百四十一話:ラインナップ更新

 俺はガチャの試練から解放された翌日、猫の万屋『猫の手』にやってきた。

 『猫の手』の主人、帽子を被ったアメショ猫は俺を見るなり拍手を送ってくる。


「素晴らしい」


 肉球なのにパチパチパチとちゃんと拍手の音が出る不思議。

 まぁ日本語をちゃんと喋ってる時点でなにかしらの翻訳魔法的なのが存在するんだろうな。

 というか魔王より流暢、うん俺より流暢に喋れるよね。 

 イケボだし。


「まさかロードを討伐するとは……。 私の助言など人類の可能性の前には無駄でしたな」


 感服いたしました。と、お辞儀するアメショ猫。

 なんで倒したこと知ってるんだろう?

 

「黒の魔皇帝の想定を超えてくるとは……クフフ! 実に愉快っ、愉快ッ!」


「っ!?」


 急に本性ださないで!?

 葵に着ぐるみと言われた時のような殺気、怖いなぁ。

 クールぶっているけれど、実はバトルジャンキーなんじゃないのか?


「おっと失礼しました。 今日はお嬢様方がいなくてよかった、また粗相をされてはかないませんからねぇ。 黒の魔皇帝もまさか魔王がこれほど早く討伐されるとは思っていなかったようで、大変喜んでおいででしたよ」


 黒の魔皇帝に会ったのか?

 裏方って言ってたから連絡くらいはつくのだろうか。

 

「まぁ想定外の事象に現在対応中で大変そうでしたが……クフフ! さて、今日は何をお求めですかな、救世主?」


 称号を見られている。

 鑑定持ちですか?

 まぁもういいや。 

 乱獲祭でだいぶ貯まったドロップアイテムの買取をお願いします。


「ずいぶんと溜め込みましたねぇ。 一定以上のドロップアイテムを売却頂きましたので、アイテムのラインナップを更新しますね」


 ラインナップ更新は嬉しい。

 中級ポーションは助かったし、ワイルドソーセージはクセはあるけど大人気だ。 ドッグキャンデーはご禁制のままだが。

 

「マーマンシリーズ装備、パタラシュカ、マーマンマサトが解放されたよ。おめでとう、人族。 これらからも御贔屓に」


 おお!

 なんだかよくわからない物が追加された。

 うん、なんだか外国のそれもアマゾン地方にでもありそうな名前だ。


 マーマンシリーズ装備は深緑色のレザー装備。

 ワイルドドッグシリーズと違って、軽装だ。

 鱗の胸当てとか要所を守る感じ。 うちのメンバーだと葵のローブの下に着てもいいかなぁ?


「マーマンロードの支配地域だった場所を探索してみるのも、面白いかもしれないねクフフ」


 買い物を済ませ出ていこうとすると『猫の手』の主人はぽつりと呟いた。

 振り返ると帽子を深くかぶりドロップアイテムを整理していた。


「……」


 妖しい猫である。



◇◆◇



 『ブラックホーンシャドウ』は最高だ。

 自分の足で走るではなく高速で移動できる。

 車を運転するってこうだよね。

 以前に軽トラを動かしたけど、あれはなんか違う。

 うーん、風を切って走る。

 バイク315ーー!


「ヒャッハー!」


「うあっ!?」


「ひいいい!?」


 ちょっと調子に乗って爆走していたら、狩りをしていた東雲東高校の人に遭遇した。

 恥ずかしい。

 まぁ空中走ってるんで轢くことはない。 

 でも気をつけよう。


「おかえりさない、シ、シンクくん!」


「おかえりなさい、シンク君」


 東雲東高校につくと、玉木さんと木実ちゃんが駆け寄ってきてくれた。

 超巨乳美女二人のお出迎えである。

 すごい。

 揺れが。

 そしてそのまま両手に押し付けられる至高。


「急にいなくなるから心配しましたよ?」


「私たちも一緒にイクからね?」


 照れてる木実ちゃん可愛い。

 耳まで真っ赤でその薄い桜色の唇をちょっと拗ねてますよとアヒル口になってる。

 チュウしてもいいかな?

 ダメか。

 玉木さんから凄い良い匂いがする。

 ふわりとした髪の隙間から空色の瞳が見つめてくる。

 もう離さないといわんばかりに腕をギュッとしている。

 

 色々心配かけてるよなと、反省。

 報連相は大事ですよねと、猛省。


「おかえり、シンク。 ……その危険物をしまいなさい」


「おかえり……シン」


 葵とミサ。

 ミサよずいぶんと可愛い格好をしているな?

 兎耳似合うよ。

 葵は巫女系魔法少女を目指しているのかい?

 巫女服はチッパイでも似合うよね。


「……後で特訓ね」


「……」


 なんかジト目で特訓宣言。

 なんの特訓ですかっ!?

 葵ちゃんの温泉特訓思い出しちゃうから昼間からはよろしくない。


 ミサから危険物、『ブラックホーンシャドウ』を仕舞うように要請がきた。

 ちょっとうちの相棒が調子にのったからすまんな。

 手加減するように言っておくので、またSP補充お願いします。

 買い込んできた荷物を降ろし、『ブラックホーンシャドウ』を戻す。


「わわっ、いっぱいですね」


「いい匂い……」


 パタラシュカは大きな葉っぱに包まれた食べ物らしい。

 めちゃくちゃデカイ。 鯉でも包まれてるんだろうか?

 香辛料のいい匂いが漏れている。

 うん、これは絶対米が欲しくなるヤツ。

 

「なにかしら? この樽」


 マーマンマサトは樽だった。

 マサトってなに?

 マーマンのマサト。

 わからん。

 木製の樽に入ってる液体。

 飲み物なのは確定である。


「ビール樽?」

「おお、神よ」

「覇王は神だったのか?」


 いやアルコールとは限らんやろ。

 気づいたらみんな集まってきていた。 

 まぁ美味しそうな匂いしてるしね。


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