそうだからね。
自制するためにも目隠しをしよう。
研ぎ澄まされた五感を使えば目隠し状態でも風呂は入れる。
「……ありがとう、シンクくん♡」
手を握られてしまった。
目隠しをしているから、誘導してくれるようだ。
なんて優しいのだろうか!
俺は堂々と立ち上がる。
『ブラックホーンシリーズ』を装備する俺は、一部が変形していても不自由なく動けるのだ。
いてて! とはならずに済むのである。
まぁ大きさは変えられないのでバレるのだが。
「「……」」
浴室に入ると爽やかな緑の香りがした。
窓を開けているのか風が入ってくる。
湖の上の洋館であるが、周りは緑に囲まれていたのでそのおかげだろうか。
「武装解除」
浴室に入った以上脱ぐしかあるまい。
濡れても装備は戻せば乾いてくれるけど、マナーだよね!
横にいる木実ちゃんが止まった。
まるで彫像のように動かない。
目隠しごしになんとなくシルエットがわかる。
こちらを見ている……?
「こ、こっちが洗い場、だよ? 滑らないように、気を付けてね?」
「うむ」
「背中流してあげるね!」
なんと!
ヌルヌルを流してあげようと思っていたのに、まさか俺の背中を流してくれるとは。
こんな素晴らしい日が来るなんて……。
思わず叫びたくなるね!
◇◆◇
「――――なんて日だ!!」
怒涛のシゴキの〆は大型怪物の討伐だった。
寺田の誘いに乗り、藤崎女子高校へとやって来たがまさかの地獄の日々だった。
レンジャー養成訓練を思い出す。 アレは精神的にも肉体的にも追い込まれる。 かつては乗り越えることが出来なかったが、今は仲間たちと共に必死にくらいついている。
今と昔で違うこと、それは明確な敵の存在。
『GYAEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』
猛り狂う巨猪。
天へと伸びる太い牙と正面にいる獲物を狙う鋭い牙。
爛々と赤い瞳をギラつかせて突っ込んでくる。
夜の闇を照らす太陽のようなオレンジ色の鬣が光る。
「くるぞ!」
徹底的に鍛え上げられた筋肉は軽々と大楯を構える。
いかに鍛えようと一人では耐えられない。
しかし同じように鍛えた者たちが集えば鉄壁となる。
幾多の魔物の攻撃を防いできた。
だが。
「「「づづ!?」」」
雷に打たれたように体が硬直する。
バンと大きな音が響く。
体毛を逆立てた巨猪の怪物が迫りくる。
マズイ!と俺の背中に冷たいものが流れた。
「おおおお!!」
山木!
突進する巨猪の横腹にトンファーを装備した男の拳が炸裂する。
橙色の輝きを纏うその拳が、不器用な男の拳が、巨大な怪物の突進を食い止める。
軽トラよりも大きな肉の塊。
いや、筋肉の塊を、小さな人の身で揺るがす。
「なんという男だ……」
誰よりもハードな特訓をこなし、出された食事はすべてを平らげ、夜は少女たちの悩みを解決する。
言葉よりも背中で語る、男の中の男。
まさに英雄だ。
「ぐ、なにを呆けている!」
荒れ狂う怪物に立ち向かう山木。
決して一人では戦わせないぞ。
かつての無念を晴らす為、鍛え続けたこの体。
お前の為に使おうぞ!
「俺たちも戦うぞッ!!」
「「おう!」」
雷撃に服が弾け飛ぶも構わず戦い続ける。
実に男だ。
良い体をしている。
『GYAEE……』
ズゥゥン……と、地面に横たわる巨猪の怪物。
こちらも怪我人だらけの満身創痍であるが、皆無事だ。
「山木!」
「三浦さん!」
握手から胸筋をぶつけ合う。
汗が弾け飛ぶ。
お互いに服はボロボロで上半身は裸だった。
生存を喜び健闘を称える。
大型の怪物を討伐したことで敵は引いていった。
「今日も一日、なんとか生き延びたな」
「はは、そうですね」
ボロ雑巾のように地面に寝転ぶ仲間を見て二人で笑い合う。
「これからも頼むぞ、山木」
「あっ、は、はい!?」
見事だ。
鍛えこまれた良い下半身だ。
月の綺麗な夜に似合う良い形をしているな、山木。
さて、疲れ果てた仲間たちの介抱をしてやらないとな。
私はこれでもマッサージは得意中の得意だからな。
「山木もマッサージいるか?」
「大丈夫です! 三浦さん!! これから、夜練がありますのでッッ!!」
「そうか、あまり無理はするなよ」
「ハイッ!!」
颯爽と駆けていく山木。
本当に真面目で不器用な良い男だ。
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