二百十話:これが……!


 『監禁王の洋館』がチートすぎる件。


 洋館内の設備は魔道具である。

 魔石を動力に作動する。

 メインの核となる魔道具に補充すれば全体に作用する形だ。

 小さな領地みたい。

 

「あーー涼しい……」


 プールもあるし洋館内は冷房が効いている。

 ジメジメした日本の夏が始まってしんどい東雲東高校とは比べ物にならない。

 なにしろ向こうは電気が止まっていて扇風機すらないのだから。

 熱中症に気をつけないとね。


「うーー帰りたくない……」


 広間のソファでミサがだらだらと過ごしている。

 他の三人は元気に艶々として帰っていったのに。

 なんなら『ブラックホーンバニー』をスーツモードにすれば快適だろうに。

 まぁぴっちりして体のラインが出るからあまり人のいるところでは着づらいだろうけど。


「あーー働きたくない……」


「……」


 あの凛々しかったミサはどこにいったのか?

 まぁ人間ダメな日もあるよな。

 飲み過ぎて二日酔いのOLみたいだ。

 裏バニーで強制ご奉仕でもしてもらうか?


>>>裏バニーを発動しますか?


 しないよ、冗談だよ。 反応はやいよ?

 昨日のでSPは満タンだから。

 たまにはゆっくりするのもいいだろう、休日は大事だ。

 

「んっ、いってらっしゃい、シンク」


「うむ」


 ミサの少し伸びてきた髪をひとなでし洋館を後にする。

 藤崎市のショッピングモールに繋がる個室から出る。


 ダンディな猫主人の【猫の手】でお買い物。


「ラインナップ更新だ。 オークシリーズ装備、キャブラキ、オージナーが解放された。 おめでとう、人族。 これからも御贔屓に」


 ダンディボイスで仕事をこなす猫の店主。

 ぷにぷにが黒くておひげみたいで可愛い。


 しかし相変わらず名前からではなんの料理なのか見当もつかない。

 装備についで食料を開放してくいくあたり、こちらの事情を予想していたのか。

 それとも状況を見てから決めているのか。

 とりあえず買ってみる。


「ふむ」


 キャブラキは葉に包まれた何か。

 なんだろう、独特の香りがするけど美味しそうだ。

 パタラシュカは当たりだっただけに期待が持てる。


「おお!」


 デカイ串焼きだ。

 串焼きというにはデカイ。

 チキンステーキを串に刺したような感じで、ちょっと黄緑色の香辛料が塗りたくられている。

 お肉様だよ。

 

「うっま!」


 思わずかぶりついた。

 柔らかい。

 ほろりと、肉が口の中で溶けていく。

 鼻孔を突き抜ける香辛料の香り。

 久しぶりの肉の旨味に、体が歓喜する。

 痺れるほどの美味さだ。


 ガツガツと、無心に食べる。


「はぁぁ……」


 これはヤバイ。

 大当たりだ。

 美味しい上に大きいから一本でも満足できちゃうな。

 まだまだ食べたいけど。


「壺」


 オージナーは壺だった。

 中に液体が入っているようでちゃぷちゃぷする。

 蓋を開けると酒精を感じる。


「ほう……!」


 グラスに掬ってみると、薄黄緑色の液体だ。

 なかなかに酒精が強そうである。

 マーマンマサトとは違い甘ったるい感じはしないな。

 こちらは夜にとっておくか。

 今日はまだお酒を飲むには時間が早い。


「いっぱいだねぇ~」


 屋上から街を見下ろす。

 ミニオークどもがわんさかといる。

 侵攻拠点を作るようなのか物を運んでいた。

 

「エヒヒ?」


 俺はミニオークたちの集団の前に降り立つ。

 突如現れた俺に困惑するが、すぐ敵だと気づいたのか襲い掛かってきた。

 手に持っていた棍棒が俺に振り下ろされる。


「エヒッ!?」


 まるで壁を殴ったかのように跳ね返されたミニオーク。


(まったく痛くないな)


 実験として殴られてみたが、まったく痛くもないし衝撃も幼女に殴られた程度だ。


「ふはっ」


「エヒエヒッ!!」


 思わず笑ってしまった俺に侮辱されたと勘違いしたミニオークたちが一斉に襲い掛かってくる。

 俺は新装備が動きを阻害しないことを確認しながらミニオークたちを屠っていく。


 SSR『ブラックホーンナイト』。

 

 『排出率アップガチャ』から出た新装備である。

 なかなかにカッコイイ全身鎧。

 ちょっと恥ずかしかったピッチりスーツの上から装備できるのでありがたい。

 つまり『ブラックホーンオメガ』を装備した上から装備できるのだ。


「ははっ」


 イメージとしては暗黒騎士の鎧って感じかな。

 無防備だった素手もしっかりとガードされている。

 上半身はタイトでスタイリッシュなんだけど、動きを阻害しない不思議。

 ベルト辺りは少しふくらみ脚を守るようになっている。

 不安だった防御面をカバーできた。


「ははっはははは!!」


「グコココ!?」


 重装備が宙を駆け大剣を振るう。

 一方的な雑魚狩りが始まる。

 魔物の多い方へと向かっていく。


 放置自動車に踏み台にすると、『ボゴッ』と凹んでしまった。

 自分では気づかないが、ひょっとして重量が結構あるのかな?

 攻撃したミニオークが跳ね返されたのもそのせいか。


 屋根上パルクールするときは気をつけないとだな。

 

『GYAEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』

 

 侵攻拠点に近づくと巨大な猪の化け物が現れた。

 天を突くように生える太く鋭い逆牙。 さらに頬の横からもこちらを串刺しにしようとする太い角が生えている。 あれも牙なんだろうか?

 太陽のようなオレンジ色の鬣は背中まで続いている。

 怒れる巨猪の怪物が突っ込んでくる。


 猪突猛進!


 ミニオークを蹴散らしながらもの凄いスピードで接近してくる。


『GYAEE!!』

 

 短い咆哮と共に紫電が飛ぶ。

 先行放電が体に当たった瞬間、バチッ!と体に電流が流れる。


 巨猪の顔が愉悦に歪み突進から頭を振り上げ突き上げてくる。


「はぁああああ!!」


『GYAE!?』 


 しかし、前回と違い俺は体が硬直することなく、大剣を巨猪の眉間に叩きこんだ。

 巨大な質量の突進。

 普通だったら押し負け吹き飛ばされるが、俺は耐えた。

 ぐぐぐっ、と『ヴォルフライザー』を握る両手に力を籠め弾き返す。


「『黒閃』!」


 弾き返され無防備をさらす巨猪の胴体を真っ二つにする。

 硬い背中の毛皮と違い腹は柔らかかった。

 そこが弱点か。


「はは」


 弱点だった、雷撃。

 それをベルト部分のふくらみが伸び地にアースのように接続し受け流した。

 さらに地と固定されたことで突進にも吹き飛ばされず耐えることができた。

 軽快なのに重装備としての役割まで果たすかよ。


 これが『ブラックホーンシリーズ』の本領か!?


 俺は勢いに乗って侵攻拠点を蹂躙する。






――――――――――――


いつもお読みいただきありがとうございました!

今年の投稿もラストです。

来年もよろしくお願いしますm(__)m


さぁ仕事納め行ってくるか~~('ω')

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る