二百十一話:


 黄色に輝く魔結晶。


「雷かな?」


 ミニオークたちの侵攻拠点を潰していたと思っていたけど、中継拠点だったのかな?

 まぁ違いはよくわからないし、支配領域が増えれば侵攻拠点にもあるのかもしれない。

 水か火が欲しかったけど、雷はどうなのだろう。

 そもそも雷属性なのかどうかすらわからないが。

 なんにせよ黒髪ロングのお土産ゲット。

 卵とお肉もあるし喜んでくれるんじゃないかな。


 しかし『ブラックホーンナイト』はいいな。

 鎧を着ているだけで安心感が違う。

 重量軽減でもあるのか、動きを阻害することなもない。

 むしろ今までアンダーウェアで戦ってたようなものなのでは?

 そう考えると少し恥ずかしいな。



「シンク君、おかえりなさい。 お爺様から伝言を預かっているわ」


 東雲東高校に戻ると玉木さんから巻物を受け取る。

 うん。

 普通にメモでいいだろ。


「……」


 『良い手駒たちを見つけた。 しばらく本格的に鍛える。 こちらの方が魔物が多く修行に向いている。 鍛えたい奴らがいたら送ってこい』


 爺の鬼軍曹魂に火がついてる。

 良い手駒たちって自衛隊の人達かな? 山木さんは大丈夫だろうか……。

 ギャル学校が地獄の忍者学園になってしまった。


 『追伸 クレハのことは頼んだぞ。』


 頼まれるのはいいのだけど、洗脳はちゃんと解いたのかな?

 まぁしばらくすれば爺の戯言だと気づくだろう。


「あら、お爺様行っちゃったのね。 もっとシンク君の子供のころの話し、聞きたかったのに」


「ん」


 勘弁してください。

 俺は話しをそらすように新しい食料を玉木さんに渡す。


「ありがとうシンク君。 でも一人で無茶しちゃダメよ。 私も連れてってね?」


 地獄の果てまで付き合うわ、と玉木さんが微笑みながら腕に絡む。

 彼女なら本当についてきてくれそうだ。


「お肉! みんな喜ぶわね」


 葉包の肉串、キャブラキは玉木さんにも好評のようだ。

 ホロホロに柔らかい大きなお肉。

 独特の香辛料が食欲をそそる。

 ご飯が進みそうだ。

 そういえばお米は大丈夫だろうか?

 東雲東高校にも千人近くは避難している人がいるから、備蓄も厳しいだろう。


「そうね、まだ平気だけど……収穫ができないと厳しくなっていくわよね」


 最近だと『コメ離れ』なんてニュースなんかで言われるけど、やっぱり炊き立てご飯は最強ですよ。 

 服部先輩にそれとなく・・・・・相談しておこう。


 

「「「肉と女と――――酒ッ!!」」」 


 大宴会である。

 一部のおっさん連中がはしゃいで女性陣から白い目で見られているぞ。

 肉と酒の力は凄い。


「今日はお肉記念日にしよう」「いや酒肉祭だろう」「それだ!」


 服部先輩から娯楽値が足りないからと、頼まれていたことでもある。

 なんか領地の経営を数値化しているらしい。

 シュミレーションゲームかな?

 ドロップアイテムを受け取っているので、それで交換してきてほしいと頼まれていた。


 まぁみんなが楽しそうでなによりだ。

 

「皆ノ者、肉ハモッタカーイ?」


「もったよー!」「クレハもったー!」


「デハ、カンパイ!」


「「「カンパイ!!」」」


 きゃっきゃと、小さい子供たちと遊ぶクレハ。 

 小学校から避難してきた子供たちも多いのでわりと小さい子も多い。

 外国人だからかそれとも忍者だからなのかわからないが、クレハは子供に大人気のようである。 すでに東雲東高校に馴染んでいる。

 なんなら俺より馴染んでいるのでは?


「俺も忍者になりたい!」「私もー!!」


「ヌフフ! ミンナ、クレハニシタガウデース!」


 皆、遊んでくれるお姉さんができてよかったね……!



◇◆◇



 

 「肉に溺れるか、若いな」


 深夜の屋上で金髪モヒカン半裸の男が呟く。

 『藤崎女子高校』の校舎から漏れてくる音への呟きだ。

 戦闘で昂った高揚を精力として発散しているのだろう。

 種の生存本能でもあるゆえ仕方ない。


「……ふふふ」


 ジェイソンはアゴに手をやり撫でる。

 なにかを思い描くように笑う。

 実に楽しそうである。

 世界が滅茶苦茶に変わってしまったのに、実に楽し気に笑っている。


「戦乱の時代。 来るべき時に備えよ」


 生まれる時代を間違えた。

 何度も言われたことでもあり、自身でもそう思っていた。

 しかし、違った。

 今この時の為に、自分は生まれてきていたのだと理解する。


 風に流れる金髪が躍っている。


「ジェイソンさん、いつ頃になりそうか?」


「そうだな。 二月もあれば十分に戦えるだろう。 それまでに整えておいてくれ」


「承知した」


 去っていく忍者をジェイソンは視線だけで送る。

 

「……囚われているな」


 『鬼鳴村』の忍者たちはあの土地をとにかく重要としていた。

 一時的に放棄することはあっても、必ずかの地を取り戻す。

 長きに渡り時代錯誤の忍者を続けてきた彼らの想いは強い。

 ジェイソンとしてはあの地にそこまでの思い入れはないのだが。


「最後の忍者の隠れ里。 ……復活にはふさわしい場所か」


 



――――――――――――


明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いしますm(__)m


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