閑話:怪しいバイトの誘いには気をつけろ
『東雲東高校』。
世界の異変が始まった当初から魔物の襲撃を受け続けた激戦区。
縄張りを争うように野犬と魚頭の魔物の襲撃は繰り返されていたが、生徒たちの必死の抵抗により学校を守り切ることに成功する。
また周辺住民の避難所としても活躍し、避難してきた人々共に共同生活を送っている。
「しかし、素晴らしいなココのトイレは」
「知ってるか? また新しくトイレに機能ができたの」
「なんだ? ウォッシュレット機能でもついたのか?」
周囲の避難所。
魔物に襲われていた小学校や公民館などからも、『鬼頭 神駆』たちの活躍により多くの人たちがやってきている。
彼らは一様に感謝し、『死神救助隊』への崇拝を忘れない。
避難所の人たちの信仰心も高い。
それは避難所の運営に大きく貢献していた。
時たま増長する者も現れるが、優しくおわかりいただいている。
ママノエの踊り食いや最近手に入るようになった紫イモムシの踊り食い。
どちらもたんぱく質に優れ筋力の源になる。 その他の栄養価にも優れている。
不穏分子の調教や東雲東高校の戦力強化に非情に役立っている。
これに加え『木実ちゃん特製元気水』によってご老人たちも元気を取り戻した。
雑事や戦闘にも積極的に参加し魂魄ランクの上がった今では大きな戦力となり東雲東高校を影で支えてくれている。
本人たちも体の機能はもちろん脳の機能も活性化し若返りの効果もあると、今では誰よりも積極的に魔物を狩っている。
「ああ、なんか美味しい果物が手に入るらしいんだ」
「はぁ?」
「いや、なんでトイレの隣にあるのか不思議なんだが……。 いつからかトイレの隣に緑で出来た電話ボックスみたいな四角いボックスができててな? カウンターみたいなところに木製の板があってこう書かれているんだ」
「なんて書かれてるん?」
「『ネペンデスノ実ハンバイシマス。 一ツ魔石10コデス』って」
「なんでカタコトなの?」
順調に魔物を退け避難所生活は軌道に乗り始めたが問題も残っている。
ライフラインの断絶。
それは電気水道ガスはもちろん物流も止まる、電話やインターネットすら使えない。
水道に関しては木実の『聖水』の能力によって川の水を飲み水へと変える反則技によってなんとか賄っている。 もしそれが無ければ、飲料水を確保する為にろ過や煮沸をする必要があっただろう。 それに『木実ちゃん特製元気水』は活力も漲らせてくれる。
ちなみに東雲東高校では利用されていないが【猫の手】でも水は買える。
周囲の施設から集めてきていた物資も減り始めている。
特に趣向品に関しては厳しい状況であった。
物流が止まれば当然だ。
皮肉なことに魔物の襲撃に事欠かない東雲東高校は【猫の手】によって食料を賄うことに成功している。 ママノエ瓶は高コスパの最強食材である。
「知らないけど。 ただその実がめちゃくちゃ甘くて美味しいらしい」
「へえ! 食べてみたいな……でも魔石10個か」
【猫の手】の主人曰く、世界で初となる領地化を果たした東雲東高校。
新領主『服部 慎之介』による手探りの政策が行われている。
領地には様々な機能が存在する。
領地の核となるルベライトの魔結晶の置かれた校長室で、日夜服部は唸りつつ頭を捻っている。 九条に似た紅の瞳の少女が半裸でよく服部を誘惑している。 机の下にもぐっていったい何をしているのか問いただしたい。 まるで執筆中におやつを強請る猫のようだ。
服部の指針としてはまずは戦力強化、そして防衛力強化。
魔物の脅威を直に知る服部の選択といえる。
しかし、領地には娯楽が足りない。
神駆のもたらした『マーマンマサト』と呼ばれるお酒で大盛り上がりする領民たちを見て、服部はさらに頭を悩ませ校長室で頭を捻らせる時間が増える。
「そうなんだよなぁ。 基本的にドロップ品は共有保管だろ? どうしたものか」
領地化に伴い1万クレジットを貯める必要があった。
それに武具やポーション類、食料品を購入するにあたり、ドロップ品は一度徴収される。
普通なら不平不満は起こりそうなものであるが、一切なかった。
あったとしても決して表にはださない。
万一にも追放されては困るとよくわかっているから。
一番貢献しているであろう神駆がその辺無頓着というのもあるか。
また戦いに赴く自分たちを応援してくれる声も素直に嬉しかった。
「「う~ん」」
課題は多い。
若き新領主が疲労で倒れないか心配である。
「お困りかしら?」
「「玉木さまっ!?」
悩める若者たちに艶やかな声が掛けられる。
聖銀のネックレスを胸元で光らせる爆乳エルフさん。
東雲東高校最大派閥ママノエ教団の教祖、『玉木 由佳莉』だ。
神駆に助けられてその人柄に惚れ、今では立派な神駆の狂信者。
神駆第一主義者のやべぇ人である。
全ての雄を魅了する笑みを浮かべ穏やかに悩みを聞くエルフさん。
「なるほど。 それならバイトはどうかしら?」
「ば、バイトですか!?」
「そう、簡単な、肉体労働よ?」
「「ごくり……!」」
露出度の高いフェアリードレスを着た爆乳エルフたんから簡単な肉体労働のお誘い!?
若い男たちが乗らないはずはなく、コバエホイホイのように簡単に馬鹿な男たちが釣れる。
入れ食い状態である。
「うふふ。 じゃ明日からお願いね?」
「「はいっ!!」」
お給料は弾むわ。と言い残し玉木は去っていく。
「あー緊張した」
「だなぁ。 なんかどんどん綺麗になっていない? 玉木さん……」
妖艶さが増している。
首辺りまでのふわりとしたショートヘア。 ほっそりとした白い首筋。 魅惑的なうなじ。
見るもの全てを魅了する美しさがそこにある。
「玉木さんのバイトか、一体どんなエロイことが!」
「いやエロとは限らんやろ!」
そう言いながら若い男二人は妄想を膨らませた。
しかし待っていたのは非情な現実である。
「皆の者! 野外清掃活動に集まってくれて感謝なのじゃ! これより、東雲地区から工業地区までの清掃作業を行うぞい! 敵が現らわれることも想定されるからのぉ! 十分に注意して作業に当たって欲しいぞい!!」
「「「「……」」」」
「返事はどうしたのじゃああ! 元気がないぞぉおおお!!」
「「「「「くそぉおおおおおおおおお!」」」」
「わっはっはっはーー!!」
野外清掃活動。
世界の異変の影響によって放置車両は溢れ、ゴミは溢れかえり雑草は生い茂っている。
管理する政府は機能していない。
やるのは地域住民しかいない。
放置すれば悲惨なことになるが、領地の外は危険がいっぱいである。
「目指すは倉庫街じゃ! 皆の者っ、先は長いぞい、気合を入れーい!」
先日大所帯となった『クラフトワークス』。
鹿野警部補への支援の目的もあり後々を考え交易路を確保する狙いだ。
神駆の多少の援助に巻き込まれる東雲東高校。
シルバー人材を豊富に抱える『
「差し入れにアマミク様のおにぎりもあるからの! 楽しみにしておくんじゃぞおおおおお!」
楽しい楽しい昼食が待っている。
みんなは張り切って作業に勤しむのだった。
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