二百二十八話:キュウリの一本漬け
「あれ、葵ちゃん?」
東雲東高校の神社に来た。
相変わらず清涼な雰囲気に満ちた空間。 校舎の中庭に神聖な気配が満ちている。
コの字型の中庭に鎮座する神社。 周囲の校舎の壁がネペンデス君に浸食され聖域のような感じになっている。 もちろん天使である木実ちゃんの存在も大きい。
「慌ててどこか行っちゃった、おトイレかな?」
宮司である木実ちゃん。
相変わらずファンシーな、いやファンタジーというべきか、コスプレみたいな宮司服を着ている。
その前面は圧倒的戦闘力である。 男子の目を釘付けにする特殊能力付。 個人的には脇がセクシーなので他の男には見せないでほしい。 見てる男は地獄の特訓にご招待しよう。 ちょっかい出す奴がもしいたら忍者学園送り決定である。
今のところそんなチャレンジャーは存在しないようである。
木実ちゃんの服の実際の戦闘性能はどうなのかわからないが。
早めに彼女の為の装備をプレゼントしよう。
「……」
昨日はちょっとやり過ぎたせいか、顔を真っ赤にしてよわよわ猫さんはどこかに逃げていった。
反省。
ついつい反応が可愛かったので遊びすぎてしまった。
猫はあまり構い過ぎると逃げてしまうのだ。
「シンクくん」
天使の囁き。
違った木実ちゃんボイスだ。
軍服の中のオメガが昂っているのが分かる。
これは……。
ガチャレベルが上がったせいで感度が良すぎる。
思考に悪影響だぞ。 ムラムラする。
そういえば絶対呪われてると思った『ヴォルフガング』の指輪が大人しいんだよね。 なんとなくは感じるけど、その程度。 すでに俺に取り憑いているんだろうか? 厨二病タイムになるから嫌なんだけど。 これ以上黒歴史はいらないです。
「キュウリの漬物作ってみたんです! おばあちゃんたちが教えてくれたんですよ。 食べてみますか?」
「食べる」
木実ちゃんの手作り漬物を食べない訳がない。
ポリポリきゅうりとか大好物ですよ。
白米があればなおよし。
無くても木実ちゃんの手作りならまったく問題なし。
そういえば畑にいっぱいきゅうりは育ってたね。
「はい、どうぞ!」
自信作なのかな?
天使の笑顔で渡されたそれは、フランクフルトみたいに竹串に刺さっている。
皮もシマシマに剥いてあって手が込んでる。
俺の為に……!
「んっ!?」
「どうかな? 二日漬けだよ!」
二日間ナニに漬けてあったんだろうか?
「美味い」
「良かった!」
圧倒的、甘味!
久々の木実ちゃん手作り料理に体は歓喜で震えてやがる。
ボリジャリボリジャリと食べすすめる。
なんだジャリって!?
凄いぞ、コレ一本で満腹だ。 白米なんぞいらぬ!
「やみつき」
「えへへ♪ いっぱいあるからね!」
「ほ、ほう……!」
屈託のない天使の笑顔だ。
でもなぜだろう、俺の心にやましさがあるせいかちょっと勘ぐってしまう。
わざとじゃないよね? 甘味スキルとか持ってないよね?
他の女の子に手を出すたびに一本ずつ追加しますとか言わないよね?
と、最近猫神官のあざとい笑顔を見過ぎた弊害かな……。
木実ちゃんに限ってそんなことはない!
「ジョブの確認?」
「うむ」
そうなのだ。
木実ちゃんに会いに来たついでに確認しておこう。
まぁ魂魄ポイントがないので今は無理なんだが。
はたしてシークレットジョブはいくつ必要だろうか?
>>>シークレットジョブ
ガチャマスター:獲得条件:1万魂魄、【ガチャLv.5】
ブラックライダー:獲得条件:5万魂魄、【ガチャLv.5】、『ブラックホーンシリーズ』コンプリート。
あれ、ガチャマスター意外と必要魂魄少ないな。
いや嬉しいんだけどね。
10万くらい要求してくるかと思った。
なんでだろう?
ブラックライダーの方が条件は厳しいな。
そもそもシリーズコンプがやばい。
運要素がえぐすぎる。 ソシャゲだったら炎上してるぞ。
しかしこれなら、ガチャマスター一択かな。
……いやまて、罠か?
死神の件もあるし慎重になる。
純粋に強さを求めるなら特殊ジョブの方がいいか?
ガチャマスターになる利点とはなんぞや。
詳細がわからないからなんとも言えないのだけど。
う~ん……。
迷うね。 情報が少なすぎる。 人柱になるにはリスクが高いけど、早めにジョブは就いていた方がいい。 無職は嫌だ。
例え罠でも蹂躙すれば問題ないなと、結論付ける。
こういう時、脳筋は楽でいい。
「シンクくん、私も一緒にジョブに就きたいです」
「っ!」
「で、デート、したいな?」
木実ちゃんが一歩近づいただけで圧倒的存在感を放つ双丘。
距離感がバグる。
圧倒的だ。
こんなおねだり叶えるしかないよね!
慣れてない感じとテレて顔が真っ赤になってる木実ちゃん。
今すぐ個室に監禁したい。
……。
監禁王の鍵の影響か!?
木実ちゃんを監禁したい欲ががが……。
「うむ!」
「ありがとう、シンクくん!」
とりあえず、デートプランを考えよう。
まぁ魂魄集めデートなんだが。
え、お泊りデートってことですか!?
「えへへ♪ シンクくんと二人っきりで初デートだね!」
二人っきり!
これはもうあるんじゃないか!?
ついに大人の階段を上る時が――――
「頑張ってお弁当作るね!」
――――その前に、天国の階段を上るかもしれない。
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