二百五話:間違っていたのか……?
これが絶望か。
「嘘だろ……?」
50連続白……つまり最低ランクのコモン。
これはキツイ。
すでに5000魂魄ポイントが下着の山に消えた。
ちなみに水着も出たよ。
夏だからかなぁ……。
(間違っていたのか……?)
正解は当たり確定天井ガチャだったかもしれない。
筐体の中の個数が減るということはSSR以外にもSRも出やすくなる。
それにCランクの数も減っていくということ。
例え確率が調整されようともそちらのほうが良かったのでは?
いやそもそも調整されない優良ガチャもあるが。
でもきっとこのガチャは優良ではない気がする。
「ふぅぅ……」
落ち着け。
思考がマイナスに向かっている。
UCとRがないんだ、50回Cが続くこともあるさ……。
『ガチャSR以上排出率UP(3日)』さん仕事してください、お願いします!
ビークール……。
冷静に、気合を籠めろ……!
「カァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
せいっ!と筐体をタップする。
フードを被った白猫さんが筐体のレバーを下げる。
マントを羽織り腰に短剣を差している。 装備の感じから盗賊かアサシンか?
何猫かわからない。 野良猫みたいだ。
「えっ!?」
確定演出か!?
さっきまでまったく仕事をしていなかった盗賊猫さんが筐体に何かしている!
「いけっ!」
頑張れっ!
「っきた!」
心臓が跳ねる。
赤色のカプセルが排出された。
久しぶりの白カプ以外に脳みそがバグりそうになるほど何かを分泌している。
「おおっ」
盗賊猫さんが華麗に短剣二本で赤カプセルを斬りつける。
羽が舞い散り発光と共に俺の前にアイテムが具現化されていく。
「おお……?」
トランクケース?
それほど大きくない、レトロというか魔法使いが持っていそうなやつ。
魔法陣のような文様が刻まれ所々に宝石がついている。
中を見て見ると杖と魔法書、それにカードと瓶が入っている。
「あれ?」
中身を取り出すとさらにアイテムが出てきた。
ローブととんがり帽子。
さらに箒まで。
これは……。
「魔法使いの鞄?」
マジックバッグ、しかも中身入り。
どの程度の性能を秘めているかわからないが、葵にプレゼントするか。
「ふぅ……!」
安堵のため息を漏らし、俺はソファに深くもたれかかる。
今は『監禁王の洋館』その自室にいる。
自室はみんなに上げた部屋よりも大きく、壁や家具は木が使われていて映画の中の部屋のようだ。
高級そうな絨毯を汚さないようにしないと。
ネペンデス君のジュースで喉を潤す。
先ほどまでの高揚感がさっていく代わりに体に染み渡る酒精。
「髪、切るか」
ベルセルク化した影響で伸びた髪。
銀と青を混ぜたような綺麗な髪色。
しかし今はところどころ、焦げて変な色になっている。
「……」
『獄炎のケルベロス支配地域』で出会った魔物を思い出す。
もはや魔物といっていいのかわからないレベルの敵だったが。
「魔人」
その言葉が合っている。
『獄炎のケルベロス支配地域』で初めて出会った犬型以外の敵。
燃え盛る炎の魔人は強かった。
駄犬狩りを続ける俺の前に現れたそいつ。
本能が危険だと警報を鳴らす。
カッ、とかざした手が赤く光る。
俺は『ヴォルフガング』の指輪に溜まったエネルギーを、漆黒の斬撃に変えて乱射する。
豪炎と漆黒の衝突。
遮られた視界。 結果を確認せず爆炎の余波に背中を焼かれながら俺は全力で逃げる。 見逃してくれくれたのか警戒したのかわからないが追撃は来なかった。
「強くなってるよなぁ……」
駄犬だけじゃない。
アンデット系も強くなっている。
以前に見た中継拠点はもはや要塞と言っていいほどの完成度だった。
順調に堅実に勢力を伸ばしている。
アンデットの癖に堅実とか厄介だな。
実は一番危険な敵なのでは? 静かなのが不気味なんだよね……。
「ん?」
シャム太が剣を持って任せろと、胸を叩いている。
いつの間にか出てきてるし、思考も読まれているのか?
というかその剣で髪を切ってくれるのかな?
おもちゃの剣だよね。
まぁやれるというなら散髪は任せるが。
「ほう?」
ノズ。 新しく仲間になったエキゾチックショートヘア人形。
魔法使いのような恰好をしたノズが魔石を鞄の宝石部分にあてて吸収させている。
どんな意味があるんだろうか……?
「続き」
2体の人形が好き勝手する中でガチャを続ける。
魔結晶は手に入らなかったが、そこそこ魂魄ポイントは手に入った。
まだまだ回しますよ。
『排出率アップガチャ』。
「ふぅっ、――――はぁああああああああああああ!!」
結局のところ『当たり確定天井ガチャ』にしなかった最大の理由は、URがでないということ。
ガチャ狂いはURの夢を見る。
出ないかもしれない。
でも、出るかもしれないが重要だから。
最高ランクを狙え!
「きええええええええええええええええええ!?」
久しぶりに俺はガチャを楽しんだ。
◇◆◇
品の良い清楚な制服。
チェック柄のスカートが可愛く県内でも有名なお嬢様学校の制服だ。
「お久しぶりです、シンクさん」
「ベルゼくん、おひさ~!」
おしとやかな黒髪の美少女と快活そうなツインテールの美少女。
街中で見かければ誰もが見返すほどの二人。
ツインテの腰に差す刀が異質さを際立たせる。
「あれ? 茜ちゃんだぁー! おひさ~!」
「仙道さん。 ……久しぶり」
和やかな空気が変わる。
二人の間で空気が弾ける。
「あは。 茜ちゃん、強くなったね~~! どう? 今からヤらない?」
「構わないよ」
ポニーテールの美少女剣士から発する剣気。
以前とは比べるまでもなく剣士だった。
普段冷静な九条がいつになく熱い。
「九条さん、まってまって!?」「美愛さんやめなさい」
一触即発の会議室。
面白くなってきたと神駆はニヤニヤとしている。
不気味だ。
「久しぶりだな、シンク君。 娘から聞いているよ、頑張っているんだね」
「……」
何を?
そう問いたかったが、神駆は鹿野警部補の握手に応えるしかできない。
ミサはたまに話を盛る。 悪気はないのだろう。 ついつい父親にシンクのことを大袈裟に話してしまったのだ。
「「……」」
クラフトワークスの代表者。
どこかで見たような見たことないような。
神駆は思い出そうとするが思い出せない。
対する代表者もあの頃とは全然違う神駆に『死神のお客様に似ている』と既視感を覚えていた。
無理もない。
出会ったときはタキシードで宙を浮き金髪アフロだったのだから。
今は蒼銀の髪をツーブロックにしウルフヘアにしてる。
ツーブロックの垂れた髪を上げると、ウルフの模様が刈り込まれている手の込みよう。
シャム太の仕業だ。
やつは剣士ではなくカリスマ美容師だったのだろうか。
「それでは、始めましょう」
『東雲東高校』、『神鳴館女学院付属高校』、『クラフトワークス』、代表者2名と神駆による会議が始まる。
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