閑話:鳥居流小太刀術
『神鳴館女学院付属高校』の図書館で一人の少女は調べ物をしている。
「原初の人、完全体、混沌……相反する言葉ですわね……」
哲学的ですわ~と嘆くボブツインテールの少女。
「黒い羽に中性的な人形のような顔だち……天使のようです」
最近お友達になった子の体について調べている。
しかし抽象的で哲学的なことしかわからない。
「うーん……これ以上調べても無駄ですね」
もはや常識などなんの意味もない。
過去の文献に解決方法など見つからないだろう。
『鳥居 円』はお友達の悩みは自分で解決するしかないかと、図書館を後にした。
しかし難題である。
父や母ならひょっとしたら分かるかもしれない、しかし今のこの状況では遠い実家には帰れない。 円は頭を悩ませつつ歩いていく。
「やぁ、円。 どうしたの? 元気がないね」
「リョウ様……その、格好は?」
「ああ、これ? なんか皆に色々着せ替えさせられて……」
リョウの格好は随分と変わっていた。
神駆と共に来た時は黒ずくめの不審者スタイルだったが、今ではチェック柄のズボンとシャツにニットベスト、それに黒いネクタイまでつけており、学生のようだ。
その背の黒い羽さえなければ。
「男子用のズボン? 女子高なのになんで……」
「学園祭用とか言ってたよ?」
女子生徒のチェック柄のスカートと同じ柄のチェックズボン。
中性的なリョウに似合っている。
まさにイケメンである。
お姉様方がきゃっきゃと着せ替え人形にしてストレス発散していたのは言うまでもない。
カメラがないことに絶望するまでが変態セットである。
「まったく、皆さんはしゃぎすぎですわ」
中性的な顔立ちイケメンな年下の男の娘。
生徒たちの混乱を防ぐため、『一ノ瀬 栞』によってある程度は伝えられている。
当然箝口令は敷かれているし、一般の避難民の方は知らない。
「円、今日も訓練お願いしていい?」
「もちろんですわ」
「やったぁ!」
円とリョウの訓練。
それは、鳥居流小太刀術の伝授であった。
二人は体格が似ている。
背は低く華奢である。
円の小太刀を使った技を見てリョウがぜひ教えて欲しいと頼み込んだのだ。
リョウの生成できるフェザーダガーも小太刀程度の大きさだ。
マチェットのような形だが応用はできる。
「わわっ」
翼人となり身軽なリョウよりも円のほうが軽快に動く。
実際の身体能力はリョウのほうが上だが、身体操作を用いた緩急の差によって翻弄される。
リョウの攻撃を躱す円は回転し小太刀で撫でる。
「無暗に突かない。 突くとしても側面か背後ですわ」
「はいっ!」
円の訓練は厳しく、的確な言葉が飛び交う。
口下手の神駆や感覚派のツインテにはできない指導である。
「常に動いて相手の隙に入る。 リョウ様の武器は瞬間的に出せるのでしょう? 最初から見せるのはもったいないですわ。 仕留める瞬間にだけ出せばよいのです」
「瞬間だけ……」
「身体操作が重要ですわ。 体術も鍛えましょう?」
あざと可愛いボブツインテールの少女はスパルタであった。
「おおっ!? 楽しそうなことしてるねっ、私も混ぜて!」
「美愛お姉様っ!?」
「うわぁあ!?」
乱入してきたツインテールを交え1対2の訓練が開始された。
橙色に輝くオーラを纏い無双するツインテ。
最近絶好調の彼女は加減を知らない。
終わるころにはボロボロの二人ができあがる。
「うぅ、お姉様酷いですわぁ……」
「ぐぅ……もう一歩も動けないよぉ……」
「あはは……やりすぎちゃった?」
疑問形ではなくやりすぎである。
ボロボロのぼろ雑巾のようになった二人を担ぎ、ツインテは歩いていく。
魂魄ランクも上がりパワーも上がっている。
軽い二人を担いで歩くくらいなんともなかった。
だいぶ女子高生をやめてきているが、重たい狛犬像を平気で担げる神駆に比べればまだ人間味は残されている。
「ほーい、ご飯の前にお風呂行こう!」
「っ! 美愛お姉様のお背中を流すのは円のお仕事っ、誰にも譲りませんわぁ……!」
「ええっ、美愛お姉ちゃんも一緒!?」
リョウは特殊な事情もあり今のところ円としかお風呂は入っていない。
ツインテも聞いてはいるがまったく気にしていない。
というか忘れているのでは?
「まてまてまってーー!」
「
うん、やはり完全に忘れているツインテであった。
――――――――――――
美少女3人でお風呂……。
紛れ込む1本の運命や如何に('ω')!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます