二百二十七話:よわよわ変態猫さん


 落ち着いた感じの良い部屋だ。


「シン……機嫌良いいね?」


「んっ」


 窓を開ければ綺麗な夜景も見える。観光地のホテルの個室みたい。葵が持ち込んだであろう本や現代的な家具もいくつかあった。

 今は約束通りベッドの上で葵と特訓中。

 葵は俺の早漏克服を手伝ってくれる変態魔法使いなのだ。


「温泉、誘って?」


「んん゛っ」


 葵とクレハは仲が良い。

 まぁ一方的にクレハがじゃれついているような感じだが。

 秘湯探索も話がバレているようだ。

 特訓が激しくなる。


「シン、凄かったって」


「んっ、んふぅっ!」


 『ブラックホーンナイト』を解除しオメガを着ている状態だ。

 ビキビキに薄くなったオメガは裸よりも感度が良い。 感度補正機能まであるのだ。

 おかしいよね? 

 絶対『ブラックホーンオメガ』の趣味だろ。

 凄いとはなんだ……凄かったのはバカップルだろう!? 年の差があるほど燃え上がるのだろう。 それとも見られていたからか。 


「きもち……いい?」


「うっ」


 黒猫ルームウェアを着た葵が上目遣いに聞いてくる。

 体の硬くなった一部に這わせられる彼女の細い手は巧みに動いてくる。

 どこが気持ちいいのか探るように、俺の反応を見ながら。

 優しくゆっくりと、体にくっついた葵の体温が伝わってくる。

 女の子の甘い香りがする。


「休憩」


「んほっ」


 葵の小さい手から離された豪槍はビクンビクンと生き物のように動いている。

 彼女はそれを眺めて満足し、机に本を取りに行った。

 寂しげな豪槍が揺れている。


「ん!?」


「本、読む」


 ドレスのようなふわっとしたスカートのルームウェアが俺の前を横切り乗っかってきた。 黒い尻尾は本物の猫の尻尾のように絡んでくる。

 あ、葵さん?

 むふぅ、と背中を俺の胸に預けてくる葵ニャンコ。

 小さな彼女はすっぽりと俺の腹筋の上に納まる。

 柔らかいお尻の感触が伝わってくる。

 『ブラックホーンオメガ』が処女の獲物に歓喜しビキビキに締め上げてくる。 収縮と緊張が繰り返される。

 これは鍛えられるぞ。

 

「ん……ん……」 


 本を読む葵の腰が僅かに動いている。

 その反応に『ブラックホーンオメガ』さんの動きがさらに激しくなる。

 まるで健康器具のように豪槍を震わせる。

 

「んっ!……」


 目の前の肩が震える。


「んは……ぁっ……」


 葵から甘い声が漏れる。休憩といいつつ一人で楽しんでない? 猫耳フードを被っており後ろからはその表情は見えないが……。


「ふあっ!?」


 尻尾を弄ると我慢できないのか大きい声を出してしまう葵ニャンコ。


「ふゃ、あっ、まっ」


 尻尾はかなり敏感なようで、普段反応の薄い彼女も大喜びだ。

 

「本、読んでて」


「んんっ、シン……」


 触り心地の良い猫型ルームウェアを弄る。

 葵には気にせず本を読んでてもらおう。

 今は俺も休憩中だから、葵ニャンコを撫でて癒されたいだけだから。


「あっ、クリクリ……ダメっ」


 僅かなふくらみの先にコリっとした部分を発見した俺の指先は、なんだろうとついつい探ってしまう。 やみつきになりそうなコリコリだ。


「シンっ」


「読んで」


 仰け反り片手を俺の髪に持ってくる彼女。 何かに悶えるように俺の髪をグシャグシャする。 お願いだから引っ張らないでね?

 スカートで見えないけど、反り返った振動する豪槍は彼女の下着にピッタリと張り付いている。 むしろグイグイと押し込まれている。

 彼女の腰が小刻みに前後し押し当てているから。

 気づいていないのだろうか?

 動くたび甘い声は大きくなっていく。

 もはや本はベッドに投げ捨てられていた。


「あっ、きちゃ……!」


 限界まで仰け反った彼女は弓のように綺麗なアーチを描いた。

 

「あっあああああっっ!?」


 貫くように押し当てらる振動する豪槍に自らの体重で止めをさした。

 1回、2回、3回と一際大きくビクン!と跳ねた葵ニャンコは力なくもたれかかてきた。

 やっと見えた猫耳フードの中の顔は惚けきっていた。

 その表情を見て俺は思った。


 コイツ、実はよわよわ変態猫さんなのでは?


 言動こそエロ伝道者みたいな発言をしているが、実はよわよわエロ猫さんなのでは?


「あっ、シン!?」


「特訓」


 もちろん、葵のな?


 逃げ場のない個室で葵ニャンコを猛特訓しました。





◇◆◇




 剣閃が輝く。

 

「ははっ」


 月の光を受けて鋭く冷たい光を宿す『ブラックホーンフレイ』。

 体が自然と動く。

 ただし初めてベルセルク化した時のような乗っ取られる感覚ではなく、自然と導かれるように。

 どこか俯瞰的に体を捉え戦場を把握しながら体が最適の動きをしているような。

 

「はっはッー!」


 『ブラックホーンシャドウ』に乗ったまま、敵の領域を駆け巡る。

 長剣を右に左に振り回し、黒鉄馬は跳ね上がり敵の群れを蹴散らす。

 なんだろうか、無双ゲーを思い出すね。 この爽快感は!


「む!」


 宝玉が輝いている。

 漆黒のオーラを放っている。

 脳裏に囁くその言葉を口にする。


「『デックイグニス』」


 詠唱に合わせて振った長剣。

 広がる視界は数多の魔物を補足する。

 宝玉から迸る漆黒のオーラは剣先に向かうに連れて黒蒼炎へと変わる。

 猪とも狼とも取れるソレを模した炎獣が敵の数だけ現れ駆ける。


 魔物に喰らいつくと、火柱となって夜の闇を明るく照らす。


「派手だねぇ!」


 肌を焼く熱風が伝わってくる。

 いくつもの火柱が天へと向かって打ちあがっていた。

 SPを使ってしまうが、ずいぶんと強力な遠距離攻撃を手に入れた。

 漆黒の斬撃とは違う炎の柱。

 これはもう魔法と言っていいのでは?


 

>>>【ガチャLv.5】を確認しました

>>>シークレットジョブ:『ガチャマスター』『ブラックライダー』の獲得条件を満たしました



 炎獣が駆け火柱が上がり続ける中、俺は脳内に響いたアナウンスに動きを止めた。

 戦場で致命的なまでに無防備であったが、『ブラックホーンフレイ』は油断なく戦場を見据えているのがわかった。

 それだけじゃない、『ブラックホーンシリーズ』たちの仕事ぶりをなんとなく理解できる。

 『ブラックホーンリア』いつでも反応し動けるようにアイドル状態を保っており、『ブラックホーンオメガ』は力を漲らせ『ブラックホーンナイト』は敵の奇襲に備えている。 『ブラックホーンシャドウ』全シリーズのSPを管理し、常に処女の気配がないか周辺を探索しているのが分かった。


 これは、ガチャスキルのレベルが5に上がったからだろうか?

 それともジョブの獲得条件を満たしたから?

 理由は分からないが、今までにないほどの全能感に魂が、魂魄が歓喜しているのがわかった。




 

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