二百七話:


 大人たちの汚い心が浄化されていく。


「はっ! はぁつ、楽シイデェス!」


 金髪サイドテールの外人美少女ロリっ娘が元気に運動をしている。

 忍術修行の為に即席で作られた訓練場。

 立てられた丸太の上を器用に飛びながら少女は跳ねる。

 下から忍者たちの突き出す棒を回避しているのだ。

 凄いバランス感覚だ。


「凄い」


「これがアメリカか……」

 

 跳ねる。

 今日のクレハはタンクトップにホットパンツだった。

 NINJYA衣装は洗濯中だ。

 揺れる、揺れる、揺れる。

 男たちの視線も上下に揺れる。


「余裕そうではないか? ウエイトを追加してやろう」


「ぐぅうううううううう!?」


 両手に水の入ったバケツを持ち両腕を上げていた男。

 下半身はスクワットの形を維持しておりなかなかにキツイ体勢だ。

 ジェイソンが追加の重りを両腕と太ももに巻いていく。


「ウエイトは常に着けていろ」


 筋肉が足りない。

 なにわともあれ筋トレだ。

 忍者修行に耐えられるだけの肉体を作ることが前提。


「クレハ! 走り込みだ!」


「ハイ! マスター!」


 まだ体のできていないクレハには重りは無し。

 男たちは必死についていく。

 

「おい」


「まじか……?」


 クレハの後を走る男たちがヒソヒソと話す。

 前を走る幼女の背が汗で濡れてタンクトップがぴったりと張り付いてる。

 しかし映るはずのものが映っていない。


「どうにか正面にいって……確認しなければ!」


「うおおおおおお!!」


「Oh!? ナイスガッツ! 負ケヌデェス!!」


 あらゆる手を使い修行の効率を最大限に上げる。

 ジェイソンの鬼畜忍者修行が始まった。


「くはぁ、はぁあ、もうだめだぁ……」


 限界まで酷使される体。

 肺が酸素を求めている。 口の中が気持ち悪い。 

 もうやめたい。

 男たちの軟弱な精神が弱音を吐く。


「ハーイ! ウォーターデェス!」


「っ、せんきゅー!」


「アハハ! オモロ顔デェス!」


 染み渡る。

 渇いた体に水が、渇いた心に無垢が。

 浄化されていく。


「……頑張るぜ、俺はよぉ!」


「……俺もな!」


 辛い忍者修行で体内の毒素をすべて吐ききったようだ。

 吸い込む空気は清々しい。


「食事だ」


 ドン!とテーブルに乗せられた大量のママノエと紫イモムシの塊。


「んあ!?」「ばかな!?」「多すぎるよ!」


「強くなりたければ、喰らえ」


 最強コスパの筋肉食材。

 修行で消費した以上に取らねば、痩せてしまう。

 強くなりたければ喰うしかない。

 筋肉こそもっともシンプルな強さへの道なのだから。

 頑丈な肉体を手に入れればさらに辛い修行にも耐えられる。

 細かいテクニックはその後だ。


「くっ、殺せ。 いっそひとおもいに……」

 

 辛い日々が続く。

 いっそ殺せと筋肉痛とパンパンの腹に悲鳴を上げながら彼らは頑張った。

 少しづつ変化していく体を見ながら。

 彼らは必死に耐えた。

 


 そして夏はやってきた。


「プール、最高デェス♪」


「「「――――ひゃっはーー!!」」」


「ヒャッハー!」


 水着の金髪巨乳ロリと楽しむプール。

 辛い修行のご褒美。

 飴と鞭。


「ふむ。 そろそろ使い物になるか?」


 師から弟子である彼らにプレゼント。

 お揃いの現代忍者装備だ。

 黒に統一された屈強な男たち。


「行くぞ!」


「「「ハイ! 師匠!」」」


 目指すは藤崎市。

 ジェイソンは神駆から依頼された『藤崎女子高校』の安全確保に向かう。

 

 若き忍者の後ろを忍者たちがこっそりとつけていく。

 

「ジェイソンさん」


「うむ。 焦るな。 まだ早い」


「はっ」


 ジェイソン、丸くなったな。

 神駆は無償で忍者修行をつけるジェイソンを見てそう思った。

 少女にも優しく避難所の人たちにも親切にしていた。

 胡散臭いと思いつつも歳だしなと納得させていた。


 だが、そんなわけがない。

 だってジェイソンだもの。


「く、くく、実にいい手駒だ。 この調子で増やすぞ」


 『天上天下唯我独尊』を地で行く男が無償で面倒ごとを引き受けるわけがない。

 

 目的の為、ジェイソンは忍者軍団を作り上げるのだ。



◇◆◇



 眼福である。


「シンク君、どう似合う?」


「似合いますか? シンクくん?」


 水着がはちきれんばかりの双丘が目の前に近づいてくる。

 

 エメラルドグリーンのビキニを着た玉木さん。

 使用者にジャストフィットするはずのガチャ産水着なのに、少し小さそうだ。

 胸元からウエストに紐が巻かれているのがなんかエロい。


 水色と白のふりふり水着の木実ちゃんは天使のようである。

 もとから天使みたいだけど余計にね。

 スカートとも言いずらいそのふりふりはなんの意味があるのだろう。

 ただただ男子の欲棒を漲らせるだけでは?


「似合う」


 『監禁王の洋館』。 その庭園にはプールがあった。

 橋の先の風景は見えるが、結界で覆われたように途中から行くことができない。

 そういえば鍵の使い方で一つ裏技を見つけた。

 マスターキーで洋館に入り個室の鍵で個室から出ると、個室の鍵を使った場所にドアが出現する。 限定的なワープが使えるのだ。 これを利用して藤崎市のショッピングモールに簡単に行けることが判明した。 『キャメドーの卵』を買うのに便利。

 

「……また、大きくなった?」


「え? そんなことないよ? たぶん……」


「……この世は理不尽」


 ミサと葵が現実逃避しながらプールに浮かんでいる。

 胸がなくてもちゃんと浮けるらしい。

 ミサの日焼けした小麦色の肌に赤い水着が映える。 やはり少し小さいのかハミ尻からこぼれる白い肌がエロイ。  


 葵は……。


「シン……似合う?」


「似合う」


「ふふ……好き、でしょ?」


 『排出率アップガチャ』によって大量に出た水着たち。

 皆には好きなのを選んでもらったけど、葵が選んだのは『白スク(旧型)』だった。

 マニアックすぎるだろ。


 まぁ、嫌いじゃないけど?





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