二百二十五話:ミサに続いて……!
遠巻きに見た感じではあったが、藤崎駐屯地は内政に力を入れ始めてる感じだった。
民間人も
前に行った時の雰囲気が無くなってればいいね。
山木さんたちもいないので近づくのはやめておいたけど。
「ふむ……」
東雲東高校は緑に溢れている。
いや溢れすぎている。
領地化により校舎の外見が少し変わっていたのだが、ネペンデス君の仕業か、アスファルトの道路すらも緑が浸食し始めている。
歩きずらいということは無い。 這うように蔓植物が伸びているのだ。 夏だから成長も早いのだろうか?
土のグラウンドも緑豊かな公園の芝のようになっている。
西校舎3階。
作りかけの秘密基地はネペンデス君の本拠地である。
そこに一人の女性が植物で出来た椅子の上に座り、ブツブツと呟きながら揺れていた。
「きになるであります……きになるであります……」
「……」
自衛隊の女性。
恐らく俺の秘密を暴こうと侵入した人物。
ネペンデス君に捕えられ忘れて放置してたら精神を病んでしまった。
山木さんたちが帰る際に置いて行かれた可哀そうな女性隊員さんである。
立ち入り禁止になっているはずだが、たまに入ってきてしまうようだ。 服装はすでに自衛隊の物ではなく、私服だ。 どこか虚ろな表情、夢見心地のような、不思議な表情だ。
ネペンデス君……また変なことしてないよね? もう結構な時間が経つのにまだ女性隊員さん復活しないんだけど。
怒られるからやめてくださいよ?
『監禁王の洋館』を手に入れたことで、秘密基地に手を加える気が起きない。
3種類の壺もあっちに持っていけば安全だし、向こうのほうが快適だから。
だけど中途半端な感じで嫌だね。
少し手を加えてミーティングスペースにしておこうか。
「ん」
わさわさとネペンデス君が人型を模り寄ってきた。
手製のカゴに沢山の実を入れて渡してくる。
マンゴーのような果物。 赤紫色をしておりよく熟していそうだ。 大きさは普通のマンゴーの3倍くらい。
食べごろのそれを見て俺は思わず涎を拭う。
甘くて美味しいのだ。
「ふむ」
ガチャ産の赤い壺に入れておけばお酒になる。
微炭酸のマンゴーカルピス酒みたいな美酒だ。
たぶんガチャ産の壺じゃなくてもできるとおもうけどね。
時間が掛かるし普通に食べると思うけど。
ネペンデス君を褒めておく。
あとやり過ぎないように注意も。
「シン」
東雲東高校をぶらぶらと散歩していると、葵に出会った。
今日は魔法使いの格好ではなく、巫女服だ。
木実ちゃんのとは少し違うデザイン。
宮司と巫女で服が違うのだろう。
「ジョブ……ゲットした」
「!」
今回の遠征で魂魄ポイントが溜まったからだろう。
葵は範囲魔法で雑魚狩りしてたから溜まりもいいはず。
ジョブを獲得するのに必要なポイントが溜まったのか!
+++++++++++++++++++++++++
メニュー
瀬名 葵
★魂魄
魂魄ランク:エリート
保有魂魄:315ポイント
ジョブ:【見習い魔女】
★スキル
スキル購入
スキル:【魔力強化Lv.2】【杖術Lv.1】【精神力強化Lv.1】
固有スキル:
ジョブスキル:【魔力向上】【魔法力向上】【魔の導き】
★魔法
魔法購入
魔法:【地属性魔法Lv.3】
限定魔法:【魔力壁】
★マップ
『東雲東高校支配地域』
★称号
【ジャイアントキリング】
+++++++++++++++++++++++
【見習い魔女】!?
ミサに続いて特殊ジョブ!
俺の一覧には出てこなかったジョブだな。
「1万ポイント……長かった」
メニューも書いて教えてくれた。
葵のスキルはミサと違って少ないが、【地属性魔法Lv.3】とはなかなか育っているね。
本人の資質で習得に必要な魂魄ポイントは変わってくる。
俺で言えば魔法関係はあほみたいに魂魄ポイントを必要とする。
葵は逆なんだろう。 もしくはこだわりか、憧れかもしれない。
魔法特化の魔女は葵に合っているしいいね。
本人も気に入っているようだし。
小さい手をVの字にしてドヤってくる。
「シンは、どうするの?」
ガチャマスター……は未だに選択できない。
獲得条件が不明なのだ。
というか他のシークレットジョブも分からんのよね。
未実装という落ちもあるかもしれない、いやないか。 そんな手抜きを仮にも神様がするなんてねぇ? 嘘だよねぇ……?
特殊ジョブから選ぶとすれば『見習い覇王』かな?
他のはなんかヤダ。
一度選んだら変えられないのかな? それとも複数ジョブシステムなんだろうか? 人柱が欲しいところだ。
だらけているミサを連れて連戦してこようかしら。
「今日は……久しぶりに、二人で、……特訓する?」
上目遣いで巫女服の葵が尋ねてくる。
一体ナンの特訓なのかな!?
俺の反応を見て、ニッと笑う葵。 相変わらずからかってくるのが好きな奴だ。
また夜にね?と言って機嫌良さそうに葵は去っていった。
「ナンノ特訓デェス? ハッ!? 秘密ノ忍者修行カ? クレハモ一緒スルデェス!」
クレハちゃんにはまだ早いんじゃないだろうか?
ひょっこりと現れた今日のクレハちゃんはへそ出しのタンクトップにピッチリとしたロングパンツそれにキャップを被っていて、忍者からは程遠い格好になっており、年相応といった感じだ。 胸の大きさ以外。
「マスター、全然帰ッテコナイデェス。 クレハ、ロンリーボッチ……」
うるうると、嘘泣きをするクレハちゃん。
ずいぶんと演技の下手なくノ一だな。
「ダーリン、遊ンデクレタラ、クレハ、ハッピーデェス!」
構って欲しいらしい。
ジェイソンには東雲東高校のみんなも世話になってるし、クレハちゃんのお世話もしないとマズいか。
しかし何して遊べばいいの?
ゲームもないし困ったね。
「ONSEN!」
日本に来たら温泉に家族と入るのが楽しみだったらしい。
『神鳴館女学院付属高校』の温泉を借りるのはなんだか違う気がするし、変な誤解をされても困るからやめておこう。
こんな状況下で営業している旅館もないだろうし難しいね。
ポンプでくみ上げないタイプのところならまだ入れるかも?
秘湯とか。
(秘湯温泉巡り……)
いいな。
いいぞ。
娯楽の少なくなってしまった世界での楽しみにいいかもしれない。
どうせ誰もこないだろうから貸し切り状態だろうし。
秘湯巡り倶楽部とか憧れるよね。
ボッチを集めて結成しようか?
「うむ」
「WOW! 嬉シイ!!」
抱き着いてきたクレハちゃんはとっても柔らかく甘い香りがした。
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