百二十二話:防衛機能発動!
新領主は声高らかに宣言する。
「防衛機能発動!」
服部を中心に光の波動が領地へと広がる。
与えるのは神社の加護。
戦闘に参加する者たちは水色のオーラに包まれる。
神駆の設置した狛犬像の瞳に黒炎が宿り、近寄った魚頭に黒炎弾が放たれた。
「「「おお!」」」
黒炎に包まれた魚頭から近くの魚頭へと燃焼が広がる。
魚頭の断末魔の悲鳴が朝空に木霊し、魚頭たちの勢いを止めた。
反対に東雲東高校は盛り上がる。
「ギコ……ギィ!?」
魚頭に後退は許さない。
大きな骨で出来たギザギザの剣が後退した魚頭を真上から両断した。
ザンギはその長い腕を突き出し命令する。
「ギョギョゥ!」
「「「ギ、ギコォオオオオオオオオッ!!!!」」」
魚頭たちの群れが延焼し倒れる仲間を踏みつけ東雲東高校へと殺到する。
「あの長鼻が大将のようだな」
「うん。 凄いプレッシャーだよ……」
魚頭はまさに魚を頭につけた子供だ。
怪物魚人はより人に近い顔だったが、ザンギは異なる。
異質。
ノコギリザメのような長い鼻。 背は低いが骨格が太い。 横に太くさらに長い腕がアンバランスで、人の視点からすると歪であった。
ギザギザの骨剣を肩に担ぎ、魚頭たちの後からゆっくりと近づいてくる。
そこには強者の風格が漂っていた。
(『嗤ウ者』……ドレダ?)
部族の長であり誰よりも勇猛な戦士、主君たる魔王『千棘のマーマンロード』を苦しめる原因。
その排除を仰せつかったザンギは喜びを噛み締めていた。 『処刑人』たる自分にふさわしい任務だと。
顔の大きさの割に大きく丸い瞳は前方を見つめていた。
「一華!」
「はっ!」
バールを持った女性の一撃が魚頭を殴り倒す。
攻撃の隙を狙った別の魚頭の爪撃を男性が盾でカバーに入る。
受け流すように爪を払い、体勢が崩れたところにバールの一撃が舞った。
「太陽」
「ああ、気にすんな! ガンガンいけッ!」
「……うん!」
男性の持つ盾に傷はついていない。
青いオーラに保護されたようだ。
神殿の加護が防衛をする者たちに力を与える。
「はっ、新人に負けてらんねぇーー!」
「いいとこ見せるぜえ!」
平和に生きていた学生たちでも、連日の襲撃を乗り越えてきた戦士たちだ。
魚頭程度には遅れはとらない。
雑魚は任せ、反町・服部・玉木は怪物に集中する。
「スピードタイプではなさそうだね、パワータイプかな……」
「なら俺に任せな」
金砕棒をもつ反町はザンギを睨みつける。
「……」
神駆とミサの行方が気になりすぎて闇落ちしかけていた玉木は、冷や汗が止まらなかった。
相手から感じるプレッシャーが黒炎の怪物と一緒だったから。
神駆がいないだけでこうも心細いのか、はやく逢いたいと願う。
それと同時に、彼の帰ってくる場所を守らなければと、胸に使命感が渦巻く。
「『風の精霊よ』」
妖精は詠う。
「『集れ踊れ、荒ら荒らしく、大きくなれ』
想いを乗せて願う精霊の歌。
「『――――ウィンドストームッ!!』
無数の風の刃は魚頭を切り刻む。
暴風が戦場を貫いた。
「おおお!」とその威力に驚く。
黒炎の怪物と対峙した時よりも【
魚頭であれば一掃することなど容易い。
「――ギョイ!」
「「ッ!?」」
だがしかし。
ザンギには通じない。
そのジグザグの骨剣が玉木の魔法を一刀両断した。
「っくるぞ!!」
「……」
慌てる皆の中で玉木は一人冷静に次の歌を紡ぐ。
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