百二十五話:ブラックホーンシリーズ


 どうにか間に合った。


「はぁ、ぁっ、らぁ、めえっ」


 黒のガチャ、それにSR以上排出率UP(3日)の最終日。

 ホテルでの休憩と200連ガチャでテンションブチ上った俺たちは、新装備を引っ提げて狩りを再開した。 

 ミサの新装備、『ブラックホーンバニー』はやはり高性能だ。

 移動速度において『ブラックホーンリア』を装備した俺に匹敵する。 ジャンプ性能が飛躍的にアップしているので屋根上パルクールも可能だ。 

 

「……んっ!……んんっ!」


「シンク君!」


 防御面でも大幅に性能アップしている。

 魚頭の攻撃では傷もつかない。 衝撃もある程度吸収してくれるようだ。

 前衛を張るミサにはありがたい。


 そして驚くべき性能も有していた。

 これは他に出たブラックホーンシリーズと併せると真価を発揮する。


「え、ええええッ!?」


 SSR『ブラックホーンシャドウ』。

 今回の200連ガチャで俺の中の大当たり。

 めちゃくちゃカッコイイ3輪自動車、トライクと呼ばれる乗り物だ。

 メタリックブラックで、SFチックな青白いラインが光る。 もうね、男心は惹かれまくりですよ。

 スポーツカーみたいな流れるようなボディラインがいいね。 どこか競走馬のような印象も受ける。

 大型車並みにデカい。

 これはなかなか運転技術がいる。 放置車両も多いし厳しいかとおもったが、『ブラックホーンリア』と同じく空中を走ることができた。 うーん、近未来だね。 未来自動車。


「なっ、ななななっ!?」


 玉木さんが驚いている。

 まぁいきなり大型トライクで乗り付けたらビックリするよね。 無免許だし。

 後部座席というのか、後輪の後ろにも荷物と3人くらい座れるスペースがある。 

 その後ろに取り付けられている保管スペースはなんとマジックバッグになっている。 容量はどのくらい入れられるかわからないが、大きさ無視で結構な量が入った。 ホテルにあったふかふかベッドも拝借して入れられた。


 ぶっちゃけこれがURだと言われても納得できるのだが、ランクはSSRである。

 おそらくブラックホーンシリーズはSSRなのではないだろうか。


「ド、ドライブデートッッ!? しかもミサちゃんがえちえちにっ!?!?」


 そこ? 玉木さんの驚くところそこなのっ!?

 結構なピンチに颯爽と現れて新装備も着けているのに!


「ぁっ、あっ、またっ!」


「リモコンえっち!?」


 ちなみに『ブラックホーンシャドウ』の動力源も『ブラックホーンリア』と一緒だ。

 つまり処女の性エネルギーである。

 『ブラックホーンバニー』を着用したミサは効率的に性エネルギーを搾取できる。

 今俺の目の前で前傾姿勢で四つん這いに乗っているミサはえちえちな声をだしながら大変なことになっていた。 

 突き出されたお尻はピチピチのバトルスーツでくっきりと形がわかる。

 びくびくと震えながら性エネルギーを搾取されていた。


「……」


 周りからの視線が痛い。

 おかしいなヒーローの如くピンチに割って入ったはずなのに。


「ギィ! ギョォイイイイイッッ!!!!」


「おお?」


 なんだか激高している魚の怪物。

 やけに鼻が長い。 なんか鱗が逆立って激おこだし。

 見つけたぞぉ!! とでも言いたげな表情でまんまるの瞳がこちらをみている。

 やる気満々だね。

 かなりの強敵とみえる。


「「「っ!」」」


 『ブラックホーンシャドウ』から降りると、周囲が驚いたのがわかった。

 ふふふ、そうだろう。そうだろう。

 この新装備を見てほしい。 ああガチャの高レア装備を見せびらかすときの快感よ。 ネトゲガチャの醍醐味ですよ。


 『ブラックホーンオメガ』。


 なんとミサと同じくバトルスーツである。

 ブラックのトライクによく合う。 バイクとか乗っている人が着ているような、ミリタリーSFのような感じ。

 イヤーカフのワンプッシュでヘルメットからマスク、ノーヘルまで自在に着飾れるオシャレ機能つき。

 ちなみに『ガードドッグイヤー』との併用可である。


「シンク君、カッコイイ♡ ……でもお揃いずるいわ」


 なんか玉木さんの感情の起伏が激しい。

 たぶん戦闘で感情が昂っているからかな?


「ギョイ!」


「ふっ!」


 ギザギザの骨剣を大楯で防ぐ。

 重い一撃だ。 しかし『ブラックホーンオメガ』のアシストか、いつも以上に筋肉が漲っているのがわかる。 攻撃してきた長鼻の怪物ごと押し返す。


「ギョォ!?」


 筋肉が騒ぎ立てる。

 いやこれはバトルスーツか。

 獲物を狩れと囁くように力を与えてくる。

 思わず笑ってしまう。


「ギョォオオオオオ!!」


 長鼻の怒りが伝わってくる。

 舐めるなと、ギザギザの骨剣を振るってくる。

 鼻息荒く、鱗の間から蒸気が噴き出ている。


 魚臭い。


「くせぇ!」


「ギョ!?」


 大楯『エポノセロス』によるジャストガード。

 長鼻その太い体躯を大きく仰け反らせる。

 致命的な隙に漆黒のオーラを纏うヴォルフライザーの一撃を叩きこむ。


「ギョ――――」


 鳴動する『ブラックホーンオメガ』。

 力の流れを示すように青白いラインが輝く。

 長鼻の怪物を両断した。

 後には魔晶石とドロップアイテムの骨剣が残される。


「凄いっ! あの硬かった怪物を一撃で!? ……物理が効かないわけじゃなかったのか」

 

 服部先輩も無事のようだ。

 何人か怪我をしているようだけど、重傷なのは反町さんだけ。

 中級ポーションを渡してあげよう。


「すまない、鬼頭」


 中級ポーション凄いな。

 内臓のダメージも修復していく。

 見ていると気持ち悪いが。

 傷は大丈夫そう、でも失った血液は戻らない。

 

 ふらふらと戻っていく反町さんに葛西先生が駆け寄っていった。


「玉木さん!」

「俺たち、生き残りましたぁ!!」

「ご、ごごご、ご褒美をッ!!!!」


 若い男性たちがまるでおっぱいみせろとでも言わんばかりの熱量で玉木さんの元へと集まってきた。

 どうしよう。 プレッシャー掛けとこうか?


「ふふ、みんな頑張ったねっ! 偉いぞっ、――チュッ♡」


 アイドルなのかな?


「「「くはっ!?」」」


 妖精の投げキッスに青年たちは胸を押さえ膝をついたのだった。



◇◆◇



 最下位のネオンライトが明滅する魔王の部屋。


「……ナンダト?」


 配下であるザンギの名が消え、大幅に戦力値は下がる。

 しかし魔王ランキングは変動しない。

 なぜなら『最下位』だから。

 最下位のネオンライトが激しく明滅する。


「アリエン……」


 腹心たる部下ザンギの消滅。

 雑魚とは違う。

 ありえない。 そんなはずはないと確認するが、消えている。

 ザンギは消滅した。


「ギ、ギ、ギ、ギ……」


 『千棘のマーマンロード』の呻き声が零れる。


 自分を慕っていた部下。

 部族の一員として共に戦場を駆けた信頼できる戦士。

 おかしい。

 こんなところで失っていいようなことはない。

 共に魔皇帝目を指す仲間なのだから。


「ギイィイイイイイイイイイイイイッッ!!」


 『千棘のマーマンロード』は進撃の準備を開始する。

 

 戦士の仇を取るため。

 部族の誇りを守るため。

 王としての役目を果たす。


 あらゆる障害を千の棘をもって撃ち滅ぼす!

 




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